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夏 球音<上>「2強」激突見据え火花

 第92回全国高校野球選手権埼玉大会は9日開幕する。強豪校、実力校が虎視たんたんと頂点を狙う。球音の主役たちを追った。

 「やる気がないなら出て行け!」

 6月下旬、さいたま市緑区の浦和学院グラウンド。投手、内野手の連係プレーの練習中、ナインの厳しい声が飛んだ。投手の南貴樹(3年)がマウンドを駆け降りてゴロをさばこうとしなかったからだ。気迫に欠けると映ったプレーには、チームメート同士でも容赦なく活を入れる。

 素質のある選手をハードな練習で鍛え上げる浦和学院。監督の森士(おさむ)は今年、3年の4人に交代で主将を経験させ、全員をまとめて戦うことの大切さ、難しさをみっちり学ばせてきた。精神力強化の成果は、5月の関東大会準決勝で4点差をはね返し、大会2連覇につなげたことにも表れた。

 選手層の厚みは県内屈指。野手は昨年の主力が4人残る。投手陣も安定感のある阿部良亮(同)を柱に、1メートル97の長身・南、左の横手投げ萩原大貴(同)と多彩だ。森は「うまくかみ合えば甲子園でも上に行ける」。選手も全員が右腕にペンで「全国制覇」と書き込み、汗で文字が薄れるたびに書き直している。

 関東大会を制し、勢いに乗る森とナインの胸を、チクリと刺すのが花咲徳栄の存在。春の県大会決勝で花咲徳栄に0-2で敗れ、県、関東での全勝優勝を果たせなかったからだ。

 春の選抜大会に出場した花咲徳栄にとって、浦和学院戦の勝利は初めて。その時、マウンドに立ったのは、甲子園で投げた五明大輔(3年)ではなく、2番手の左腕・橋本祐樹(同)だった。

 選抜大会後、チーム内に異変があった。「きれいに打とう、華麗にさばこうとするあまり、プレーの基本がおろそかになった」。監督の岩井隆の目には、大舞台を経験したナインが舞い上がっているように映った。

 関東大会終了後、不振の4番の戸塚瞬(同)を下位に下げ、長打力のある金久保俊(同)を控えから主砲に据えた。岩井は五明でさえ、「状態が良くない。うちにエースなどいない」とし、春の県大会、関東大会で一度も使わなかった。

 この荒療治は吉と出た。五明の陰に隠れていた橋本が本領を発揮し、県大会で浦和学院を零封。関東大会では、負け試合ながら3番手の松本晃岳(2年)が1失点で完投し、実戦で使えるメドが立った。

 エース五明の闘志にも火がついた。「絶対にまた甲子園で投げる」と、ひたすら投げ込む。「浦学には負けられない。必ず倒す」

 多くの大会関係者が「2強」と評する両チーム。この1年の対戦成績は1勝1敗の五分だ。共に勝ち進めば決勝で雌雄を決する。(敬称略)

(読売新聞埼玉版)

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