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第83回選抜高校野球関連の雑誌が発売されました

浦和学院「フルスイングで頂点を狙う」

◇投手力

 172センチ73キロの小さな大投手佐藤が、浦和学院のマウンドを守る。関東大会では3試合27イニングをひとりで投げ抜き、被安打18、自責点4と安定したピッチングを見せた。

 決して、飛び抜けたスピードがあるわけではないが、投球術に優れる。110キロ前後の緩いカーブを要所で使いながら、勝負どころでは腕を振って、インコースのストレートで攻めてくる。まだあどけない表情をしているが、マウンド度胸は抜群だ。

 1年春の関東大会では、ショートで出場していただけあり、フィールディングやセットポジションの間など、投げる以外のところにもセンスを感じる。

 3連投を投げ抜いたように、スタミナ面もさほど心配はない。高校生活、初めての冬をこえて、さらにスタミナアップしているだろう。

 新チームスタート時は、佐藤を野手で使うプランがあった。ところが、ほかのピッチャーが思うように伸びてこず、入学時からコントロールのよかった佐藤をピッチャーとして育てていった経緯がある。

 それだけに、二番手以降にやや不安が残る。左腕の中山翔太は1年次からマウンド経験がある、左腕の技巧派。変化球はいいだけに、ストレートの力が伸びてくれば面白いのだが。

 期待の1年生が、181センチ72キロと恵まれた体格を持つ池山颯人。元ヤクルトの池山隆寛氏(ヤクルト二軍打撃コーチ)の息子である。課題のコントロールが解消されれば、ピッチングにも幅が出てくるはずだ。

◇打撃力

 関東大会前から、「今年のバッティングは、一味違う」と評判だったが、そのとおりの力を見せた。

 3試合すべてで二桁安打をマークし、計33安打、22得点。上位下位関係なく、すべての打者がフルスイングしていたのが特徴だ。力強く振る中でも、3試合の三振がわずかに9個。手元までボールを引きつけて、自分のポイントで打つことができていた。

 強打線の裏には、昨年4月から就任した中村要コーチの存在が大きい。立正大、日本通運で活躍した強打者だ。甲子園で勝てるバッティングを目指し、ファーストストライクからフルスイングする重要性を説いてきた。「今年は打ち勝つ野球。打たなければ勝てない」と森士監督。その象徴が、ピッチャーの佐藤を1番に置いていることだろう。ミートセンスと走力に長ける、理想的な1番バッターだ。県立高校であれば見たことがあるが、浦和学院ほどの甲子園常連校で、「1番ピッチャー」は珍しいだろう。

 3番・小林賢剛から、沼田洸太郎、日高史也、石橋司と続く、中軸は破壊力抜群。日高は関東大会3試合で13打数7安打2本塁打。決勝ではサヨナラヒットを放つなど、当たりに当たっていた。

 6番を打つ石橋は、新潟出身の選手。1年春からメンバー入りをはたしていた。トップからバットが立った状態で振り出すことができ、インパクトでヘッドが下がらない。打球スピードの速さは、強打線の中でもトップクラスだ。他チームにいれば、3番や4番を打てる力を持っている。

 下位打線は流動的だが、誰が入っても、しっかりとスイングしてくる怖さがある。

◇守備力

 内野はショートの小林を中心にした布陣。伝統的に「堅守」のイメージが強いが、今年はやや不安がある。関東大会の決勝では8回に2つのエラーが重なり、2点を奪われた。

 キャッチャーを務める、森光司は森監督の息子。2008年夏には長男・大も浦和学院のピッチャーとして甲子園の土を踏んでおり、親子で2度目の甲子園となる。こんなケースもなかなかないだろう。

 打線はトップクラスだけに、あとは守備力アップが課題となるだろう。エース佐藤を含めた、ピッチャー陣の底上げも必要だ。意外なことに、埼玉県勢はまだ全国制覇を成し遂げていない。県勢初の日本一を狙う。

◇内角でマウンドから見える世界が変わる 佐藤拓也投手

 茨城・鹿嶋市立鹿島中学校時代から、名が売れたピッチャーだった。中学2年、3年と、エースとして関東大会出場。3年夏の関東大会初戦では、ノーヒットノーランを達成している。

 県内の強豪から誘いがあったが、「キビキビした雰囲気に憧れて」、浦和学院へ。鹿島中でバッテリーを組んでいたキャッチャーの父親が、東洋大野球部出身で、森監督と旧知の仲だったことも関係していた。

 鹿島中の仲間からは、「厳しい環境だと思うけど、負けないで頑張れよ」と、嬉しい言葉をもらったという。

 スピードは、中学時代からすでに130キロを超えていた。今は本人申告では「135か136キロがマックス」と、爆発的には伸びていない。それでも勝てているのは、緩急を生かした投球術とマウンド度胸の良さだ。

 「ピッチャーはアウトローが生命線」という格言があるが、佐藤の場合は「インコース」。しかも、インローではなく、もっとも窮屈に感じる、ベルト付近に投げてくる。

 「監督から、『内角を使わないと、ピッチングの幅が広がらないぞ』と言われました」

 変化球はカーブ、スライダー、ツーシームと多彩だ。得点圏に背負っても、勇気を持って、緩いカーブを投げてくる。

 1番を打つバッティングは、積極性が持ち味。ときにボールに変化球を強引に振ることもあるが、その荒々しさも魅力的だ。

 ピッチャーか、バッターか。本人の意思は「ピッチャーをやりたい!」。目標はダルビッシュ(日本ハム)。その投球術に憧れを抱いている。

◇バット一閃で勝利が近づく 小林賢剛内野手

 「構えが、剛(西岡)そっくり。意識しているんじゃないの?」

 小林の打席を見ていた、千葉ロッテのスカウトがつぶやいた。背筋をピンと張り、バットを左肩の前に構え、ヘッドを少し揺らしながら、投球を待つスタイルは確かによく似ている。

 ポジションもショートで、足も速い。重なるところはあるが、本人は、「全然、意識してないです」と笑っていた。「バッティングで意識しているのは、ボールにあわせるのではなく、自分のポイントでしっかりとフルスイングすること。トップから、しっかりと振り抜く。チーム全体で『フルスイングなら、凡打オッケー!』の気持ちで、取り組んでいます」

 森監督からは、こんな話をされたという。

 「お前たちの代には、ずば抜けたピッチャーがいない。打線が打つことで、ピッチャーを育ててほしい」

 味方打線に得点力があれば、ピッチャーも余裕を持って、腕を振ることができる。エース佐藤のインコースを使った大胆な配球は、打線の力があってこそとも考えられる。

 ショートの守備は基本に忠実。捕球後、すぐにトップの形を作るため、送球のぶれが少ない。周りへの指示もこまめに送り、守備の要として、チームをまとめている。

 関東大会で優勝を飾ったあとは、涙を流すシーンが見えた。

 「新チームが始まったときは、監督から『お前ら、1回戦負けするぞ!』と言われていたんです。そこからのスタートだったので、純粋にうれしい」

 冬の厳しいトレーニングを経て、チーム全体がさらにパワーアップした。甲子園でも、自慢の強打線で、ピッチャーをサポートしていく。

(「ホームラン」3月号より)

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<取材こぼれ話>

◇これってECO?地球に優しい猛練習

 「古タイヤってこんなに使い道があるんだ・・・」。浦和学院の気合の入りまくった練習を見て思いました!

 まず「乱れ打ち」という名物練習。使い古しのタイヤを腰からロープでつないだ状態でノックを受けるんです。左右に「乱れて」振り回されるみんな。クタクタです。その横ではタイヤを抱きかかえてのスクワット。そのまた隣で腹筋運動。「投手集まれ」の声のほうに行くと、今度は自転車にタイヤをつけて登り坂を上がっていく光景が!

 ちなみにこのタイヤ、重さが約5キログラム。「引いたり押したり、最高のトレーニング器具。いらなくなったタイヤを整備場からもらってくるんですよ」と安保隆示部長。す、すごい・・・。リサイクル効果抜群で、心も強くなる「古タイヤトレ」。地球にやさしいけど、体には厳しそう~。

(「輝け甲子園の星」2011早春号より)

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◇我がチームの「コーチ」―中村要コーチ(37)

 足立学園から東都大学リーグの立正大に進み、社会人の日本通運では中軸も任された強打者。昨年2月に打撃コーチに就任した。「現役最後の年にようやく打撃についての考え方がわかったが、自分には生かせなかった。それを選手に伝えたい。ただし、技術だけでは勝てない。高校生らしい振る舞いを身につけさせた上で、そこに技術が乗ってくれば」と話す。現在、東洋大に通い、教員免許を取得中。「教えることはたくさんある。まだまだこのチームは伸びますよ」

(「報知高校野球」3月号より)

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