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浦和学院、想定外ヒーロー 8番・西岡、勢い生む

 「上位しか打てないから期待するのは上位」。浦和学院・森監督の予想を下位打線が裏切ってみせた。

 3点を追う2回。反撃ののろしをあげたのは8番の西岡だ。1死一、二塁、「余計なことは考えず迷わず振り抜いた」。高めの直球をとらえ、左中間2点二塁打。1点差に迫った。

 無安打だった1回戦の6番から、8番に下がっていた。「1打席でダメだったら代えるぞ」。前日に監督から、そう告げられてもいた。背水の陣だった。

 この一打が打線を勢いづける。上位の連続適時打につなげ、この回に一気に逆転。3回は5番笹川の本塁打に続き、6~9番での計3安打で追加点を奪った。

 ブレーキとなった初戦とうってかわり、西岡は3安打3打点。同じく1回戦は無安打だった6番高田も「キーマンは下位。つなぐだけ」と2安打。下位が勢いを加速させ、打線は計18安打をたたき出した。

 6番以降で計7安打。監督を「予想外」と驚かせた。西岡は「次の試合で(流れを)止めたらダメ」。このいい意味での裏切りが続く限り、浦学打線はそう簡単に止まらない。

◇浦学・林崎、扇の要 勝ち越し打、絶妙リード

 お互いに定期戦を行う、手の内を知る者同士。浦和学院の林崎(りんざき)は捕手、そして2番打者として“扇の要”の役割を試合で果たした。

 反撃を開始した2回、同点としてなお、2死二塁。見逃せばボールの高めの133キロを、一、二塁間へ運んだ。勝ち越しの適時打。1、4回は得点にはならなかったが、犠打を初球で決めた。状況に応じて対応する打撃で、強打の攻撃陣を大量得点へと導いた。

 リードでは立ち上がり、相手4番に甘い外角球を3点本塁打された。だが、慌てない。その後はより一層、体をホームベースの内、外側に動かし、主戦の佐藤に打者のコースを突かせた。3、4回のピンチではマウンドに駆け寄って佐藤に声をかけ、しのいだ。

 攻撃では積極性で流れを作り、守りは絶妙な間をとりながら、佐藤を乗せた。試合展開は、自然と浦和学院へと傾いていった。

 「佐藤がとにかく硬かったので、声をかけました。犠打は2番としてサインプレーは100%決める。安打よりも評価は高い」。チームをリードするべき選手が機能しての、2回戦突破と言える。

◇笹川、2試合連続HR

 浦和学院・笹川が2試合連続本塁打。3回、スライダーを左中間に運んだ。春の選抜では4番だったが、今大会は5番。「自分が下手なだけ。今日も2回の第1打席で打たないと」とあくまで謙虚だ。その後も安打を連ね、4安打。三塁打が出ればサイクル安打だったが、「まったく意識しなかった。次も目の前の1勝に全力を尽くします」。

(朝日新聞)

◇「イメージ通り」春の雪辱 浦和学院2年・竹村春樹遊撃手

 「中前にはじき返す」。1点を追う二回2死三塁、6球目の外角の変化球を、イメージ通りに捉えた。初回に3点本塁打を浴びて先制を許した直後の同点打で、攻撃の流れを味方に大きく引き寄せた。

 昨秋、1番・遊撃の定位置を獲得したが、試合では、好機で凡退する場面が目立ち、森士(おさむ)監督からは「大事な場面で萎縮してしまう」と指摘された。

 それ以来、思い切ったプレーを心掛け、今春のセンバツも「フルスイングからしか結果は生まれない」と強い気持ちを持って試合に臨んだ。しかし、結果は3試合のうち2試合で無安打。「当てにいってしまった」と悔やみ「夏は絶対にリベンジする」と誓った。

 「イメージがなければ、フルスイングはできない」と考え、日課としていた1日2000本の素振りの際、一振りごとに球種と打球方向を意識するなど、工夫を凝らした。試合前夜の就寝時には、中前に打球を運ぶ自分の姿を頭に思い浮かべるようにした。

 この打席でも、「ツーストライクに追い込んだ後、外角に落ちる変化球を使う」という相手投手の特徴を冷静に分析し、快打につなげた。

 試合が終わってみれば、公式戦で自身初となる4安打の活躍。「ずっと求めていた結果が、ようやく出せた」。春の雪辱をひとまず果たした球児の表情は、さわやかだった。

(東京新聞埼玉版)

◇浦和学院、26年ぶりのベスト16進出!

 灼熱(しゃくねつ)の甲子園。何度も聞いたフレーズが、佐藤の脳裏をよぎったかもしれない。「♪思いこんだら 試練の道を-」。堪え忍んでの勝利だった。

 一回、4番・園部に先制3ランを被弾。「序盤はボール球が先行してしまった。でも、味方が点を取ってくれたから」。七回にもソロを浴びたが、打線の援護もあり4失点完投。149球の熱投が実り、初出場した1986年以来26年ぶりの3回戦進出だ。

 Jリーグ・鹿島アントラーズが本拠地を置く茨城・鹿嶋市生まれ。サッカーが盛んな街だが、県立高の野球部で活躍した元球児の父・勝美さん(48)の育成方針で、幼少期から野球の英才教育を施された。教材は日本人なら誰でも知っている『巨人の星』だった。

 バットを買い与えられた3歳から、まるで反復練習のように録画されたアニメを見る毎日を送った。「あれで野球のルールを覚えた」と勝美さん。星飛雄馬ばりに指導を受けた拓也少年が家族で出掛けたカラオケで、いつも真っ先に歌うのは、もちろん『巨人の星』だった。

 さすがに魔球“大リーグボール”は投げられないが、130キロ台中盤の直球と90キロ台のカーブで緩急をつける投球を身につけ、浦和学院のエースへと成長。打っても3番打者として、八回の右越えソロを含む2安打2打点と勝利に貢献した。

 素直な性格でナインからの信頼が厚い18歳の思いは「優勝したい」。『巨人の星』ならぬ、深紅の優勝旗をつかむまで、試練の道を進む。

(サンスポ)

◇「エースを楽に」捕手の一心 浦和学院・林崎龍也選手

 2回表2死二塁、林崎龍也選手(3年)が高めのボール球を強振すると、打球は右前へ転がって逆転打となった。エース佐藤拓也投手(同)を楽にしてやりたい、その一心だった。捕手としても好リードし、攻守で「チームの要」の仕事を果たした。

 森士(おさむ)監督も「あの場面で、逆転してくれたことが大きい。同点じゃダメ。逆転出来たから相手に影響を与えられた」と、勝因に挙げた。

 立ち上がりの佐藤投手は制球力を欠いた。2連打を浴びて一、三塁。次の4番打者に中越えの3点本塁打を許した。外すつもりの内角直球が真ん中へ入ってしまったのだ。さらに中前安打が続いたが、林崎選手が二盗を阻止、ようやく攻撃の流れをくい止めた。

 3回1死一、二塁のピンチにはマウンドへ駆け寄って佐藤投手をなだめた。「かたいよ。同点まで大丈夫だから」。直後、三直の併殺に仕留めた。ベンチ前で佐藤投手の尻をミットでたたき、笑みをこぼした。

 不安定だった投球は後半になると持ち直し、サイン通りに力のこもった内角直球がミットに決まり出した。

 バッテリーを組んで2年半。佐藤投手は「絶対的に信頼している」という。林崎選手は「昨年までの拓也なら、崩れる展開なのに抑えてくれた。成長している。子どものころからの夢だった甲子園で、みんなと日本一になりたい」とこれからの連勝を誓った。

(朝日新聞埼玉版)

◇浦学、毎回18安打11点!夏26年ぶり16強

 過去7度、阻まれていた“2回戦の壁”を打ち破った。浦和学院が毎回安打となる18安打で11点を奪い、夏は26年ぶりとなる16強進出を決めた。森士(おさむ)監督(48)は「(2回戦を)乗り越えてほしかったので選手には感謝してます」とほおを緩ませた。

 エース・岡野祐一郎の攻略法として、指揮官はこう選手に伝えた。「直球と変化球にあまり緩急はない。どちらかに狙い球を絞って積極的にいけ」。5番・笹川晃平は2打席ともスライダーを狙い、第1打席は遊ゴロだったが、第2打席の3回に2戦連発となる左中間ソロ。「どんどん振っていこうと意識した」と4安打3打点をたたき出した。

 今春センバツは大阪桐蔭に敗れ、8強止まり。頂点を目指し、打力と機動力に磨きをかけた。2戦連続の2ケタ安打と大舞台で成果が花開いた。3回戦は古豪・天理との対戦。「今までと変わらずに、一戦一戦全力で戦うだけ」と森監督。強打を武器に、86年大会の初出場で果たした4強超えに挑む。

(スポーツ報知)

◇後輩13人も声援

 浦学の応援団が陣取る一塁側アルプス席には、山根佑太左翼手(2年)が中学時代に所属した広島市の硬式野球チーム「ヤングひろしま」の後輩13人が駆け付けた。このチームの水岡拓巳さん(15)は「勝負強い打者で、あこがれの先輩。いつか僕も甲子園でプレーしたい」と目を輝かせた。8強入りしたセンバツも声援を送った。「夏は優勝してほしい。山根さんの打席では特に大きな声を出したい」と、メガホンを打ち鳴らした。

(毎日新聞埼玉版)

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