「みんな、日本一になるために厳しい練習に耐えてきた。実ってよかった」
閉会式で、ナインの首に優勝メダルが下げられる。その光景を見つめる本田祐馬君は、冬場の練習に励む仲間の姿を思い出し、目頭が熱くなった。
甲子園に行きたい。その一心で、父も所属していた浦和学院の野球部に入部した。しかし、しばらくして3か月間、両足の神経がマヒ。一時回復したが、昨春に右足だけ再発。他の部員が汗を流す姿を歯がゆい思いで見つめていた時、森士監督から言われた。「お前にしか気づけないことがある」
それ以来、他の部員が少しでも長く練習できるように、道具の管理やグラウンド整備に徹した。練習中のけがで野球ができず落ち込んでいる選手には、「今、自分たちにできることは、チームのために動くこと。全力でやろう」と声をかけた。
アルプス席で味わった日本一。時折涙をぬぐいながら、満面の笑みで退場するナインを送り出した。
(読売新聞)