◇浦学3年ぶり優勝 前橋育英に4-1
【写真】5回裏浦和学院2死二塁、贄が中前適時打を放つ=22日、栃木県宇都宮清原球場(埼玉新聞)
第65回春季関東高校野球大会最終日は22日、栃木県の宇都宮清原球場で決勝を行い、選抜大会の覇者・浦和学院が前橋育英(群馬1位)に4-1で快勝。3年ぶり4度目の栄冠に輝くとともに昨秋に続く関東大会制覇を達成した。
浦和学院は0-0の五回。ここまで無安打だった打線がつながった。斎藤、西川の連打、山口の犠打で1死二、三塁をつくると、服部が12球目を中前にはじき返し、2点を先制。贄(にえ)にも中前適時打が飛び出し、この回計3点を奪った。八回に1点を返されたが、その裏には高田に適時二塁打が生まれ、すぐさま突き放した。先発の右腕山口は粘りの投球が光り、6安打1失点で完投した。
県大会を制した後、走り込みの量を格段に増やすなど、体力が落ちている中で迎えた今大会。スコアは、初戦の2回戦から2-0、6-3、3-2、そして決勝は4-1と、選抜大会のような圧倒的な勝ちっぷりではなかった。
それでも粘り強く、勝負どころを逃さない戦いぶりは、選抜大会を勝ち抜いたからこそなせる業だった。選抜から通じ14連勝で迎える集大成の夏へ、森監督は「まだまだこれからという時期。今、出ている課題を見返してチームづくりをしていきたい」と抱負を語った。
◇浦学14連勝で夏へ 前橋育英に4-1 秋春連覇
(22日・宇都宮清原)
最終日は決勝を行い、選抜大会で優勝した浦和学院が前橋育英(群馬1位)に4-1で快勝。2連覇を達成した2010年以来、3年ぶり4度目の栄冠を獲得するとともに、昨秋に続く関東制覇に輝いた。
浦和学院は五回、斎藤、西川の連打と山口の犠打で1死二、三塁を築くと服部が中前にはじき返す2点適時打。2死二塁となり贄(にえ)の中前打で計3点を先制した。八回に3-1とされたが、その裏に2死三塁から高田の二塁打で加点し、すぐさま突き放した。先発の山口は粘り強く、6安打1失点で完投した。
◇成長示す決死の一振り 服部
【写真】5回裏浦和学院1死二、三塁、服部(右から2人目)が中前に2点タイムリーを放つ。高橋光、小川バッテリー(埼玉新聞)
チームに今季14連勝をもたらせたヒーローは、間違いない。執念の男・9番服部だ。
五回1死二、三塁。味方がつくってくれたチャンスに燃えていた。2球目のスクイズは相手に外されたが食らい付きファウル。その後もファウルで粘り12球目の真っすぐを中前に運んだ。打球が抜けたのを確認すると、「自然と出てしまった」と左拳を力強く突き上げ、試合後は「うれしかった」と白い歯がこぼれた。
実は勝敗が決したこの場面に、成長の証しがぎっしり詰まっていた。
昨秋の明治神宮大会以降、打ちにいく際、ボールに対して逃げ腰になってしまう悪癖を改善すべく、しっかりと左足を踏み込む意識で、打撃練習に取り組んでいた。
選抜大会3回戦の山形中央戦では2安打2打点をマーク。一歩ずつ階段を上り、この日の適時打は内角直球後のスライダーを踏み込みファウルにしたことで、根負けした相手投手が投げ込んできた失投を逃さなかった。
真夏の決戦へ「もっともっと下位が活躍して投手を楽にさせてあげられたら、チームは強くなれる」。下位打線としてのプライドを胸に秘め、さらなる飛躍を誓った。
◇“12球”に王者の真骨頂
これぞ選抜大会覇者の真骨頂と言うべき場面は、五回に訪れた。
先頭の6番斎藤がチーム初安打で口火を切ると、続く西川は森監督の打てのサインに応え、右前に運びつないだ。山口が1球で犠打を決め1死二、三塁。絶好の先制機だ。
打席には9番服部。カウント2-2と追い込まれたものの「片手でもいい。食らい付く」と一歩も引かない。5球目からスライダー、直球、スライダー、直球、直球、スライダーと6球連続ファウル。直球を見極め、迎えた12球目だ。真ん中の138キロの直球を詰まりながらも執念で中前に運ぶ先制の2点タイムリーを見舞った。
12球の攻防を制し、チームに不動の流れを導いた服部は「どんな球でも打ち返すつもりだった」としてやったり。贄にも適時打が飛び出し、森監督は「相手からしたら非常に嫌(な攻撃)だったと思う」と納得した。
「鉛を振っているようで、甲子園の時のかけらもない」(森監督)という打線は、相手の好右腕の前に四回まで無安打。引っ掛けたり上げたりと先につながらない凡打が多かった。それでも「迷ったり考えたり、自分に負けている」と、指揮官からの今大会初となるげきに応え、チーム7安打のうち6本を得点を奪った五、八回に集中させた。森監督は「エネルギーを使い減らしている状況でも粘り強く野球ができた。選抜で勝てた経験が生きている」と勝因を語った。
3年ぶり4度目の栄冠は昨秋に続く関東制覇で、関東大会での連勝も20に伸びた。これで選抜大会から14連勝。今季無敗のまま、“本番”へと向かう。
この日登板のなかったエース小島は「正直、負けていないことは怖い」とチームの思いを吐露した上で、「さらに上を、完璧を目指し、もっと貪欲にやっていきたい」。負けた悔しさを力に変え、全国王者に上り詰めた浦和学院ナイン。ここから真価が問われる。
◇山口1失点完投 要所締め力投142球
背番号10の右腕山口が6安打1失点で完投。142球の力投で打線の援護を呼び込んだ。
直球を狙い打たれた準々決勝の反省を生かし、スライダーやチェンジアップを多めに相手打線に挑んだ。「変化球が散らばってしまった」と本来の制球やキレではなかった。それでも丁寧にコースを突いて、八回の1死二、三塁では「慌てることなく投げられた」と犠飛の1点にとどめた。
夏へ向け「投手力のアップが必要。しっかり引っ張っていきたい」と3年生らしく力を込めた。
◇光った積極性 タイムリーの贄
五回。服部のタイムリーで2点を先制した後、どうしても追加点が欲しい2死二塁で、贄の積極性がきらりと光った。
「初球の直球を打ちにいこうと狙ってました」。まさに言葉通りだった。1球目、外角の132キロの真っすぐを基本に忠実にセンター返し。打球は右足を出した投手のわずか右を抜け、二塁走者服部を迎え入れた。
貴重な3点目がチームに入り、「『打線が山口を援護しよう』ってみんなで言っていた。点数につながって良かった」と納得の表情を見せた。
◇V導く総仕上げ 高田
【写真】8回裏浦和学院2死三塁、高田が左越え二塁打を放ち追加点を奪う。捕手小川(埼玉新聞)
関東大会制覇へ、最後の総仕上げは主将も務める4番高田の一本だ。
3-0から八回に1点を返されたその裏。2死三塁から3球目のカーブを引き付け、左翼へのタイムリー二塁打を放った。「『取られたら取り返すぞ』とベンチで言っていた。取り返せて良かった」と控えめに喜んだ。
それでも「今日も崩れている部分が目立ち、課題が残る」と決して満足しない。主将として「夏は暑いし、もっと大変。見本となれるようにやっていきたい」と決意に満ちた精悍(せいかん)な顔つきだった。
■決勝(5月22日)
前橋育英
000000010=1
00003001x=4
浦和学院
【前】高橋光-小川
【浦】山口-西川
▽二塁打 高田(浦)
▽投手成績
山 口(浦)9回、142球、被安打6、5奪三振、与四死球2、失点1、自責点1
高橋光(前)8回、 98球、被安打7、5奪三振、与四死球1、失点4、自責点4
【浦和学院】
⑥竹 村4-1-0
④ 贄 2-1-1
⑧山 根4-1-0
⑤高 田4-1-1
③木 暮4-0-0
⑨斎 藤3-1-0
②西 川3-1-0
①山 口2-0-0
⑦服 部3-1-2
【前橋育英】
⑧工 藤3-0-0
④高橋知3-2-0
⑥土 谷3-1-1
⑤荒 井3-0-0
②小 川4-1-0
⑨板 垣3-0-0
③内 田3-0-0
H飯 島1-0-0
①高橋光3-0-0
H竹 内1-0-0
⑦田 村3-2-0
(打数-安打-打点)
安 打:浦7、前6
失 策:浦1、前1
四死球:浦1、前2
三 振:浦5、前5
犠 打:浦2、前3
盗 塁:浦1、前1
併 殺:浦1、前0
残 塁:浦4、前7
浦和学院が、五回の3得点で主導権を握り前橋育英に快勝した。
浦和学院は五回、斎藤のチーム初安打、西川の右前打、山口の犠打で1死二、三塁を築くと、服部が中前に運ぶ2点適時打。さらに、2死二塁から贄の中前打で3点を先制した。1点を返された八回には、2死三塁から高田の左翼への二塁打で突き放した。
先発の右腕山口は被安打6、1失点で完投。八回に犠飛で1点を献上したが、一回の2死一、三塁を防ぐなど、粘り強い投球が光った。
(埼玉新聞)
◇赤いメガホン手に
一塁側スタンドには、浦和学院の野球部員約50人が駆けつけ、力強い応援でグラウンドの選手たちを鼓舞した。部員らは22日朝、さいたま市を出発し球場入り。同校は試験期間中で、吹奏楽部が応援に来ることができなかったため、部員らは赤いメガホンを手に熱い「声援」を送った。応援団長の池ノ上大貴さん(3年)は「自分たちの力を出し切って、浦学らしい野球をしてほしい」とエールを送っていた。
(毎日新聞埼玉版)