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浦和学院、重圧との戦い備え 夏の高校野球県大会10日開幕

 第95回全国高校野球選手権埼玉大会は、十日に開幕する。156の出場チームが追い込みに熱を入れる中、春の選抜大会で初優勝した浦和学院には、全国の球児や野球ファンの注目も集まる。浦和学院が埼玉大会を連覇し、県勢で初の4季連続となる甲子園出場を果たすのか。「王者」とライバル2チームの練習の様子を紹介する。

◇浦和学院 重圧との戦い備え

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【写真】「勝ちたいという意欲を感じない」と、練習を中断してナインを叱咤(しった)する森監督(中央)=さいたま市緑区で(東京新聞埼玉版)

 六月下旬。浦和学院の野球部グラウンドでナインがバント処理を練習中、投手のミスに気づいた森士(おさむ)監督の怒声が響いた。投手に対してではない。そのミスを指摘しないまま、次のプレーに移ろうとしたチームメート全員に、だ。「そうやって気を使って、傷のなめ合いか。思い出づくりなら大会なんて出るな」

 今春の選抜大会、春季県大会、春季関東大会ですべて優勝し、公式戦14連勝で今大会を迎える。エースの小島和哉投手(二年)は、甲子園で全5試合をほぼ一人で投げ抜いた。続く県、関東大会では山口瑠偉投手(三年)が主力に。森監督は「夏も投げ抜いてくれそうな二枚看板が育った」と胸を張る。

 攻撃面でも機動力のある1、2番や、選抜大会で3戦連続アーチを放った高田涼太選手(同)ら上位打線の得点力は際立つ。

 ただ、不安はある。春季関東大会を制した後、「選手が、ほっとしてしまった」と森監督。六月初めには練習試合で4連敗を喫するなど、「最悪の状態」に陥った。調子はやや持ち直してきたが、森監督は、ナインの気の緩みが小さなミスの見過ごしにつながっている、と感じている。

 ナインは「甲子園春夏連覇」への周囲からの期待を背負い、他チームからは厳しいマークにさらされている。「果てしないプレッシャーのかかる試合でミスを減らすには、普段から『ミスをさせない、許さない』環境をつくるしかない」と森監督は力を込める。

 重圧を想定したチームづくりは「無敗の王者」だからこそ。超えなければならないハードルは高い。山根佑太主将(三年)は「周りの目線は意識しない。挑戦者の気持ちで、目の前の勝負だけに集中する」と語った。

◇花咲徳栄 司令塔不在も一丸

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【写真】練習試合中、ベンチからナインを鼓舞する楠本選手(左から2人目)。右手にはテーピングが巻かれている=加須市で(東京新聞埼玉版)

 六月末、花咲徳栄の野球部グラウンド。「思い切りいけ」「けん制、気を付けろ」。楠本泰史選手(三年)が練習試合中、ベンチから身を乗り出した。チームの要の選手の一人だが、その右手首は、テーピングでがっちり固定されている。月初めに骨折し、今大会の序盤まで欠場が見込まれるという。

 春の選抜大会前、浦和学院の森監督が「戦力的には、あちらが上。小手先ではない強さがある」と評したほど、もともと完成したチーム。プロのスカウトも注目する4番の若月健矢捕手(三年)を筆頭に、下位まで切れ目なく好打者が続く。最速147キロの関口明大投手(同)ら4人が完投能力を持つ。

 それだけ粒ぞろいでありながら、楠本選手の不在を「痛すぎる。司令塔を失った」と若月捕手。岩井隆監督も「決勝まであいつがいなかったら、負けちゃうな」と冗談めかして言うが、楠本選手に寄せる信頼は本物だ。

 ただ、最近のチームは好調を維持している。桐蔭学園や帝京など名だたるチームとの練習試合にもほとんど勝った。「楠本におんぶに抱っこじゃダメだと、逆にチームが引き締まった」と若月捕手。だからこそ「楠本がいれば完璧なのに…」と本音も漏れる。

 昨秋の県大会、関東大会、今春の県大会…いずれも決勝で浦和学院との「頂上決戦」に臨んだ。最初は土をつけたが、続く2試合は敗戦。浦和学院との因縁は、どのチームよりも深い。今大会も、お互いに勝ち上がれば決勝で雌雄を決す。

 楠本選手は「3連敗は許されない。絶対に試合に出る。痛くても出る。そして結果を出す」と、最強のライバルとの対決に執念を燃やす。成長したチームに楠本選手が復帰し、鬼に金棒となるか。

◇春日部共栄 左腕3投手に自信

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【写真】投球練習をする春日部共栄の主力3投手。手前から倉井投手、西沢投手、金子投手=春日部市で(東京新聞埼玉版)

 パァン、パァン、パァン-。キャッチャーミットの捕球音が、リズム良く響く。春日部共栄の野球場ブルペンに入ると、左投手ばかり3人が並んで投球練習をしている。本多利治監督が「県内トップレベル」と自負する主力投手陣だ。

 特に急成長を遂げるのは、二年生の金子大地投手。打者のタイミングを狂わせる変則フォームと、右打者への内角攻めが武器だ。春季県大会準々決勝では、浦和学院を相手に延長十一回まで1失点と好投。十二回にサヨナラ打を浴びたものの、春の選抜大会後も快勝を続けていた王者を苦しめた。試合後、浦和学院の森監督は「あれは(簡単には)打てない」とうなった。

 「全国一のチームとも互角に戦える、と自信になった」と金子投手。一方、一年の秋からマウンドを守るエースの西沢大投手(三年)は、昨夏も5試合に登板してチームを4強に導くなど豊富な経験がある。倉井知哉投手(二年)は「スピード、キレともにチーム一」(本多監督)。カーブを織り交ぜながら、140キロ超の伸びのある速球を放る。

 浦和学院とともに順当に勝ち上がれば、再び準々決勝で当たる。本多監督は「浦学は大横綱で、こちらは小結。失うものは何もない」と覚悟を決める。金子投手は「自分が投げてリベンジしたい」と意気込む。

 チームの課題は好機での一打。「投手の頑張りを野手が見殺しにした」。春季大会で浦和学院に敗れた後、本多監督の厳しい言葉がナインに突き刺さった。ナインは一日1000スイング近い打撃練習に励み、徐々に調子を上げているという。藤原暁和主将(三年)は「夏は野手が点を取って甲子園へ行く」と、バットを握りしめて誓いを立てた。

(東京新聞埼玉版)

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