【写真左】赤い糸でボールを再生する施設の利用者
【写真中】針で丁寧に縫い直す
【写真右】糸がほつれていても、補修すれば新品のようによみがえる(以上朝日新聞埼玉版)
鴻巣市下谷の障害者就労支援施設「夢工房翔裕園」が、練習でボロボロに傷んだ野球の使用済みボールの再生に取り組んでいる。活躍を祈りながら補修作業をする施設の利用者にとっては社会とつながる励みになり、選手は道具を大切にする心と、野球ができる感謝の気持ちを学べる。
2010年に設立された夢工房翔裕園には、精神障害などがある18~66歳の男女30人が通い、就職に向けた訓練をしている。これまでパンの製造販売や広告折り込みなどの作業をしていたが、今年6月からは使い古した硬式野球のボールを再生する事業も加えた。
「エコボール」と名付けられた取り組みで、百合川祐司施設長(41)が糸代しかコストがかからないことなどから注目。県内の高校野球関係者に声をかけたところ、浦和学院の元野球部長で県高野連の高間薫専務理事(58)が賛同し、同校が約600球の修理を依頼した。
ボールは激しい練習で糸がほつれてくるが、縫い直せば再び使うことができ、寿命は約3倍になる。傷みの程度にもよるが、縫い方を習った利用者は1時間で4~6個を仕上げられるという。
補修費用は、専門業者に依頼すれば1球200円以上かかるといい、施設では50円。浦和学院は糸代を寄付しており、修理費はすべて工賃になっている。
利用者は土で汚れ、汗がしみこんだボールを手にし、「(春の選抜大会で)優勝した学校のボールだよ」などと話しながら、楽しんで作業に励んでいるという。百合川さんは「エコボールを通じて、社会とつながることが出来る」と話す。他校からの依頼も舞い込んでおり、今後も高校野球部へ呼びかけを続ける予定だ。
一方、高野連はお金をかけずにボールを使い続けられるうえ、障害者の就労支援に役立ち、交流もできると考え、取り組みを後押し。「生徒が野球に取り組む姿勢にも影響する。技術や精神面のレベルアップにつながるのではないか」と効果に期待している。
(朝日新聞埼玉版)