「歩く姿を一つとっても、高校生離れした雰囲気を感じますね」。10日にあった埼玉大会の開会式後、大宮西の長岡主将は高揚した様子で話した。
入場行進で自分たちの前を歩いていたのは、第1シードの浦和学院。初戦の2回戦での対戦が決まっている。「でも、同じ高校生。もちろん、勝つつもりです」。きっぱりと言った。
49の代表枠を争い、全国で繰り広げられる地方大会。どの都道府県にも「優勝候補」と呼ばれる存在がいる。
中でも浦和学院は、「絶対的」と言われる優勝候補だ。昨秋の県大会、関東大会で優勝。今春の選抜で4強に入り、その後の春季大会でも県と関東を制した。
ただ、毎年、力のあるチームに仕上げてくる大宮西のナインに気後れはない。「初戦で優勝候補とできるなんてある意味くじ運がいい」とプラスにとらえる。
同じ埼玉の高校生。見知った顔も多い。長岡は浦和学院の渡辺主将と中学時代に対戦がある。そのときは長岡がいた三橋中(さいたま市)が、渡辺のいた土合中(同)に勝っているのだという。
また、大宮西のエース小原と浦和学院のエース江口は、新曽中(戸田市)の同級生。中学時代は小原が江口の2番手だったという間柄だ。
身近にいた存在だからこそ、「優勝候補」という肩書に恐れることなく戦える。「10回やったら1回勝てるかどうか」と大宮西の鈴木監督は言うが、「そこに挑戦できるのは幸せなこと」とも。そして、「負ければ終わり」の重圧の中、その「1回」が起こりうるのも、高校野球のおもしろさだ。
今年はどんな「ハラハラ」「ドキドキ」があるだろう。スポーツに「絶対」はない。特に、高校野球には。
(朝日新聞電子版)