第100回全国高校野球選手権記念南・北埼玉大会は7日、県営大宮で開幕。南埼玉84チームと北埼玉74チームの合計158チームが参加し、2校の代表切符を懸けた熱戦が始まる。大会期間は7~24日(9日は実施しない)。2校が出場できる記念大会には波乱がつきもので第80回西埼玉大会や第90回北埼玉大会のようにノーシード校にもチャンスはある。実力を付け始めた新鋭や復活を狙う古豪も絡まって混戦となりそうな今大会の行方をそれぞれ展望する。
南埼玉大会
春季県大会6連覇で5年ぶりの切符を狙うAシード浦和学院最有力。ただ、ともに春4強で初の頂点を目指すBシードの山村学園とふじみ野や甲子園出場経験のあるCシードの市川越、埼玉栄、Dシードの聖望学園など大混戦の情勢で激戦は必至だ。
そのほか、Cシードは狭山ヶ丘、山村国際。Dシードは朝霞、栄東、川口市立、西武台、所沢商と実力校だらけ。ノーシードにも川越東、川越工、浦和実、市浦和など力のあるチームが上位をうかがう。
浦和学院-狭山ヶ丘ゾーン「5年ぶり狙う春覇者」
準決勝で浦和学院が埼玉栄と聖望学園の勝者を待ち構える構図だが、3校のほかにも好投手が目立ち、手に汗握る投手戦が見られそうだ。
浦和学院は球威のあるエース河北ら左右7人の分厚い投手層と主将の3番蛭間は中心につなぐ意識が高い打線で安定した勝ち上がりを見せるか。第96~98回大会は公立勢に阻まれてきただけに伏兵には気を付けたい。
浦和学院と4強を競いそうなのが、朝霞、栄東、川越工、市浦和。朝霞のエース右腕倉田は場面に応じて投げ方を変える変則ナックルボーラ―で攻略するのは容易ではない。栄東は強打と走塁を武器に積極的に仕掛けてくる攻撃がやっかいだ。捕手山脇ら昨夏のスタメン5人が残った市浦和や機動力で流れをつくる川越工の古豪にも注目。
最速146キロの真っすぐと落差のある変化球でプロの注目を集める埼玉栄の右腕米倉の仕上がりが抜群。打線の援護と好左腕嶋田に期待し、できるだけ温存したい。強豪私学を連破しなければ甲子園が見えてこない川口市立は、多彩な変化球を操る右横投げのエース星山の負担軽減が重要。
聖望学園は、けがで本調子といかなかった投打の軸のエース坂本が完全復帰し、攻守に整った。狭山ヶ丘は完投型のエース村田と上背のある佐野の両右腕、右横から気迫の投球をする田牧と充実した投手陣で混戦を抜け出す。
ふじみ野-山村学園ゾーン「”3強”中心 実力拮抗」
山村学園、市川越、ふじみ野が“3強”の様相を呈している。順当にいけば、山村学園-市川越の勝者とふじみ野が決勝進出を争う情勢だ。
一番きつい位置に入った山村学園は2年生エース左腕和田を休ませることができるかに懸かっている。3番野邨ら勝負強い打線の援護や右腕松吉、左腕益子の奮起が必要になる。初戦の浦和実戦で好左腕英との投げ合いは避けられず、4回戦で顔を合わせそうな川越東も春の2回戦で花咲徳栄に惜敗した力のあるチーム。どこかで乱打戦も覚悟しなければならない。
昨秋準優勝の市川越はエース右腕太賀と左腕和田の両輪とも完投する力があり、休ませながら戦うことも可能だ。巧みなリードの捕手瀬良は5番の中軸を任され攻守の要。西武台は春に五回コールド負けを喫した市川越にリベンジしたい。江川、福井、内藤ら投手陣が踏ん張って先行逃げ切りしたい。
春に初8強入りした山村国際は内田、久武の両右腕が柱となって守備からリズムをつくる。久武と内田は3、4番のクリーンアップとしての働きも担っている。古豪の所沢商は2年生主体の若いチームだが、侮れない。
比較的組み合わせに恵まれたふじみ野は、大野、福室、粟田の3~5番を中心に総じて打力が高い打線、力強い真っすぐで押し込むエース左腕梅沢と投打にバランスがいい。足元をすくわれなければ、4強は見えてくる。
北埼玉大会
昨夏の全国覇者で史上初の4年連続の栄冠を目指すAシード花咲徳栄が中心の展開になりそう。ノーシードながらも実力は間違いない名門・春日部共栄、34年ぶりの甲子園を狙うBシード上尾が花咲徳栄の連覇を阻めるか。
初のBシードを手にした栄北は、その勢いを失わずにいければ面白い存在になり得る。過去2度の記念大会でノーシードから勝ち上がった滑川総合(当時滑川)や本庄第一のほか、春日部東、熊谷商、白岡、鷲宮、松山、叡明、昌平らノーシードにも可能性は十分ある。
花咲徳栄-滑川総合ゾーン「全国王者、攻守に充実」
花咲徳栄が攻守に一歩リード。プロ注目の強打者・野村が4番に座る打線は下位まで好打者ぞろい。投手陣は、中田、岩崎の両右腕が140キロを越える直球と切れのある変化球で勝負する。最速145キロの本格派右腕野村も先発に加わり、層の厚みが増した。
その花咲徳栄をどこが止めるのか。
初戦で当たる桶川西は切れのある変化球を持つ左腕並木と最速144キロの本格派右腕松岡の両腕の粘りが肝心。4回戦でぶつかりそうな春日部東は積極的な打撃が脅威。高野、佐藤は巧打者でパワーもあり、長打も狙える。伝統の打撃に機動力も加わった熊谷商は一昨年の準々決勝で敗れた雪辱を果たしたい。
準決勝で前年王者に挑戦する白岡-滑川総合ゾーンはノーシードの有力校がひしめき、どこがきてもおかしくない。
20年前の再現を狙う滑川総合は左横手投げの軟投派・岡崎の粘り強い投球と足や小技を絡めた攻撃が武器。3回戦で戦うことになりそうな叡明が最初のヤマ場。叡明は中軸の三部らに機動力があり、積極的な走塁で揺さぶり、得点機を確実に仕留める。
ともに準優勝経験のある白岡-鷲宮の2回戦は好勝負になりそう。その勝者と3回戦でぶつかりそうな松山は丁寧に走者を送って好機を広げ、勝負どころで一本が出るかどうかが鍵。
栄北-上尾ゾーン「伝統校など混戦必至」
上尾と春日部共栄の2強を軸に決勝進出を懸けた争いが繰り広げられそうだ。初シードの栄北、昨夏16強の北本、昨秋16強の昌平や早大本庄などが追う。
昨秋34年ぶりに4強入りした上尾は、制球力のある右腕木村、球の切れで勝負する右横手投げの川田、技巧派左腕の寺山を軸に粘り強く競り合いに持ち込むのが理想的。7~9番の二階堂、小林、内山がつないで1番小川と3番日野の好打者まで回したい。春の雪辱に燃える早大本庄と準々決勝での再戦が濃厚。
春日部共栄は最速140キロで強気の投球が持ち味の右腕内藤、身長188センチの高さから威力のある直球を投げ下ろす左腕渡部、左横手投げの変則な大木の3投手が堅調で守備に不安はない。春に課題となった得点力の向上も顕著だ。昌平は長距離打者の比嘉、佐々木、谷口に千田、渡辺、吉野の1年生トリオが加わり、大幅アップした上位の打撃で打ち勝つ。
栄北は接戦をものにできる粘りが身上。1年の秋からエースで経験豊富な左腕高木の投球術が光る。打線は勝負強い4番塚田、5番武井ら打力の底上げは順調だ。しかし、初戦の北本、3回戦の本庄東、4回戦の本庄第一、準々決勝の春日部共栄と厳しい試合が続きそう。
本庄第一は多彩な変化球を持つエース右腕白山の出来次第だが、過去2度の甲子園はいずれもノーシードから決めたダークホースは不気味な存在だ。
(埼玉新聞)