【写真】仙台育英戦の前日練習でバント処理練習をする投手陣。(右から)エース小島、山口、涌本=9日午後、兵庫県伊丹市の伊丹スポーツセンター(埼玉新聞)
◇浦学、待望の初戦 きょう仙台育英と激突
第95回全国高校野球選手権大会で史上8校目の春夏連覇に挑む選抜大会覇者の浦和学院は10日、第4試合で仙台育英(宮城)と1回戦を争う。
チームは前日の9日、兵庫県伊丹市の伊丹スポーツセンターで2時間、最終調整した。待ちに待った初戦が翌日に迫り、ナインの表情や動きからも活気が伝わってきた。
仙台育英は春夏通算24度の出場を誇る東北の雄。全国各地区の優勝校が集う昨秋の明治神宮大会を制し、選抜大会でも8強に進出した。
1点を争う激戦が予想される中、自身10度目の夏の甲子園となる森監督は、「この舞台でできる喜びを、見ている人も感じることができる姿で戦ってほしいし、戦いたい」と期待を込める。鍵を握る2年生エース小島は「調子も上がってきて、あとは頭と心の準備だけ。自分の思ったところに投げられれば打たれない。マウンドで暴れたい」と決意を語った。
◇期待と注目の大航海 きょう仙台育英戦
【写真】仙台育英戦の前日練習で森監督(右)のノックで気合の入った表情を見せる(左から)贄、山根、斎藤、渡邊ら=9日午後、兵庫県伊丹市の伊丹スポーツセンター(埼玉新聞)
選抜大会を制し、史上8校目の春夏連覇を目指す浦和学院は10日の第4試合で、仙台育英(宮城)と1回戦を争う。チームは前日の9日、午後2時から兵庫県伊丹市の伊丹スポーツセンターで2時間の最終調整を行った。
初戦を翌日に控え、選手たちの表情はより気合がこもり、動きもキビキビとしていた。キャッチボール、トスに続き外野陣の犠打、投手陣のバント処理や投内連係を含んだ3カ所フォーメーションを実施。さらにシートノック、右投手を相手にシート打撃、パーツ(課題)練習、最後は体幹トレーニングで締めくくった。
大事な初戦を前にして、森監督は「相手は関係ない。選抜の時と同じように、どんな状態でも初戦を乗り越えたい」と視線を上げた。主将の山根も「勝つために、一人一人が自分のできることを百パーセントやりたい」と、この一戦に懸ける強い意気込みを示した。
◇春夏連覇へ「敵は我にあり」
期待と注目を一身に浴び、選抜大会王者・浦和学院の大航海が始まる。
昨秋の明治神宮大会を制した仙台育英との初戦は屈指の好カード。だが、小島が投げてバックが守り、強力打線が援護する…。これまで培ってきた必勝スタイルを発揮できれば問題はない。「敵は我にあり」。森監督がよく発する言葉を借りれば、鍵はやはり自分たちに負けないことだ。
第4試合は午後3時半開始予定だが、第3試合までの進行によっては遅れる可能性もある。夕方やナイターは球が見づらく、グラウンドもでこぼこし、予測しづらいバウンドになる。
また朝から張り詰めていた緊張の糸がちょうど途切れやすい時間帯でもある。竹村は「最後まで集中力を保てるか。そういうところを意識してプレーしたい」と、気持ちの部分を強調した。
ナインは埼玉大会後、1日平均約7時間と、猛練習を積んで甲子園に乗り込んできた。「一番大事な初戦で、やってきたことを出すだけ」と主将の山根。言葉は慎重だが、その顔つきは自信に満ちていた。
◇エース小島「全部出す」
浦和学院が誇る魅惑のエース・左腕小島が初戦に向けて自信を示した。
この日の練習では遠投を入念に行ってからブルペン入り。森監督も見守る中、相棒の西川を相手に53球を投げ込み、「だんだんと調子も上がってきました」と拳を握る。
県大会優勝後は、基礎的な部分からつくり直してきた。「やってきたことはたくさんある。それを全部出すだけ。初回から飛ばして、全力でいきます。任せておいてください」と、期待を抱かせるコメントを残し、足早にバスへと乗り込んだ。
◇春の再現なるか 燃える主砲高田
「技術は変わらないけど、気持ちは上がってます」。浦和学院の主砲高田が燃えに燃えている。
埼玉大会では、不本意な結果、内容に終わったが、何より大舞台に強いのが頼もしい。昨夏3回戦の天理戦での一発を皮切りに選抜大会では3試合連続アーチを放った。
森監督には「しっかり振ってボールが引っかかれば飛んでいく」と言われているそうで、「(本塁打は)狙わないけど、フルスイングして結果的に外野を越せればいいです」。“ミスター甲子園”は目を光らせた。
◇浦和学院・森監督「ローゲームの接戦で勝機」
【写真】フィールドをバックに健闘を誓い合う浦和学院の森士監督(左)と仙台育英の佐々木順一朗監督=7日午前、甲子園(埼玉新聞)
3日目の第4試合(10日・午後3時半)で対戦する浦和学院の森士(おさむ)監督と仙台育英の佐々木順一朗監督が対談し、互いの印象や鍵になる選手などを語った。
―相手の印象。
森「甲子園出場24度を誇る古豪で、毎回、甲子園を沸かせているネームバリューのある学校。投攻守がそろった素晴らしいチーム」
佐々木「優勝候補だと思うし、投手もいい。いい(強い)イメージしかない。当たってしまったなという印象」
―警戒する選手。
森「馬場君、鈴木君の二枚看板は好投手。長谷川君、上林君の3、4番を中心に、つながりのある打線をどう抑えるか」
佐々木「小島君。うちの打線にどう投げてくるのか。打線も怖い。特に1周り目を警戒したい」
―鍵となる選手。
森「小島を中心に守って、その中で点数をもぎ取るしかない。打線は、県大会では当たってなかった上位に期待したい」
佐々木「失点をたくさんするチームなので、投手陣と守備で、いかに最少失点に抑えるか」
―何点勝負。
森「点数よりも、ロー(スコア)ゲームの接戦を意識してやることで勝機が見えてくる」
佐々木「3、4点の勝負にしたいが、それを許してくれるかどうか。3、4点を取り合う感じになれば勝機はある」
◇10度目燃える使命感 森士監督
4日、甲子園練習が終わり一塁ベンチ前で大勢の記者に囲まれた。選抜大会で栄光を手にしてから4カ月。不思議な感覚を味わったという。
今までは「帰ってきたな」「ここが聖地だよな」という興奮があったそうだが、「ここに立っているのが、昨日のように感じる」。さらに「自分たちの戦いの場にやってきた」と続けた。その表情は冷静そのものだった。
1日で監督生活も23年目に突入し、「これまでの22年間の集大成を見せたいね」。一戦必勝スタイルに変わりはないが、視線の鋭さは本気で頂点を狙っている証しだ。
春夏甲子園連覇への意気込みを問われると、必ずこう答える。
「春勝った喜びは残っているが、『夏も』という意識ではない」。そして、埼玉県勢がいまだに夏の甲子園で優勝経験がないことを挙げ、「それを達成したい。埼玉に初の深紅の大優勝旗を持ち帰る、それのみです」。
埼玉大会決勝の優勝監督インタビューでも満員の高校野球ファンの前で同じように宣言した。区切りとなる10度目の夏。いつも以上に埼玉を背負う使命感に燃えている。
◇選手層にさらなる厚み
▽投手「小島の負担軽減を」
選抜大会優勝投手で、埼玉大会では完全試合を達成したエース小島は全国屈指の安定感を誇る。
春から直球のスピードとスライダーのキレが増したことで、投球にすごみが加わった。埼玉大会で3失点はしたが、緊迫した場面では1点も失っていない。勝負どころを察知する能力も抜群だ。試合間隔が詰まり疲れが出た時に、修正できるかが唯一の不安材料か。
山口、涌本の両右腕も投げられる状態にある。短いイニングでもマウンドに立って、2年生左腕の負担を軽減させたい。
▽攻撃「主軸の復調鍵握る」
チーム打率3割1分9厘はやや物足りないが、埼玉大会以降、確実に状態は上向いている。
埼玉大会では打線の看板・山根、高田、木暮以外の活躍が目立った。6番斎藤がチーム一の7打点、7番西川は高打率で二塁打4本、8番小島は4割5分と打率ナンバーワン。9番津田はしぶとく、1番竹村も4割に迫る高打率で、2番服部は右への打球が持ち味だ。
3~5番が当たり出せば、選抜大会の時のように手のつけられない打線になる。要所でエンドランを絡めるのも特長。
▽守備「光る鉄壁の二遊間」
強打のイメージが強いが、本来は小島を中心とした守りのチーム。埼玉大会の失策も初戦の1のみだった。特に勝負どころで遊撃手竹村、右翼手斎藤らの好守が光った。
捕手西川はショートバウンドを止める能力が高く投手陣に安心感を与える。肩が強く、送球の正確さもある。津田、竹村の二遊間は鉄壁。特に津田は1年生とは思えない守備力。木暮、高田の一、三塁手は無難にさばきたい。服部、山根、斎藤の外野陣も不安はないが、ボールへのチャージ力が上がれば鬼に金棒だ。
◇春夏連覇の偉業達成を 上田清司県知事
浦和学院高校の皆さん、全国高等学校野球選手権記念大会出場おめでとうございます。激戦区埼玉大会を2年連続で制した自信と誇りを持って、春夏連覇の偉業達成を目指し、一戦一戦全力で戦い抜いてください。721万県民の皆さまとともにご健闘を心からお祈りしています。
◇浦学旋風巻き起こして 清水勇人さいたま市長
県大会で優勝した勢いのまま甲子園に乗り込み、春夏連覇に向け、浦学旋風を巻き起こしてください。浦学本来の底力を存分に発揮し、深紅の大優勝旗を持ち帰ってくれることを125万さいたま市民の皆さまとともに心待ちにしております。
◇鍛え抜かれた力発揮を 大塚英男県高野連会長
甲子園出場おめでとうございます。埼玉県160校の代表として、埼玉大会で見せた鍛え抜かれた守備力、集中打、強固なチームワークを甲子園でも存分に発揮し、県民に勇気と感動を与えてください。一戦必勝の精神で、深紅の優勝旗を目指し、健闘を期待します。
◇練習の成果を甲子園で 高間薫県高野連理事長
4季連続の甲子園出場おめでとうございます。春の選抜大会を勝ち抜いた経験を生かして、そして埼玉県160校の代表として深紅の大優勝旗を持って帰ってきてもらいたいと思います。普段の練習の成果を夏の甲子園でも発揮してください。期待しています。
(埼玉新聞)