(4日・県営大宮)
第6日は準決勝を行い、川越東が1984年の創部以来、初めての決勝、関東大会(25~29日・千葉)進出を決めた。第2シード浦和学院は、2年ぶり15度目の決勝、関東大会へ駒を進めた。決勝は5日、県営大宮球場で午前10時にプレーボールの予定。
2年ぶりに4強入りした川越東は左腕のエース高橋が、初のベスト4と快進撃を続けた春日部東の右腕木下との投手戦を制し、1-0で競り勝った。高橋は切れのある直球を軸に、大きく縦に変化するスライダーを絡めて、相手打線を被安打3、11奪三振で完封。三塁に走者を背負った六、九回のピンチも後続をスライダーで空振り三振に仕留め、六回2死満塁から札葉の押し出し四球で挙げた1点を守り切った。
浦和学院は3連覇を狙った花咲徳栄に3-1で逆転勝ちした。浦和学院は0-1の五回、荒木の中前適時打で同点とすると、迎えた七回2死一、三塁の好機で、諏訪が3球目の直球を右中間へ運ぶ2点三塁打を放ち、勝ち越しに成功した。投げてはエース左腕江口が10安打6四死球を許しながら、1失点完投と粘りの投球を見せた。決勝では3年ぶり13度目の優勝を目指す。
※決勝戦は10月7日に順延となりました
◇浦学、ここぞで底力 ライバル対決逆転勝ち 受け継がれる勝負根性
【写真】7回表浦和学院2死一、三塁、諏訪が右中間を破る決勝の2点三塁打を放つ。捕手笹谷
脈々と受け継がれる浦和学院のDNA、勝負根性と底力が花咲徳栄との大一番で爆発した。
守っては5併殺を奪うなど無失策でエース江口を強力援護。江口も仲間の心意気に応えて10安打を浴びながらも1失点で完投。打線も好機で3点をもぎ取った。森監督は「こういうゲームができたことが大きな自信になるが、勝つと負けるとでは全く違う。実りある大きな1勝」と、好敵手との決戦を最高の形で制し、納得の表情を見せた。
しびれるような場面でこそものをいうのが浦和学院の勝負強さ。最も象徴されていたのが1-1で迎えた七回の攻防だ。
1死から高橋、荒木の連打などで2死一、三塁を築き、1番の1年生諏訪が「好球必打だけを考えていた」。内角の甘い直球を完璧に捉えると、全員の思いを乗せた打球は右中間を深々と破る三塁打となり2点を勝ち越し。その裏、1死三塁を招いたが二ゴロを臺が本塁で刺し、与えたくなかった1点を阻止した。
2点リードのまま突入した九回は1死満塁と、今度は一打逆転サヨナラの大ピンチ。だがここでも一塁ゴロを山崎がベースを踏み、捕手西野へ落ち着いて送球し、タッチアウト。この日五つ目の併殺を完成させ、歓喜の瞬間は訪れた。
2年ぶりに目指す春の大舞台へ、まずは第一関門を突破。久々に過ごした長い長い夏は、全てを一から見直すことができた意味のある時間となった。
当然、決勝を見据えつつも江口は「自分のことをやりながら、周りとも声を掛け合ってきたことが、この秋に発揮できている」。主将の津田も「夏に負けてから、朝から夜までやってきたことに間違いはなかった」と少しだけ誇らしげだった。
◇江口、感謝示す粘りの投球
仲間の好守備にも支えられ、浦和学院のエース左腕江口が被安打10で1失点完投。「自分の投球が、というよりも守りが本当に助けてくれて、最後まで思い切り投げることができた」と感謝の言葉を仲間に贈った。
しつこい花咲徳栄打線に走者を背負うことは想定内。直球の平均は120キロそこそこだが、とにかく粘りに粘った。3-1の九回に招いた1死満塁のピンチも「俺たちが守ってやる」という野手陣の鼓舞に、「気持ちの勝負。ミットを目掛けて投げた」と内角の厳しい直球で一ゴロを打たせ併殺に切って取った。
目の病気に悩まされ、1年間苦しい時を過ごした。それだけに「たくさんの人のおかげで投げられることができる感謝と喜びをグラウンドで表現したい」。この思いが左腕を突き動かしている。
◇徳栄、“らしさ”欠く5併殺
【写真】7回裏花咲徳栄1死三塁、太田の二ゴロで三塁走者山本(左)が本塁へ突入するもタッチアウト。捕手西野
花咲徳栄は10安打6四死球と再三好機を築いたが、5併殺と拙攻が響き、3連覇と4年連続の関東大会出場を逃した。「絶対に勝とうという気持ちが空回りした」と主将の米沢、岩井監督も「非常にレベルの高い試合。チャンスで一本出るかという勝負のあや」と、運に見放された“好試合”を悔やんだ。
2点を追う九回には1死満塁の好機を築いたが太田が一ゴロ。三塁走者笹谷も本塁タッチアウトとなり併殺で試合終了。「いつも通りできなかった」という米沢の言葉通り、緻密さに欠けた。
投手陣は故障明けの鎌倉に頼らざるを得なかった。岩井監督は「最後まで苦しかった。浦学相手に試合をつくれるのは鎌倉しかいない。最後まで1-0で行かないといけない」と話す。投手陣の整備という課題に向け、この秋チームをけん引した1年生左腕高橋の成長は明るい材料だ。
今夏の埼玉大会開幕戦で山村国際に敗れた7月9日。新チームはどん底から一歩を踏み出し、「もう一度新しいトクハルを見せる」と、約3カ月にわたって厳しい練習を積んできた。先制適時打を放った笹谷は「この冬どれだけ成長できるか」と、さらなる成長に意欲を燃やした。
◇ストレート伸びず3失点 無念の降板 花咲徳栄・鎌倉
昨秋以来の先発マウンドとなった右腕鎌倉は7回3失点で無念の降板。「1年間投げられなくてチームに迷惑を掛けて、こういう結果になって残念」とうつむいた。
最大の武器である直球の伸びも本調子には程遠く、勝ち越し適時打を許した場面では内角への直球が甘く入った。岩井監督も「ちょっとしたコントロールミス。休み明けのところが出た」と失意の背番号18をかばった。鎌倉は「もう一度浦学にリベンジしたい。打たれないストレートを」と声を振り絞った。
◇浦学に地力、川越東は打線鍵 決勝見どころ
秋の決勝では初の顔合わせ。両チームとも疲労を考慮してエースを温存する可能性もあるが、初の関東へ弾みをつけたい川越東は左腕高橋を起用するとみる。浦和学院は今村、小倉の先発か。
総合力で上回る浦和学院は高橋の切れのある直球と大きく縦に変化するスライダーに対し、狙い球を絞って思い切りバットを振り抜きたい。花咲徳栄戦では安打の出なかった4番山崎の奮起にも期待。
準決勝では好機で一本が出なかった川越東打線だが、19安打14得点と市川越戦で発揮した集中力を大一番で出せるかどうか。浦和学院の投手陣は走者を出しても辛抱強く低めを突きたい。
(埼玉新聞)
試合結果 |
県大会準決勝 10月4日(県営大宮球場) | ||||||||||||
TEAM | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 計 | H | E |
浦和学院 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 2 | 0 | 0 | 3 | 10 | 0 |
花咲徳栄 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 10 | 1 |
【浦】江口-西野【花】鎌倉、高橋-笹谷 ▽三塁打:諏訪(浦)▽二塁打:岡崎、久々宇(花) |
浦和学院打撃成績 | ||||
位置 | 選手名 | 打数 | 安打 | 打点 |
⑤ | 諏訪 | 5 | 2 | 2 |
④ | 臺 | 3 | 1 | 0 |
⑥ | 津田 | 3 | 1 | 0 |
③ | 山崎 | 4 | 0 | 0 |
⑧ | 幸喜 | 4 | 1 | 0 |
② | 西野 | 4 | 1 | 0 |
⑨ | 高橋 | 4 | 2 | 0 |
⑦ | 荒木 | 3 | 2 | 1 |
① | 江口 | 3 | 0 | 0 |
計 | 33 | 10 | 3 | |
花咲徳栄打撃成績 | ||||
位置 | 選手名 | 打数 | 安打 | 打点 |
⑥ | 太田 | 4 | 0 | 0 |
⑦ | 久々宇 | 3 | 1 | 0 |
⑨ | 里見 | 3 | 0 | 0 |
④ | 岡崎 | 4 | 3 | 0 |
⑧ | 大滝 | 4 | 0 | 0 |
③ | 上村 | 3 | 1 | 0 |
② | 笹谷 | 4 | 3 | 1 |
① | 鎌倉 | 1 | 0 | 0 |
H | 青木 | 1 | 1 | 0 |
R | 山本 | 0 | 0 | 0 |
1 | 高橋 | 0 | 0 | 0 |
H | 河上 | 0 | 0 | 0 |
R | 小林 | 0 | 0 | 0 |
⑤ | 米沢 | 2 | 1 | 0 |
計 | 29 | 10 | 1 |
投手成績 | |||||||
TEAM | 選手名 | 回 | 被安打 | 奪三振 | 四死球 | 失点 | 自責点 |
浦和学院 | 江口 | 9 | 10 | 2 | 6 | 1 | 1 |
花咲徳栄 | 鎌倉 | 7 | 9 | 0 | 1 | 3 | 3 |
高橋 | 2 | 1 | 0 | 1 | 0 | 0 |
TEAM | 三振 | 四死球 | 犠打 | 盗塁 | 失策 | 併殺 | 残塁 |
浦和学院 | 0 | 2 | 2 | 0 | 0 | 5 | 7 |
花咲徳栄 | 2 | 6 | 2 | 0 | 1 | 2 | 9 |
浦和学院が5併殺を奪うなど、花咲徳栄に守り勝った。
浦和学院は無失策とバックが江口を援護。3-1の七回は1死三塁から二ゴロで本塁封殺。九回の1死満塁では一ゴロ併殺に切って取った。打線は七回、2死一、三塁で諏訪が決勝2点三塁打。
花咲徳栄は先制したものの拙攻が響き、好投した鎌倉、高橋を助けることができなかった。
浦学公式サイトより |
秋季県大会準決勝に進出した野球部。相手は、私立強豪校の花咲徳栄高校。「ここからが、甲子園に近づく大事な試合。絶対に落とせない。」 試合は3対1で接戦を勝利で飾った。
昨年の選抜高校野球大会で全国優勝を成し遂げてから3季甲子園大会から遠ざかっている。そしてこの夏は、優勝投手の小島(3年)を擁しながら、まさかの県大会2回戦敗退。新チームには長い夏と試練の夏が待っていた。
終業式前に敗退し、七月中は練習試合をせず、真夏の炎天下に体力作り。どこのチームも昼間の練習を避け、朝晩の涼しい時間に効率よく練習する話は耳にするが、浦学野球部はそうではなかった。
実力のある選手がいても県立高校に敗退、全国一の練習をしていても県大会敗退。この汚名を晴らし、築いてきた伝統を守るには、「他と違うことをしなければならなかった。」
新チームが、今日この日、関東大会(春の甲子園)に近づくには、並々ならぬ努力、血のにじむ練習をしてきたのだ。真昼の炎天下、灼熱の太陽の下、コンクリート上で、腹筋などの体つくりを繰り返し、心身ともに成長させたのだ。
野球部がここまで勝ち進めるのは、周りの応援のおかげ。一生懸命グラウンド整備する控え部員。土曜日にもかかわらず、大群で応援してくれる「浦学ファイヤーレッズ」-生徒会・吹奏楽・ソングリーダーのメンバーたちに感謝、感謝。