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「今度は母校で恩返し」ナイン支える“兄貴分”田村雅樹コーチ

 「田村コーチ、バレンタインデーでチョコレートもらえないと思いますので、これ食べてください」

 選抜大会出場が決まり、ささやかな祝宴が催されたグラウンドで、選手たちが田村コーチを冷やかした。3人いるコーチ陣の中で一番年下なこともあって、選手との距離が最も近い存在だ。

 健康食品会社、コーケンメディケアセンターで働きながら、選手の食事や体調管理などコンディションを中心に野球部を全般的に指導。選手から野球以外の個人的な相談を受けることも多く、兄貴分的な存在だ。森監督からも「体のケアと心のケア、チームの基盤をつくる礎、一番苦しいところをやっている」と信頼が厚い。

 現役時代は決して日の当たる選手ではなかった。1992年に入部。「甲子園を目指せる学校で野球をやりたかった。厳しい中でも明るい雰囲気で、ここならやれると思った」と当時を振り返る。

 気持ちの真っすぐなところがある。練習は無遅刻、無欠席、早退もなく3年間通した。39度の高熱やけがをした時でもグラウンドに立った。力いっぱいの声と気迫を前面に出して引っ張る姿は今と変わらない。

 公式戦出場はわずか1打席。94年の春季県大会準々決勝で代打で起用された。結果はスクイズを外され三振。しかも併殺。「より一層練習に打ち込むようになった。技術で負けているのを認めたくなかったし、意地もあった」と照れる。

 コーチに就任する時も自分に正直だった。函館大を卒業後、野球と直接関係のない会社から内定をもらっていた。それでも、野球への強い思いは断ち切れなかった。森監督は渋ったが、内定を辞退。結局、同監督の紹介で野球部とかかわりの深い現在の会社に就職した。「野球を通して人間性を磨いた。今度は母校で恩返ししたいと思った」と野球部に戻ってきた。

 「今は一日一日が勝負。野球に懸ける情熱と選手が頑張っている姿を見られるからやっている。ぜひ全国制覇をしたい」

 コーチ就任7年目。選抜大会期間中も試合のないときは学校に戻り、メンバー以外の選手を指導する。ナインと切磋琢磨(せっさたくま)を繰り返しながら、一番の成長を遂げているのは、そんな時の自分自身なのかもしれない。

http://www.saitama-np.co.jp/main/rensai/sports/uragaku2/01.html

(埼玉新聞)

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