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浦和学院、逆転負けで20年ぶり4強逃す

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4強入りを逃し、悔しさをにじませながら、応援席へあいさつに向かう浦和学院ナイン=30日、甲子園

 第84回選抜高校野球大会第9日は30日、兵庫県西宮市の甲子園球場で準々決勝2試合を行い、浦和学院は大阪桐蔭に2-3で逆転負けし、20年ぶりのベスト4はならなかった。

 浦和学院・佐藤、大阪桐蔭・藤浪の両エース右腕を温存して始まった試合は、序盤から浦和学院ペースで進んだ。一回1死一、三塁の好機に4番笹川が中前打を放って幸先良く先制。先発の2年生・山口は相手の強力打線に対し、5回を3安打無失点に抑え、1―0で中盤に突入した。

 ともに六回からエースをマウンドに送り込んだ。ここから試合は動きを見せる。七回、佐藤が2死二塁からタイムリーを許し同点とされた。その裏、3連打で無死満塁と勝ち越しの大きな好機をつくった。しかし、藤浪の150キロの速球とスライダーに後続が3連続三振を喫した。

 それでも八回に2死満塁と攻めて、捕逸で勝ち越しに成功。4強入りへ王手をかけた。だが、九回にまさかの展開。1死一塁から佐藤が同点二塁打を浴びると、さらに逆転打も許し、一気にうっちゃられた。最後の裏の攻撃で2死から緑川、竹村の連打で一、二塁と同点、逆転への望みをつないだが、続く林崎が遊ゴロに倒れた。

 浦和学院ナインは準々決勝にふさわしい堂々とした戦いを見せた。森監督は「選手たちはよくやった。最後まで諦めず、必死に食らい付いてくれた」とねぎらいの言葉を掛けた。その上で「全国で勝っていく投手からどうやって点を取るか。機動力を含めた攻撃力を高めたい」と夏へ向けての課題を挙げた。

悔い残す佐藤、夏へ成長誓う

準決勝進出を逃し、うつむくエース佐藤(左)に声を掛ける森監督

準決勝進出を逃し、うつむくエース佐藤(左)に声を掛ける森監督

 試合後のエースの顔は悔しさであふれていた。六回からマウンドに上がった佐藤だったが、4回を7安打3失点。2回戦で3安打完封した本来の制球力はなく、「ボールが甘く入ってしまった」と必死に声を振り絞った。

 1-0の七回には2死二塁で適時打を許し、味方が勝ち越した九回には、1死一塁から2ストライクと追い込みながらも外角直球が甘くなり二塁打で再び同点。さらに2死二塁からツーシームを中前に運ばれ決勝点を献上した。「勝負どころで厳しいコースに投げきれるようにならないと」と反省した。

 それでも投打に背番号1の存在がなかったら、チームは準々決勝の舞台に立ってなかった。「きょうの試合で力のなさが分かった。この反省を生かす。もう一度甲子園に来たい」。もっとたくましくなって最後の夏、甲子園のマウンドに戻ってくる。

 

笹川、攻守でキラリ

1回裏浦和学院1死一、三塁、笹川が中前に先制打を放つ。投手沢田、捕手森

1回裏浦和学院1死一、三塁、笹川が中前に先制打を放つ。投手沢田、捕手森

 副主将を務める笹川が攻守で輝きを放った。

 まずは4番として“打”で魅せる。一回1死一、三塁からスライダーを弾き返し中前先制打。「やることをやってきたから頭を空っぽに振った」と、自然と体が反応した。七回にも藤浪の151キロの直球を中前に運んだ。

 九回は“守”。先頭打者の右前に落ちた打球を拾い、「守備には自信がある。この辺に来ると予測していた」と素早く送球。遠投120メートルの強肩がうなりを上げ二塁を狙って打者の捕殺に成功しこん身のガッツポーズ。

 試合には敗れたが、さっぱりした表情。「いざという時、チームを助けられるようにもっと練習する」。責任感の強い男は向上心の塊でもある。

 

 

浦学、土壇場で4強逃す

9回表2死二塁のピンチで浦和学院・佐藤が中前打を浴び、二走安井に逆転の生還を許す。捕手林崎

9回表2死二塁のピンチで浦和学院・佐藤が中前打を浴び、二走安井に逆転の生還を許す。捕手林崎

 浦和学院は、優勝候補の大阪桐蔭と互角以上の戦いをしたが、九回に逆転された。

 浦和学院は1-1の八回2死満塁から捕逸で勝ち越した。しかし九回1死二塁から佐藤が同点二塁打を浴びると、さらに中前に決勝打を許した。先発の山口は5回を無失点と好投したが、2番手の佐藤がつかまった。

 打線は六回からリリーフした藤浪を攻略寸前まで追い詰めながら、あと一本出なかった。同点の七回には3連打でつくった無死満塁で、後続が3連続三振に倒れた。

 

 

 

貫いた「真っ向勝負」

 20年ぶりの4強に手が届く、はずだった。あとアウト2つ。ここから長かったのか、一瞬だったのか。浦和学院は大阪桐蔭に逆転を許した。

 白星がこぼれ落ちた森監督は開口一番、「本当に悔しいです」。「あと一つ。あと一歩。そこが全国で勝ち上がっていくためのテーマ」と無念の表情を見せた。

 2-1の九回1死。4番小池を四球で歩かせ、続く安井を2ストライクとした直後の攻めが、勝敗の分岐点となった。捕手林崎は外に構えボール球を要求したが、佐藤の134キロの直球が少し中に入り、左中間へ痛烈な同点二塁打を浴びた。

 林崎は「もっとはっきり外しておけば…」。佐藤も「悔いの残る一球」と反省する。この一打で流れは相手に傾き、2死二塁から7番白水に甘いツーシームを中前に運ばれ勝ち越しを許した。それまで何とかしのいでいた相手強力打線に、最後の最後につかまった。

 敗れはしたが選手たちは真っ向勝負を貫いた。

 サプライズとなった山口の先発。甲子園で初登板の右腕は5回を3安打無失点と期待に応えた。打線も一回、こちらも驚きの先発だった大阪桐蔭・沢田の立ち上がりを攻め、笹川のタイムリーで先制した。

 最大の見せ場は同点の七回の攻撃。六回から登板した197センチ右腕藤浪の150キロ超えの直球に振り負けず3連打で無死満塁と攻めた。打順は7、8、9番だったが、森監督は小細工せず一打にかけた。結果は3連続三振。大ピンチで超高校級の投球を見せた藤浪を褒めるしかない。見応えのある堂々とした対決だった。

 甲子園5大会連続初戦敗退の呪縛から解き放たれ、実力の片りんを見せた。しかし、笹川は「8強では満足できない。この経験を生かし、夏には借りを返したい」と前を見据える。“全国制覇”を目指し、ナインは再び、果てなき冒険の旅に出る。

山口、闘志の5回力投

先発し5回無失点と好投した浦和学院・山口

先発し5回無失点と好投した浦和学院・山口

 浦和学院の先発のマウンドには、ここまで2試合を一人で投げ抜いたエース佐藤ではなく、背番号11の2年生右腕山口が立った。森監督は「佐藤一人に頼るというのは、準備してきたことを考えても本意ではない」と起用を説明した。

 山口は「とにかく投げたかった」と全身からほとばしる闘志を右腕に込めた。142キロの直球や縦の変化球を中心に、5回を投げて被安打3で無失点。六回から先輩佐藤にたすきを渡した。

 ただ、2巡目からは捉えられ始めただけに本人は「少しは自信が付いたけど、9回まで投げ切れる投球がしたい」。手応えを感じつつも、決して満足はしていなかった。

 

 

浦学ナインのひと言

▽必ず戻ってくる・佐藤拓也投手
「実力のなさが勝負どころで出た。必ず夏に戻ってくる」

▽夏には全国制覇する・林崎龍也捕手
「これで終わりでない。帰ってきて夏は全国制覇する」

▽点を取れるチームに・明石飛真一塁手
「どんな投手からでも、5、6点取れるチームにしたい」

▽打撃面に心向け練習・緑川皐太朗二塁手
「今度は打てるように打撃面に心を向けて練習する」

▽夏には活躍し勝利を・木暮騎士三塁手
「活躍できなかった。夏は自分が甲子園で勝たせたい」

▽夏にはリベンジする・竹村春樹遊撃手
「最後まで勝つ気持ちだった。夏にはリベンジしたい」

▽貢献し借りを返したい・山根佑太左翼手
「勝ちに貢献出来る選手になって借りを返したい」

▽結果出せず力不足感・石橋司中堅手
「迷わずに打席に入れたが結果が出せず力不足を感じた」

▽好投手と対戦できた・笹川晃平右翼手
「すごい投手と対戦できたことは、良い経験になった」

▽投げられずに悔しい・野村亮太投手
「佐藤さんらの姿を見て自分が投げられず悔しい」

▽低めの練習をしたい・山口瑠偉投手
「勝ちたかった。低めに投げられるように練習したい」

▽日本一になれず悔しい・西川元気捕手
「日本一になるためにやってきた。悔しい思いだけ」

▽必ずマウンドに立つ・伊藤祐貴投手
「投げられず悔しい。甲子園のマウンドに必ず立ちたい」

▽悔しさにも良い経験・森戸佑樹二塁手
「出られず悔しいが、とても良い経験が出来た」

▽気負って結果出せず・吉川智也三塁手
「先発の喜びを感じたが気負って結果を出せなかった」

▽怪我治し戻ってくる・渡邊剛投手
「怪我を治し、甲子園のマウンドに戻ってきたい」

▽スタメン勝ち取る・西岡伸朗中堅手
「夏はスタメンを勝ち取ってこの舞台に立ちたい」

▽悔しい思いいっぱい・安室健太中堅手
「結果を出せず、とにかく悔しい思いでいっぱい」

浦学ナイン奮闘に拍手 高まる夏への期待

アルプス席で母校の必勝を願う浦和学院応援団=30日午前、甲子園

アルプス席で母校の必勝を願う浦和学院応援団=30日午前、甲子園

 「よく頑張った」「夏に戻ってこいよ」-。30日、第84回選抜高校野球大会準々決勝で浦和学院は大阪桐蔭に2-3で逆転負け。20年ぶりの4強こそ逃したが、西の横綱とがっぷり四つ組んだ好ゲームに、真っ赤に燃えた約千人の応援団からは歓声がやむことはなかった。

 地元・大阪の強豪校との対戦に一塁側のアルプススタンドの熱気はすさまじかった。

 応援団長を務める西尾太志選手(新3年)は「応援の数では負けるが、いつも以上に大声を張り上げる」。鉢巻きを締め直す手にも力が入る。林崎捕手の母・美紀さん(38)も「一人が10人分の応援を」と気合満々。ソングリーダー部の杉本優さん(新3年)は「決勝まで応援するつもり」と笑顔で選手を見つめる。

 緑川二塁手と木暮三塁手が小学生時代に所属していた野球チーム・大宮アローズの選手、監督ら40人がバス1台で応援に駆け付けた。二人を指導した関根道雄監督(62)は「こんな素晴らしいところで野球ができるなんて…。感動して言葉では表せない」と感無量の様子。チームの主将を務める附田彪冴(ひゅうご)くん(新6年)は「自慢できる先輩たち。格好いい」。シートノックをする二人に視線はくぎ付けだ。

 試合は開始から動く。一回に4番笹川選手の中前適時打で幸先良く先制。その瞬間、全員が肩を組んで応援歌を合唱。スタンドのボルテージはいきなり最高潮に達した。

 一方で不安げにグラウンドを見つめる人も。甲子園初登板で先発した山口投手の母・直子さん(40)は、三回までを無失点に抑えてベンチに戻る息子の姿に、「良かった。みんなのバックアップのおかげ」と安堵(あんど)しつつも、やっぱりまだ心配そう。

 2-1で迎えた九回。六回からリリーフした佐藤投手が1死から2点を奪われ逆転された。浦和学院ナインも意地を見せ、九回2死から連打で望みをつなぐ。だが同点、サヨナラの願いも届かず、このまま2-3で惜しくも敗れた。

 奮闘した選手たちに試合後は「よくやったぞ」と鳴りやまない歓声。そして拍手、拍手、拍手…。佐藤投手の母・馨さん(46)は「『よく頑張ったね。ありがとう』と言いたい。夏も甲子園に連れてきてくれると信じて、これからも応援します」と、こぼれ落ちる涙をそっと拭っていた。

(埼玉新聞)

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