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第99回全国高校野球埼玉大会、あす開幕 大会展望

 第99回全国高校野球選手権埼玉大会は8日、県営大宮球場で連合2チームを含む156チームが参加して開幕する。

 優勝争いは秋春王者で4年ぶり13度目の栄冠を目指す浦和学院、一県一代表制では初の3連覇を目指す花咲徳栄の両Aシードが実力、経験で一歩リードする。3年ぶりの頂点を目指すBシード春日部共栄、28年ぶりの甲子園出場を目指す同市川越も力はある。ノーシードにも聖望学園ら実力校がおり、序盤に波乱も予想される。

 1枚の甲子園切符を懸けた戦いの行方を四つのゾーンに分けて探った。

浦和学院-草加西ゾーン「実力校潜み油断大敵」

軽快なフットワークで守備範囲が広い浦和学院・二塁手家盛

 4年ぶりの栄冠を目指すAシード浦和学院が4強進出の大本命。昨秋、今春の県大会決勝で花咲徳栄を制し、3季連続での県王者へ挑む。春季関東大会では2年ぶりの優勝を飾り、関東王者の名を引っ提げて集大成の夏に挑む。

 投手陣で軸になるのは2年生左腕佐野。伸びのある直球に加え、切れ味鋭い縦スライダーに磨きがかかった。左腕清水も安定感があり完投能力を備える。近野、渡邊の両右腕も関東大会を経て経験を積み、いずれの投手も信頼できる。守備も遊撃手森川、二塁手家盛を中心に堅実だ。

 打線は左打者7人が並ぶ。春季県大会で5割を越す打率を残した5番山本の前に走者をためたい。3番家盛は秋季県大会決勝でサヨナラ打を放つなど勝負強く、4番蛭間は振りの鋭い強打者だ。

 だが本番の夏。なにが起こるか分からない。ノーシードには昨夏準優勝の聖望学園が入った。3番川上、4番大野ら主軸は堅調。右腕西沢ら投手陣がどこまで踏ん張れるか。最初のヤマ場となりそうな3回戦を越えれば一気に波に乗れそうだ。

 また、序盤から好投手を擁するチームが激突する。2回戦ではDシード武南の最速146キロ右腕布川と、切れ味抜群の縦スライダーを武器とする星野の左腕湯沢の投げ合いとなりそう。武南は機動力を生かした戦いで今春は16強に進出。一方、星野も昨秋の県大会で初の8強入りを果たし、接戦と予想する。

 内角を強気に攻める投球が持ち味の好左腕・桐敷を擁するDシード本庄東は、埼玉栄打線と真っ向勝負。好素材の2年生右腕米倉との投げ合いになれば、1点を争う好ゲームになりそうだ。

 その他にも、右腕伊藤の好投で春に初の8強へ進出したCシード草加西。右腕酢谷が引っ張る伝統校上尾、投打にまとまりがある春日部東、右腕坂本の出来が鍵を握る松山など、勢いに乗れば面白い公立校が潜んでおり、序盤から熱い戦いが繰り広げられそうだ。

叡明-春日部共栄ゾーン「シード軸、追う公立勢」

高い出塁率で打線をけん引する春日部共栄のリードオフマン川畑

 春季県大会で高橋ら投手陣が台頭したBシード春日部共栄が4強入りへ一歩リードか。

 春日部共栄は春の県大会では下級生を多く起用し競争を促した。3年生が意地を見せ、チームの総合力が底上げされた。攻撃は長打力がある主砲山本の前に走者をためたい。1番川畑ら上位陣が塁に出てかき回す。打順は1番川畑、3番森、4番山本、5番又吉は固定できそうだが、調子により流動的。それだけ選手層に厚みがあり、長丁場の夏を戦う上で武器になる。強肩捕手の又吉は好送球で簡単に盗塁は許さない。

 Cシード叡明は三上、室賀ら中軸打者が好機で一本出るかが上位進出への鍵を握る。成長著しい上條ら上位打線が好機で中軸に回すのが理想。そのためにも下位打線はつなぎの意識を強くして臨みたい。エース右腕熊谷は縦に大きく落ちるカーブを巧みに使い、凡打の山を築く。内外野の守備も安定感があり、捕手室賀は扇の要としての存在が際立っている。

 Dシード大宮東は昨夏4強入りにも貢献したエース右腕菅原が軸になる。春季大会で登板機会こそ少なかったものの、昨夏の経験も踏まえ、照準を合わせてくるのは間違いない。伝統の強打は復活の兆しが見え、主砲の緒方や西、友常らクリーンアップが強力。どの打順からでも長打で好機を築ける打線は脅威だ。

 Dシード西武台は総合力の高さが光る。技巧派の左腕永冨は速さこそないが、質の高い変化球が持ち味。打たせて取る投球で守備からリズムをつくる。攻撃は得意とする一、三塁からの攻撃で得点機をものにしたい。

 軟式から硬式野球部に転身した初出場・開智未来の戦いにも注目。ノーシードの公立勢には所沢商、鷲宮、熊谷商、市浦和ら終盤にドラマを見せるしぶといチームが名を連ねる。打力が自慢の早大本庄、小鹿野歌舞伎になぞり打ち出したら止まらない“歌舞伎打線”と銘打つ小鹿野も存在感を見せたい。

川越工-市川越ゾーン「強豪ひしめく激戦区」

強気なリードで守備からリズムをつくりたい市川越の捕手中山

 今大会の最激戦区。順当に上位シード勢が勝ち上がれば、公立校同士で4強を争うことになるが、実力ある私立勢が黙ってなさそうだ。

 Bシード市川越はエース左腕メンディスの出来が鍵を握る。春季大会では制球に安定感を欠いたが、徐々にまとまりが出てきた。捕手中山のリードにも期待したい。昨夏を経験した星野、勝負強い上原が軸となる打線が少ないチャンスをものにして左腕を援護していきたい。守備は内外野ともに一歩目が速く、二塁手野本、遊撃手柴を中心に堅実だ。

 長打力が最大の強みであるCシード川越工は冬場の振り込みの成果を春に見せ付けた。巧みなバットコントロールが光るリードオフマン菊政、長打力のある宮崎、新井、鈴木らに回し得点したい。投手陣も投球術が光る右腕小久保、最速144キロの直球が武器の右腕宮崎の二枚看板がけん引する。春に乱れた投内連係を見直し、わずかな隙も与えない。

 Dシード山村学園は140キロを越える直球が武器の右腕矢口が主戦。ほかにも鵙尾、山村ら投手陣は5人のベンチ入りが濃厚。犠打で着実に好機を築いて先制点を奪えれば面白い。もう一方のDシード東農大三は保科、飯塚ら主軸が振れている。右腕石川大ら投手陣を中心に守備から攻撃のリズムをつくれれば、勝機は見えてくる。

 ノーシードにも力があるチームがひしめく。4月に野中新監督が就任した川越東は水野、青山、後藤のクリーンアップが破壊力抜群だ。エース左腕苅部も安定感が増してきた。正智深谷は春に乱れた守備の安定が勝利への絶対条件になりそう。

 1番大嶋が打線をけん引する慶応志木は個々の能力は高い。打線に勢いがある北本、まとまりのある伊奈学園は乗ったら面白い。昨夏16強の西武文理や、狭山ヶ丘、昨秋8強の本庄第一ら、シード常連校が最後の夏に大番狂わせを狙う。

花咲徳栄-ふじみ野ゾーン「前回王者、打に破壊力」

主将として抜群のリーダーシップで引っ張る花咲徳栄の二塁手千丸

 Aシード花咲徳栄の4強進出は盤石だ。昨秋、今春と県大会では準優勝。ひと冬越えて破壊力が付いた打線に加え、清水、網脇の両右腕がけん引する投手陣に安定感が増し、総合力は県内随一だ。

 力強さが増し、打線は県内屈指だ。春季大会では太刀岡、千丸の1、2番コンビが機能。機動力を駆使する上位陣が好機を演出し、プロ注目の左打者・3番西川、2年生ながら春季大会で本塁打を量産した4番野村、勝負強い5番須永で得点を稼ぐ。下位打線にも岩瀬ら粘り強い打者が並び、どこからでも好機を築ける。

 投手陣は右の二枚看板。最速148キロの清水が先発して、網脇のリリーフで逃げ切る。ともに完投能力もあり、お互いの負担を軽減させつつ勝ち上がりたい。守備は二塁手千丸を中心に堅実で、内外野の連係も鍛えられており抜け目はない。

 対抗はCシードふじみ野、Dシード浦和実、同埼玉平成のシード勢か。

 ふじみ野は外角への制球が持ち味のエース右腕高野が軸。立ち上がりに課題を残すが、きっかけをつかめれば、直球とスライダーのコンビネーションに手が付けられない。強肩捕手・大野の配球にも注目。守備も大胆なポジショニングを取るなど工夫されている。

 英、三本木、白石とタイプの違う3投手の継投で昨秋は4強に勝ち上がった浦和実。1年生投手・三田の加入で投手陣はさらに厚みが増した。打線は調子により流動的になるが、小田、小原、本条ら勝負強い打者が打線の中心を担う。

 力強い打線が持ち味の埼玉平成は広角に長打を打てる鈴木がけん引。春季大会で打ち勝ってきた打力を夏に発揮すれば上位進出の可能性を秘める。

 シード外では投手力がある昌平、総合力の高い立教新座、投手陣が安定する山村国際が実力上位か。春季地区大会で花咲徳栄を苦しめた八潮南も注目したい。

(埼玉新聞)

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