2年連続のセンバツで雪辱を誓う 浦和学院チームルポ ほか

◇投守

 昨秋の関東大会は6人の投手がベンチ入り。決勝・作新学院戦は、伊藤、渡邊、山口という2年生トリオの完封リレーで頂点に立った。選手層の厚さには目を見張るものがあるが、逆にいえば森監督が「帯に短し、たすきに長しで…」と言うように、大黒柱となるエースがいないのも事実だ。1年秋にエースナンバーを背負った外野手兼任の佐藤と池山の両3年生右腕に、130キロ台後半の速球とキレのある変化球を持つ山口や伊藤、左サイドの渡邊。さらに、昨秋は背番号1をつけ、敗れはしたが明治神宮大会初戦(準々決勝)の愛工大名電戦でツーシームを武器に好投した2年生右腕・涌本。この中から軸となる投手を育てるのが、センバツまでの課題となる。

 投手陣を巧みにリードする林崎は捕ってからの動きが速く、スピード感あふれる捕手。昨センバツを経験している佐藤、主将の笹川、石橋の外野陣は、再三の好守で投手を救ってきた。内野では木暮、竹村の三遊間が2年生。経験不足を補うべく、タイヤを腰に結びつけてのノックなどで徹底的に鍛えられている。

◇攻撃

 佐藤、笹川、石橋の外野陣がクリーンアップに座る。ミート力に優れる3番・佐藤が軸となり、秋は今ひとつ振るわなかった4番・笹川も「タイミングを外されても、しっかり振ることができるように」とスイングスピードのアップに努めて復調気配だ。これに昨秋の関東大会で16打数10安打6打点と“MVP級”の働きを見せた2番・林崎らが並ぶ打線は、例年以上の破壊力を誇っている。

 加えて今年は俊足揃いだが「タイム的に足があっても、機動力に結びついていない」と森監督。オフにも実戦形式の練習を多く取り入れることで、試合中のとっさの判断力や洞察力を磨いている。

◇チーム

 2年連続関東覇者として臨む大舞台に「プレッシャーがないと言えばウソになる。勝つことが自信になっていればいいが、ほっとしてしまうのが怖い」と森監督。その意味もあってか、ネット裏の部室や食堂の壁に、その後の明治神宮大会で、愛工大名電に1-8と敗れた新聞記事を貼った。見出しをあえて「屈辱的な“大敗”」と書き換え、全員が悔しさを心に刻み込んでいる。

 昨年のセンバツでは緊張からバッテリーミスを連発し、実力を発揮できぬまま初戦敗退。「どんな形でも初戦を勝たせてやれれば…」と指揮官は2戦目以降の腰を据えた戦いに期待をかける。「一戦必勝の積み重ねだが、やるからには目指すべきだと思う」と初の全国制覇を視野に入れて、聖地へ乗り込んでいく。

◇我がチームの「マネジャー」杉田紗香、新城佳奈

 2人とも中学時代はソフトボールの選手だったが、野球部のマネジャーをやりたくて入学を決めた。想像していた役割とは違い、ノックの際のボール渡しなどグラウンドで練習を手伝うことはあまりできないが、食事作りの手伝いや清掃など、陰で野球部を支えている。新城は選手の成績をまとめる「集計」、杉田は食堂の2階で行うので「食2」と呼ばれるユニホームの管理などが担当だ。昨年のセンバツでスタンドから見た甲子園は「想像以上にすごかった」(杉田)。今年こそ、あの晴れ舞台でナインが勝利に沸く姿を楽しみにしている。

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◇4番として、リーダーとして 2年連続のセンバツで雪辱を誓う 笹川晃平

 秋の公式戦が終わった後、森監督はある決断をした。4番を打ち、昨年のセンバツを経験している笹川君を「チームリーダー」に任命した。主将の明石君と一緒にチームの意識改革を2人で行ってほしいという期待からだ。

 母、妹、祖母の女家系で育った笹川君。性格が優しく、小、中学通じてリーダーの経験がない。人の上に立って物を言うタイプではないと自分自身でも感じていた。しかし「黙って行動で動くタイプ」と森監督がその長所に目をつけ「うぬぼれ屋の多い」チームを変えるため、あえて重責を背負わせた。

 変化に気づいたのは女子マネージャーたちだった。「秋から急に大人になった。去年までは甘えが見えたけど、新チームになって責任感が表に出て周りを引っ張るようになった」。ノック中はライトの守備位置から、ホームに届くほどの大声で厳しいゲキを飛ばす。

 「そんなんじゃダメだろう!」「しっかり捕れよ!」

 迷いや不安がないわけではない。しかし「気持ち一つで変われるんだ」という思いを行動で示し続けた。「それまでは4番の仕事だけに集中していましたが、リーダーになったことで、チーム全体を見て声をかけることを覚えました」。

 手には痛々しいほどのマメができている。神宮大会で初戦負けしてから、素振りの数を1000回から2000回(1日)に増やしたからだ。「負けてから、勝ちたい気持ちがもっと強くなった。とにかく数を振って心の弱さを無くしたいんです」。

 笹川君は関東屈指の右打者でもある。遠投120m、50m走6秒0と優れた身体能力を誇り、守備範囲の広さは超高校級と言っていい。新チームから4番を任され、公式戦通算打率は3割9分5厘。関東大会準決勝(健大高崎戦)は犠飛で先制するなど、安打以外の打点も多い。左手の薬指、小指のつけ根にできた固いマメは、変化球の微妙な変化に食らいついてできたマメ。崩されてもヒットを打つ。それが4番の役目であり、甲子園で勝利を手にするための鍵となる。

 「今年こそ勝って監督を喜ばせたいです」

 生まれ変わった笹川君の頭の中に、2度目の失敗という文字はない。

◇よろしく女子マネージャーです!

 新城佳奈さん(3年)、杉田紗香さん(3年)、小泉由梨恵さん(2年)。2年連続の甲子園出場に喜ぶ女子マネ陣。負けられないセンバツに、それぞれに思いを聞くと「春だけでなく夏も甲子園に行けるような戦いを」(新城さん)「リベンジの気持ちがあると思うけど気負わず楽しんでほしい」(杉田さん)「中2から浦学の女子マネに憧れていたので夢のようです」(小泉さん)。毎日の雑務で選手を支えながら、春の喜びを信じています!

◇なんでもナンバー1

▽カワイイ=山根佑太
 マイペースで天然。広島弁をリクエストすると「やったるけん」と言ってくれる弟キャラ。

▽成長=笹川晃平
 無邪気だった性格が新チームから大人に成長し、誰もが認める男に!

▽クール=木暮騎士
 練習のときもそれ以外も常にクール。ナイトという名前もクールで、まさに「ナイトクール」。

▽今年もおにぎり=明石飛真
 去年「おにぎり」で紹介したけど今年も健在。竹バットの先におにぎりマークが描いてあり本人も認めてる。

▽濃いマンJr=伊藤祐貴
 昨年の沼田先輩を引き継いで今年の濃い顔キャラ。性格は女子マネに「ありがとう」と笑顔で言ってくれる優しい男。

▽ムードメーカー=緑川皐太朗
 面白いし、野球はウマいし、よいトコだらけ。

(リポーター=女子マネ一同)

◇とにかく「一戦必勝」 勝機は「個」の力の発揮! 森士監督

 投手6人の長所をつなぎ合わせた継投策で県大会から「やりくり」してきました。それが関東大会優勝という結果になりましたが、逆に「柱」がいない危うさも感じていました。それが神宮大会1回戦負けという結果です。昨年はエース・佐藤が連投しましたが、今は調子を落としています。課題、不安が多いです。とはいえ、甲子園では5回連続の初戦負けをしていますので、負けは許されない。このチームで勝つのが監督の仕事です。1人1人がうぬぼれず「個」の力を発揮すれば結果はついてくる。「一戦必勝」とだけ言わせて下さい。

◇チームルポ 浦和学院「魔物はいない!」

 1月3日。氷川神社に初詣でをした後、部員68人で恒例の10kmランニング競走が行われました。森士監督も市道を走り66位でゴールイン。浦学の2012年が元気にスタートしたのです。今年の目標は「1戦必勝」。「甲子園に魔物はいない。魔物は自分の中にいるんだ」。己を強くする、浦学のアツい練習をリポートします。

 熱い。熱すぎる!

 浦学の練習は「声」が聞こえない時間がない。3kgのタイヤを腰につけてノックを受けるときも、自体重を使って体幹を鍛えているときも、元気だけは失わない。体はそうとうキツイはずだ。そんな中で出たうめき声を、無理やり「気合の声」に変えて自分を奮い立たせている。気を抜くと「意識が低いぞ」と仲間からの罵声が飛ぶものだから、隙は許されない。ユニホームを真っ黒に汚して、やりこんで、追い込んで、極限の、そのまた先を目指す。そんな練習が正月休み明けの、たった2日後に8時間も続くのだ。

 「日本一になるためには、もっと練習しなくちゃいけないんです」。明石キャプテンが真剣な表情で言い切った。4番の笹川君も続ける。「浦学はただ練習がキツイだけで勝ってないだろうって言われる。悔しいけど、やるしかないんです」。ギラギラした目に、選手たちの「覚悟」が見えるようだ。

 「覚悟」の原動力はすべて全国大会での惨敗にある。6年ぶりに出場した昨春センバツで鹿児島実に3-5の敗戦。相手より多い10安打を打つも、四死球、暴投、捕逸などのミスが出て自滅した。ここで言われた言葉が「甲子園、5連続の初戦負け」。森監督はこの結果に「監督の未熟さです」とだけ言い、2年生メンバーの明石君、笹川君、佐藤君、石橋君、林崎君は「2度とこんな思いはしたくない」と心に誓っていた。

 しかし神宮大会で再び屈辱を味わう。愛工大名電(愛知)にノーサインで足技を駆使され、5盗塁4犠打とかき回された。翌朝、敗戦記事の載る埼玉新聞を拡大コピーし、手書きで「屈辱的な大敗」と見出しをつけたのは明石君。その貼り紙を目につくあらゆる箇所に貼り、「現実」を直視することで反骨心を燃やしている。

 「名電の野球を見て、あれこそが自立したチームだと思いました。監督に言われないと動けないチームは全国で勝てない」(明石君)

 リベンジの舞台は近づいている。秋は本命エースが不在の中、4人の1年生を含む6投手の継投策で、東海大相模(神奈川)、甲府工(山梨)、健大高崎(群馬)、作新学院(栃木)を抑え込んだ。「やりくり采配」(森監督談)が奏功し史上3校目、県勢初の関東大会連覇を達成した。しかし選手たちは喜びを爆発させることもなく、試合後はすぐにロッカーの掃き掃除に取りかかっていた。「僕たちは全国で勝たないと認めてもらえない」。選手たちの心にその気持ちがあるからだ。

 森監督は甲子園の目標を「一戦必勝」とだけ言った。甲子園の1勝がどんなに遠いのか。どこよりも知っている浦学にとっては、言葉以上の重みがあるのだろう。長く暗いトンネルの中で日々悔しい思いをしている選手たち。「一戦必勝」で、春こそ光を見る。

◇キャプテントーク 目指すなら頂点デス! 明石飛真

―クリチャートレーニングはすごくキツそうだね!

「ハイ、これはとてつもないです(笑)。苦しいですけど、田中トレーナーは勝つための練習をしてくれているので、ありがたいです。日本一になるためにはもっと練習しなきゃいけません」

―浦学の選手は「目標は日本一」ってみんな言うね?

「やるからには、頂点目指さないとやっている意味がない。日本一になりたくて浦学に入ってきたので」

―今の課題は何ですか?

「関東で優勝した後、神宮大会で1回戦負けしてしまったのは気持ちに油断があったからだと思います。なので、勝ってもいい気にならないように気持ちを切り替えることです」

―「6番・ファースト」の明石君の目標は?

「6番はチャンスで回ってくるので、自分の1打席でチームの流れが変わればいいと思っています。上位だけでなく、6番からも点が取れる打順にしていきたいです」

◇佐藤拓也(3年・中堅手)

 昨春センバツのエースは、ピッチャー兼センターへ転身。雪辱の甲子園マウンドを目指し、気持ちの弱さを立て直し中。好調な打撃4割7分8厘は準決勝・聖望学園戦の9回裏逆転サヨナラ2ラン。頼れる俊足も健在です!

「昨春以降、ピッチングの不調を修正できず悩んでしまっていました。でももう最終学年。やるしかないので、夏までに背番号1を取り戻し、頼れるエースになりたいです!」

◇林崎龍也(3年・捕手)

 打っては秋のチーム首位打者!打率6割2分5厘とコンスタントに安打を重ねました。守っては6人の個性を引き出す巧みなリードがキラリ。経験の浅い2年生投手(4人)を盛り上げて、浦学のホームを死守します!

「キャッチャーとして心掛けているのは『ピッチャーの1番良い所を引き出す』こと。熱くなりすぎず、冷静なリードを目指します。2年生投手が頼もしいので今度は勝ちます」

◇石橋司(3年・左翼手)

 1年からレギュラーをつかみ現在5番を打つ中距離ヒッター。左打席での心掛けは、ショートとセンターの間を「つぶして打つ」。意識が明確になり凡フライが減りました!昨春4の0に終わった悔しさ、本番にぶつけるゾ!

「聖望戦で3安打打った後、4打席目のチャンスで凡退(投飛)したのが反省。全国で勝つにはあそこで打たないと5番じゃない。守備も佐藤(中堅)と声を掛け合ってしっかり守ります」

◇緑川皐太朗(3年・二塁手)

 関東大会決勝では巧みな内野安打(遊安)で出塁し、先制のホームイン。準決勝に続くマルチ安打をマークしました。四球を選んだり、足技を見せたりと「嫌がられる9番打者」が目標。堅実なセカンド守備にも注目です。

「打撃練習では低く・強い打球を打つことを意識しています。名電戦では濱田君の速球に振り遅れてしまったのでクリチャートレーニングで下半身の粘り強さを身に付けたいです」

◇竹村春樹(2年・遊撃手)

 栃木・小山ボーイズ時代は全国16強。期待どおり1年春から試合経験を積み、秋から「1番ショート」に定着。サードの木暮騎士君との「1年生コンビ」で物おじしない好守備を発揮しています。

「1年生で出してもらえたのは、結果を恐れず思い切ってプレーした結果。自分の狙い球を自分のスイングで打つことに集中し、甲子園でも積極的なプレーで勝利に貢献したいです」

◇2年生ピッチャー軍団

 浦学にはイキのいい4人の2年生投手が切磋琢磨中!関東大会で「1」をつけ度胸No.1の山口君。関東大会決勝で公式戦初先発ながら好投した伊藤君。ピンチになると左横手から好リリーフを果たす渡邊君。神宮大会で7回1/3を投げ7三振を奪った涌本君。4者4様のチカラが集結して、勝利を目指します。センバツでは誰がエースに輝くのかナ?立候補を募ると全員が「ハイッ!」と即答。頼もしいー!

◇支える人々

 関東大会2連覇の裏には、いろいろな人の支えがありました。4月からトレーニング指導する田中トレーナー、駒大苫小牧時代全国制覇の経験を持つ小崎コーチ。そして秋の公式戦の間、打撃投手や練習補助、応援で後輩を支えた3年生部員たち。「自分たちの力で勝ったんだ、といううぬぼれを無くせば勝利はついてくる」と森監督は部員に言い聞かせています。

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(2012/02/06)
日刊スポーツ出版社

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◇その他のセンバツ関連雑誌発売予定

▽2月 8日(水)
週刊ベースボール増刊 第84回選抜高校野球大会完全ガイド 2012年 3/10号
(ベースボール・マガジン社)

▽2月10日(金)
ホームラン 2012年 03月号
(廣済堂出版)



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