頂上対決の行方を決定づけたのは、4番打者のひと振りだった。
浦和学院の山根佑太選手(2年)は7回、初球の内角直球をフルスイング。感触は良かった。打球は左翼手の頭を越え、走者2人生還の二塁打。4点差をつけ、一気に突き放した。
春まで4番を担ってきた笹川晃平選手(3年)がけがのため、今大会は4番を任されることが多かった。
出塁率が高い3番佐藤拓也選手(同)は勝負を避けられるなどし、好機に打席に立つ機会が多い。それを生かすのが自分の役目だと思ってきた。
この回の攻撃前、チームは円陣を組んだ。「自分たちの野球をしろ。脱皮しろ」。森士監督のげきが飛んだ。
2死二塁で、佐藤選手は敬遠された。重責を果たしたい――。心の中で念じての打席で、期待通りの活躍。「4番を任せてくれた監督に報いることが出来た」。二塁上で自然とガッツポーズが出た。
今大会での打率は5割8分3厘。「結果は意識しなかった。甲子園に向け、これからもしっかり振っていくだけ」と汗をぬぐった。
明石飛真主将(3年)は「今大会は2年生がよくやってくれた。特に山根は勝負へのこだわりが伝わってくる」と、急に頼もしくなった山根選手をほめた。森監督も山根選手について「まだまだ発展途上」としながら、甲子園での活躍に期待を寄せる。
試合後に取材を受け、ベンチで休んでいた森監督に明石主将が尋ねた。
「胴上げしていいですか」
「オレはいい。甲子園でしてもらうから」
激戦を勝ち抜けた浦和学院は、県内初の全国優勝を狙う。
(朝日新聞埼玉版)
◇2年生4番、意地の決定打 浦和学院 山根佑太選手
1点を追加し、2点リードで迎えた七回2死二塁、なお追加点のチャンス。3番佐藤拓也投手(三年)が敬遠され、打席に入った。「敬遠は予想どおり。4番の自分が打ってやる」。初球、狙っていた内角の直球を捉え、粘る相手を大きく突き放す決定打となった。
春の選抜大会では、5番が定位置だった。得意の打撃で結果を求めるあまり、バットが思うように振れなくなったこともあった。打撃に加え、走塁や守備も磨き、今大会は初戦から4番に起用された。準決勝では5番に下がったが、2安打を放ってアピールし、大一番で再び戻ってきた。
六回まで無安打。チームも一回に先制した後は波に乗り切れずにいた。七回に入る前、森士監督の一言がチームの空気を変えた。「チャンスで振りに行け」。直後、指揮官の熱に応えるように殊勲打を放った。
「大事な試合で4番に使ってもらった。チームに貢献できる仕事がしたかった」
熱戦の舞台は甲子園へ。春の選抜ではベスト8に終わり、狙うは優勝しかない。「自分の持ち味は打撃。初球からフルスイングしたい」。汗と土にまみれた二年生の4番の横顔が、頼もしく輝いていた。
(東京新聞埼玉版)
◇頼れる4番、活躍誓う 浦和学院・山根佑太左翼手(2年)
七回表2死一、二塁。初球の内角に甘く入った直球をフルスイングした。低い弾道で伸びる白球は左翼手の頭上を越え、走者2人を迎え入れた。「やったぞ」。二塁上で拳を高く突き上げた。
広島市出身で、小学6年の時、ソフトボールチームで全国優勝した。ソフトは野球より投手と打者の距離が近いため、直球にはめっぽう強い。
「実家を離れて自立し、レベルが高い学校で甲子園に行きたい」と野球留学。8強入りしたセンバツから中軸を担ってきたが、6月中旬の練習試合で4番だった笹川晃平選手(3年)が左手の甲を骨折し、今大会は2年生ながら4番を任された。
全7試合で打率は5割8分3厘。「自分が打たなければ勝てない」と気持ちを奮い立たせ、14安打12打点と打ちまくった。
課題は苦手な外角球だ。「克服してセンバツのリベンジを果たす」。頼れる4番は甲子園での大暴れを誓った。
(毎日新聞埼玉版)