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亡き友に「ありがとう」 浦和学院3年・明石飛真主将

 対戦相手の校歌が流れ、熱いものがこみあげてきた。「負けたけど、お前のために俺はやったぞ」。心の中で呼びかけたのは、亡くなった中学時代のチームメート。別々の高校に進み、甲子園での再会を誓い合った仲だった。

 亡くなったのは、福田翼君(当時16歳)。

 突然の知らせが信じられなかった。「翼君が死んじゃった」。10年5月16日、帰宅したところ、母幸恵さん(43)に教えられた。福田君は岡山県の高校に通っており、前日の練習中、選手と接触して後頭部を強打した。「うそだろ」。すがる思いで、携帯電話に連絡し続けたが、応答はなかった。

 2人は中学の時、新座市のチームでバッテリーを組んだ。福田君は140キロ近い速球を投げ込んできた。「手が痛く、あまり受けたくなかった」。しかし、威力ある球の配球を考え、リードすることに楽しさを感じた。打順は福田君が4番、明石主将が1番。けんかもよくした。「お前が打っていたら、試合に勝ってた」「おまえこそ」。実力を認め合っていたから、何でも言い合えた。

 明石主将はあこがれていた浦和学院への進学が決まった。福田君は父孝さん(47)の紹介で岡山の高校に進学。「自分の力でチームを強くし、甲子園で関東の強豪を倒したい」との思いもあった。10年3月、練習で顔を合わせたのが最後だった。「じゃあね」。甲子園での再会を誓った。

 2カ月もたたないうちに開かれたお別れの会。お骨を見て、いなくなってしまったんだと実感した。悔しさがわき上がったが、「一番つらいのは翼の家族。あいつの分まで俺がやらねば」と思った。

 大きな大会の前後は、福田君のお墓に参る。「力を貸してくれ」。今夏の埼玉大会で優勝し、孝さんに電話で伝えた。「翼のために頑張ります」

 最後の夏。「3年間の集大成だ。空から見ていてくれ」。翼君の無念を胸に全力でプレーしたが、試合には敗れた。「天国から見守ってくれて、ありがとう」。涙声で感謝の言葉を口にした。

(毎日新聞埼玉版)

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