第96回全国高校野球選手権埼玉大会は9日、県営大宮球場で、連合2チームを含む昨年と同じ156チームが参加して開幕する。近年まれに見る混戦模様の中、優勝争いは、2008年に達成して以来、2度目の3連覇の偉業に挑むAシード浦和学院が本命。対抗は25年ぶりの甲子園出場を狙うBシード市川越、さらに春季県大会準優勝のAシード聖望学園、高い総合力が売りのCシード春日部共栄、ノーシードながら昨秋の覇者・花咲徳栄が続く。Bシード大宮東や昨秋4強のノーシード本庄第一も健在だ。1校の甲子園切符を懸けた戦いの行方を各ゾーンごとに探った。
◇浦和学院-桶川ゾーン「頭一つ抜ける本命」
昨春の選抜優勝投手・左腕小島擁する浦和学院が頭一つ抜けていて、4強入りの可能性が高い。
浦和学院は、全国屈指の直球の伸びと制球力を誇る大黒柱・小島の負担を攻守で軽減できるかが鍵だ。
同じ左腕の岸は、直球を見せ球に得意の変化球で打たせて取りたい。本沢、酒井、宇野の右3枚も控える。バックは土屋、津田の二遊間ら基本に忠実。打線も津田、山崎、田畑の3~5番を中心に積極性とつながりが出てきた。2番土屋、9番石森は小技が利く。清野、荒木、西野といった右打者の台頭が春季大会以降、最大の収穫だろう。
3回戦では左腕中島、右腕野村ら投手の駒が豊富で、攻撃陣もしぶとく侮れない川口。4回戦は、ふじみ野-小松原の2回戦の好カードを制したいずれかと当たりそう。
5回戦は右サイドの橋本、けがから復活した左腕稲葉が引っ張るシード西武文理か。右アンダーの森が頼もしい熊谷商をはじめ、正智深谷、草加西、成徳大深谷は浦和学院への挑戦権を得たいところだ。
反対側で8強進出に有力なのが狭山ヶ丘と桶川のシード勢。狭山ヶ丘は右腕の二枚看板・坂倉、斉藤峻が強力。打線も菅原、八尋、武内の上位から、春季県大会の花咲徳栄戦で特大本塁打を放った中村匡ら下位まで打力がある。
桶川は好左腕長沢、3番遊撃手の原と投打の核が存在し接戦に強い。初戦の埼玉平成、4回戦で対戦しそうな所沢商はいずれも昨夏8強と油断できない相手。このほか宇田川、佐藤の両左腕がいる秀明英光、昨秋8強の八潮南、鷲宮の公立勢も虎視眈々(たんたん)と上位を狙う。
◇川越工-市川越ゾーン「市川越追う実力校」
最速146キロ左腕上條がけん引し、投打で充実した戦力を誇る市川越がリード。川越工、松山、昌平のシード勢やノーシードながら埼玉栄、浦和実の私学が追う展開だ。
市川越の上條は自慢の速球に加え、スライダーのキレも抜群。ただ力投型なので、なるべく打たせて取り球数を最少限にとどめたい。2年生右腕登坂航は低めへの制球が光り、先発完投が望める成長株。打線も例年以上に破壊力がある。特に奈良、冨岡の左右の3、4番はパワーだけでなく、柔らかさがあり変化球にも対応可能。2番佐藤、丹羽、沢田の5、6番もスイングが鋭い。
4回戦には須藤、田辺ら投打で高水準の北本が上がってきそうだが、5回戦までは妥当か。
その5回戦で激突しそうなのが松山。三上、清水の1、2番から金子、石井、那須の主軸、さらに鈴木ら下位までつながりがいい。右腕青貫ら投手陣が踏ん張れれば、面白い存在になりうる。ただ3回戦では経験豊富な右腕桐ケ窪がいる坂戸西、東農大三、早大本庄の勝者と、4回戦も好選手が多い富士見と当たりそうで一戦ずつが勝負になる。
坂本、小沢の球威のある両右腕を擁する川越工は攻撃でも3番太田を軸に機動力を駆使し1点ずつを奪う。4回戦では野村、出井、松村と右腕を好捕手湯沢がリードする埼玉栄を筆頭に、打力のある飯能南、投手の駒が豊富な武蔵越生が待つ。
5回戦では昌平、浦和実の勝者との対戦か。昌平はセンスが光る4番海老沼を中心に攻撃力があり、浦和実は横溝-嶋田のバッテリー、俊足の1番皆川ら経験豊富で台風の目になるか。
◇聖望学園-春日部共栄ゾーン「徳栄加え争い激化」
聖望学園、春日部共栄が両端に入る最激戦区に拍車を掛けるのが花咲徳栄。さらに昨夏準優勝の川越東、同4強のシード市川口も加わり、し烈を極める戦いになること必至。
力通りにいけば、聖望学園と花咲徳栄が5回戦でつぶし合う。
聖望学園は春の快進撃を支えた右サイド松本につなぐ必勝リレーで勝ち進む。先発陣は急成長した2年生左腕田島、スライダーが武器の中村碧に加え、本格派右腕野瀬が復調し厚くなった。打線も上位の菊池、大野、中村郁、田島から下位まで粘り強い。3回戦で当たる立教新座は坂井-吉村バッテリーが柱で侮れない。
花咲徳栄は右サイドから最速140キロ超のエース井上、速球が武器の右上の佐藤が力強い。打線も3番古川を軸に里見、多田の1、2番、大滝、吉倉の4、5番ら下位まで長打も小技も見込める。好捕手堀内を擁する山村国際との開幕戦を戦う。
市川口は強打と右腕佐々木-加藤バッテリーが健在。右腕鈴木が投打の柱の越ヶ谷、好右腕菊島擁する朝霞ら強敵を倒し、勢いをつけて花咲徳栄戦を迎えたい。
春日部共栄は総合力では県内一だ。投手陣は左腕金子や西尾、渡辺の両右腕も完投できる。打線は守屋、原田の3、4番を中心に強打者ぞろい。だが3回戦でぶつかる大宮西のエース菅原は右横から多彩な変化球を操り術中にはまりやすい。
4回戦は慶応志木、5回戦で対戦しそうな川越東は高橋尚、高橋佑の両左腕を強肩強打の捕手長野がリード。1番渡部をはじめ機動力もある。シード大宮南は強打者の3番清水の前に走者をため強敵に一泡吹かせたい。川越西の左腕三好は球が速い。
◇所沢-大宮東ゾーン「力拮抗し波乱含み」
順当にいくと準々決勝で大宮東と本庄第一が激突する。だがシード校はもちろんのこと、ノーシードにも実力校がひしめく。力が拮抗(きっこう)し、波乱が起こりそうな予感。
大宮東は昨夏も3試合に登板したエース左腕中田浩が健在だ。スライダーのキレと制球が武器でテンポ良く刻みたい。右の小林、左の成田も好素材だ。捕手堀、遊撃手狩野を中心に守備陣は失点を計算できるだけに、鍵は得点力。1番中田祐が出塁し塚原、堀の3、4番の一打に期待したい。
3回戦は悲願の夏初勝利を目指す山村学園と投手力のある春日部東の勝者。4回戦は機動力のある久喜北陽、伊奈学園、武南あたりと対戦か。
同ゾーンのシード上尾は主将でエース右腕宮田を中心に総力戦で挑むが、所沢北との初戦を皮切りに3回戦は左腕須賀、右腕武藤や島田、山野と投打で強力な小鹿野、4回戦でも嶋村、二瓶、関ら好打者が多く総合力も高い栄北か、4番捕手の菅原が引っ張る南稜が待つ。
本庄第一は初戦でシード越谷南とぶつかる。本庄第一は薮中、上田の両右腕、左腕坂野上とタイプの違う投手に加え、奥田、村田、町田ら例年より打力もある。転がす打球を徹底できれば、無類の勝負強さが発揮できる。意地を見せたい越谷南はエース右腕斉藤を軸に守って、少ない好機を生かせるか。その後、滑川総合、春日部工と対戦しそう。
春季大会で47年ぶりに8強に進んだシード所沢は山田、半田悠、狩野の継投で流れを築いて、勝負強い佐藤、新井の3、4番の一打につなげる。比較的組み合わせに恵まれ、最初の強敵は4回戦の蕨か。
(埼玉新聞)