東京六大学野球、現役最多87安打を誇る左の安打製造機が、ラストシーズンへ挑む。新座市に練習の拠点を置く立教大の佐藤拓也中堅手(浦和学院高出、4年)は大学日本代表でも不動の1番として君臨するプロ注目の打者だ。進路をプロ野球一本に絞っている22歳は「後輩たちに、『優勝』というものを残して卒業したい」と10日から始まった秋季リーグ戦(立大は17日の法大戦が初戦)で、大車輪の活躍を誓う。
「浦和学院高出身の佐藤拓也」と聞けば、ピンとくる高校野球ファンは多いはず。同校のエース右腕として、チームを春夏合わせ3度の甲子園出場に導き、小柄ながら緩急自在、制球抜群の投球スタイルで計4勝を挙げた。打席に立つと無類の勝負強さを誇り、右へ左へ鋭い打球を連発した。
立大進学後は、その卓越した打撃センスを生かすため、野手に専念。レギュラーに定着した1年秋に打率3割3分3厘、2年春には13試合で21安打を量産し、4割4厘をマークして2季連続のベストナインに輝いた。
不本意な4シーズン
しかし、2年秋から今春までの4シーズンは、佐藤の実力を持ってすれば、不本意なシーズンを過ごしたと言える。
この4季中、3季で打率が2割台前半から中盤にとどまり、3年春は3割1分を記録したものの、決して納得できる数字ではなく、チームも自身が入学後ワーストの5位に終わった。「2年春にバーンと打ったことで、自分の中でその結果が当たり前になって、結果を欲しがりすぎた」と苦しい道のりを歩んできたことを明かす。
日米野球が教訓に
打開への糸口となりそうな転機が、今夏にあった。2年次から3年連続で名を連ねる大学日本代表の一員として、日米大学選手権でメジャーリーガーの卵たちと対した。
日本は2勝2敗で迎えた最終戦にサヨナラ勝ちして優勝。佐藤も全5試合で1番に座り計5安打を放ち、「ジャパンの時は純粋にチームが勝つためにやってるなと。日本代表3回目にして、ようやく気付いた」という。
逆に「立教では『自分が打たなきゃ』と、自分で自分にプレッシャーをかけて、どつぼにはまっていた」と分析する。
頂点に立ち恩返しを
「技術的には調子良かった頃よりも、伸びている自信はある」。バットのヘッドも前に抜けるようになり、下半身の力をより打球に伝えられるようになった。苦手としていた一流の左投手を打てるように鍛錬を重ねた。173センチ、76キロの筋骨隆々とした体つきからも、努力の跡がうかがえる。
だからこそ「この秋は『チームのために』を徹底して、そうすれば自然と結果はついてくる。大丈夫だと思います」。その表情にも迷いはない。
1999年秋以来、21世紀初の歓喜へ、「4年間お世話になった立教大学に恩返しの意味でも、優勝したい」。今春から高校時代に慣れ親しんだ背番号1を付ける副主将は、勝利のために一振り一振りに魂を込める。
佐藤拓也(さとう・たくや)
茨城県鹿嶋市出身。コミュニティ福祉学部スポーツウエルネス学科4年。右投げ左打ち。173センチ、76キロ。浦和学院高ではエースとして2011年から春夏3度の甲子園出場。立大では野手に専念し、今春までの7季で299打数87安打、打率2割9分1厘、7本塁打。1年秋と2年春にベストナインに輝く。遠投105メートル以上、50メートル6秒0、巧みなバットコントロールとパンチ力を秘める三拍子そろった中堅手。大学日本代表。
(埼玉新聞)