一回裏、林崎龍也捕手(三年)が胸で止めた佐藤投手のワンバウンドボールが、ホームベース手前に転がった。相手の一塁走者が盗塁を試みたが、冷静に捕球した林崎捕手の鋭い送球でタッチアウト。序盤に制球に苦しんだ佐藤投手は「楽になった」と振り返る。
「周りがよく見えた、彼本来のリード」と森士(おさむ)監督が評価する通り、この日の試合は林崎捕手のリードが光った。佐藤投手の直球が「甘いところに入っている」と判断すると、ツーシームやカットボールなどを多用し、ゴロを打たせようと心掛けた。結果、16個の内野ゴロを築き「狙い通り」とにやり。
昨年の選抜以降、佐藤投手は調子を崩したが、林崎捕手は「甘えさせてはいけない」と練習や試合の度に改善点を厳しく指摘。佐藤投手は反発したこともあったというが「今は受け入れてくれる」。
昨年一月、林崎捕手は野球を教わった父を事故で亡くした。母美紀さんが「龍也の頑張りが家族を元気にした」と話すように、家族もリードする存在に。遺影の中で試合を見守った父に勝利を報告し、「全国制覇する」と躍進を約束。甲子園では8年ぶりの勝利にも「ここで終わりじゃない」と気を引き締めた。
(東京新聞埼玉版)