【写真】真剣な表情で森監督の話に耳を傾ける選手たち=さいたま市緑区の浦和学院高校で(毎日新聞埼玉版)
◇悔しさ、胸に再出発
野球部の部室やトレーニング室の壁に、「あの日」の試合を伝える新聞記事のコピーが張ってある。余白には黒のマジックペンで「浦学 歴史的大敗」という文字。史上初となる関東大会3連覇の裏に、「あの日」があった。
「他のチームより1カ月スタートが遅れた。秋に勝てるかどうかは、お前たちの意識次第だ」
昨夏の甲子園3回戦の天理(奈良)戦に敗れた翌日、森士監督(48)は、グラウンドに並んだ選手に呼び掛けた。この言葉に、西川元気選手(2年)は心が熱くなった。「先輩たちが築き上げてきてくれたものを、自分たちがつないでいきたい」
新チームは、山根佑太選手(2年)や竹村春樹選手(2年)、高田涼太選手(2年)ら甲子園経験者が多く残る。他チームからの厳しいマークが予想される中、高田選手は強い調子でこう訴えた。「先輩たちを超えよう」
4連覇をかけて臨んだ秋の県大会。前評判通り順当に勝ち上がったチームの前に立ちはだかったのは、ライバルの花咲徳栄だった。
決勝の舞台に立った選手たちは、花咲徳栄の集中力と気迫に圧倒された。先発の山口瑠偉投手(2年)は初回、花咲打線につかまり4点を失う。その後も投手陣が打ち込まれ、失点を重ねた。一方、浦学打線は散発6安打と沈黙。2?8で完敗した。
花咲徳栄の選手たちが喜びに沸く中、森監督は諭すように言った。「しっかり目に焼き付けておけ。これが負けだ」
先輩たちが築き上げてきた記録が途絶え、選手たちはベンチ前で悔しさをかみ締めた。「花咲徳栄は自分たちより強い。でも、負けていられない」。山根選手はリベンジを誓った。
3月22日開幕の「第85回記念選抜高校野球大会」(毎日新聞社など主催)に、県勢最多となる3年連続9回目の出場を決めた浦和学院。昨秋の関東大会で史上初の3連覇を達成し、センバツへの切符を手にするまでの軌跡を追った。
(毎日新聞埼玉版)