(20日・県営大宮ほか)
第8日は3球場で4回戦8試合を行い、Aシード花咲徳栄の関口明大投手(3年)が大宮西戦で、今大会2人目、大会史上21人目となる無安打無得点試合を達成した。
右腕関口は、主にキレのある直球とスライダーで丹念に四隅を突く制球の良さが光った。打者31人に対し、4四死球を与えながらも9奪三振の力投で球史に名を刻んだ。チームも5-0で快勝した。
Aシード浦和学院の2年生エース小島は、八回まで1四球、12奪三振と無安打無得点ペースだったが、九回に右腕山口にマウンドを譲り、こちらは大記録達成とはならなかった。
本庄第一は、エース右腕平良がBシード鷲宮打線に三塁すら踏ませず、1-0と3安打完封。蕨はDシード狭山ヶ丘を4-2で退け、34年ぶりの16強進出を果たした。所沢商は八回に1点を勝ち越し、Dシード浦和実とのシーソーゲームを6-4で制した。ふじみ野、市川越、Dシード武南も競り勝ち5回戦に駒を進めた。
第9日は21日、3球場で4回戦の残り8試合を実施し、5回戦に進出する16校が出そろう。
◇小島、8回完璧安打許さず 「進化」存分に
ノーヒットノーランまであとアウト三つ。浦和学院のエース小島のこの日の出来からすると、大会史上21人目の快挙はほぼ間違いなかった。
しかし九回のマウンドに向かったのは背番号1ではなく、背番号10の右腕山口。交代を告げられ右翼の守備に回った2年生左腕は試合後、「先発したら最後まで投げたい気持ちはあるけど、チームが次も勝つためなので」と気丈に振る舞った。
全く打たれる気配がしなかった。
この日は130キロ台中盤ながら春から格段に威力を増した直球、そして右打者の内角、左打者の外角にピタリと制球されたスライダーを軸に、五回まで完全試合ペース。
六回2死から9番打者に3ボール2ストライクとし、内角低めの直球がわずかに外れ四球。この瞬間だけ苦笑いを浮かべたが、「完全試合は意識していなかった。一人一人の打者に全力で投げるだけ」。再び何事もなかったかのように、平然と八回まで投げ切った。12奪三振、1四球。球数は90球。春日部の主将・3番大内も「直球のうなり、スライダーのキレ、見たことのない球だった」と脱帽するしかなかった。
春季県大会準決勝以来となった県営大宮のマウンドで進化した姿を存分に披露した。
内容とともに背番号1の心中を察すれば交代は惜しい気もするが、森監督はその意図を「点差、球数を考えた。個人の記録よりもチームの勝利を追求していくのが高校野球の原点。山口にもこういう雰囲気を経験させたかった」と、あくまで今後の戦いを見据えてのことだと説明。八回を終えて完全試合中だったとしても交代させたという。
大記録達成はならなかった。それでも入学後から自身が先発した公式戦でチームは負け知らず。当然ながら信頼が揺らぐことはない。「自分の球を最後まで投げ抜くことが、チームのためになる。夏は一発勝負。1試合にどれだけ自分の力が出せるかです」
小島の“不敗伝説”は続く。
◇大勢決めた主砲の一撃 浦和学院
【写真】6回裏浦和学院1死二塁、高田(右)がランニング本塁打で生還する。左は打たれた春日部の橋本、下川床(同2人目)バッテリー(埼玉新聞)
主砲の高田が六回1死二塁、中越えランニング2ランで大勢を決めた。「センター返しでまずランナーを返そう」と打ち、「必死に走った」と生還した。
チームは春日部・橋本の好投に二回から五回までを1安打無得点に抑えられた。苦しい展開だったものの、「いいピッチャーだが焦りはなかった」と、冷静に好機を生かした。最後は快勝したが、「目の前の試合をしっかり」と力強いまなざしで話す高田。浮つく様子なく、頂点を見据えた。
◇「日本一の応援」ナインを後押し 春日部
「日本一」の壁に最後まで食い下がった。主将の大内は「先制はされたけど、中盤まではこっちが押しているんじゃないかという感じだった」と振り返る。
先発橋本も踏ん張った。だが六回1死二塁、スライダーを中越えに運ばれ、ランニング2ランに。こん身の一球だっただけに「あの球を選んだことに悔いはない。相手の力が上だった」と潔かった。
その後も七回に2点を失ったが、九回に代打酒井の二塁打などで1点を返し、意地は見せた。
最後まで諦めなかったナインを支えたのは、応援団の大声援。酒井は「打席に入るときにスタンドを見て打てる気がした。打たせてもらった」と感謝。悔し涙に暮れた捕手の下川床も「日本一の応援です」と涙の跡が残る顔で胸を張った。
■4回戦(7月20日)
春日部
000000001=1
10000220x=5
浦和学院
【春】橋本、遊佐-下川床
【浦】小島、山口-西川
▽本塁打 高田=6回ランニング2ラン(浦)
▽二塁打 西川、竹村、高田(浦)酒井(春)
▽投手成績
小島 8回、被安打0、与四死球1、12奪三振、失点0
山口 1回、被安打1、与四死球0、 2奪三振、失点1
【浦和学院】
⑥ 竹 村4-2-1
④ 贄 3-1-1
⑧ 山 根3-0-0
⑤ 高 田4-2-2
③ 木 暮4-0-0
⑨7斎 藤4-0-0
② 西 川3-1-0
①9小 島4-1-0
⑦ 服 部1-0-0
1 山 口0-0-0
【春日部】
⑤ 小 柳4-0-0
④ 中 嶋4-0-0
⑦8大 内3-0-0
①9橋 本3-0-0
③ 松 坂3-0-0
⑨7佐 藤3-0-0
② 下川床3-0-0
⑥ 福 田2-0-0
H 酒 井1-1-0
⑧ 清 水1-0-0
1 遊 佐0-0-0
H 池 上1-0-0
(打数-安打-打点)
安 打:浦7、春1
失 策:浦0、春2
三 振:浦3、春14
四死球:浦3、春1
犠 打:浦2、春0
盗 塁:浦1、春0
併 殺:浦0、春0
残 塁:浦6、春1
浦和学院は、エース小島が8回を無安打無得点12奪三振。高田のランニング2ランなどで7安打5得点。春日部は九回に1点を返す意地を見せた。
(埼玉新聞)