第98回全国高校野球選手権埼玉大会は9日、県営大宮球場で、連合1チームを含む158チームが参加して開幕する。
優勝争いの中心となるのは、秋春王者で3年ぶり13度目の栄冠を目指す浦和学院、大会2連覇と3季連続の聖地進出を掲げる花咲徳栄の両Aシードに加え、32年ぶりの甲子園出場に燃えるBシード上尾の“3強”か。
春の県大会で初の4強入りを果たしたBシード山村学園、一昨年覇者の春日部共栄、7年ぶりの頂点を狙う聖望学園など地力のあるCシード勢も黙っていない。
1校の甲子園切符を懸けた戦いの行方を四つのゾーンに分けて探った。
浦和学院-聖望学園ゾーン「シード軸に白熱必至」
3年ぶりの頂点を狙うAシード浦和学院が大本命。昨夏8強のCシード聖望学園が続き、2強を軸に準決勝進出を懸けた戦いが展開されそう。
準決勝で白岡に敗れた昨夏の雪辱に燃える浦和学院は、140キロ台の直球を連発するエース右腕榊原の安定感が増した。打線も昨春の選抜を経験した諏訪、幸喜を軸に切れ目がなく、蛭間、矢野ら1年生の台頭もチームに刺激を与えている。
4回戦で浦和学院との対戦が予想される市川越は機動力を絡めた攻撃を得意とする打線が2年生左腕メンディスを援護できるか。古豪・所沢商の奮起にも期待したい。
聖望学園は春の戦いで投手力に不安を残したものの、県内随一の長打力を誇る捕手大野を4番に置く打線は強力。中川、西沢、遠藤ら投手陣が意地を見せれば、2009年以来の甲子園出場が現実味を帯びてくる。
一昨年4強でDシードの正智深谷は左上の若松ら投手5人の継投で接戦に強く、立谷を主軸に置く打線も対応力が高い。Dシードのふじみ野は好右腕遠藤を擁する今大会のダークホース。北本・佐藤孔、八潮南・宇田川の両右腕にも注目だ。
昌平-本庄第一は1回戦屈指の好カード。右横のエース岩瀬を中心とした堅守が売りの昌平に対し、本庄第一も右横の馬場、左上の権藤と投手陣が充実している。抜群の制球力で昨秋8強の西武台をけん引する左腕唐沢は夏の連戦を乗り切るスタミナが課題になりそう。
昨秋16強の早大本庄も花咲徳栄・高橋昂を苦しめた打線のフルスイングが魅力。一昨年に浦和学院を破った川口は尻上がりに調子を上げる右腕早津の出来次第か。
春日部東-山村学園ゾーン「強豪ひしめく激戦区」
ノーシードに強豪校がひしめく。春季県大会で初の4強入りを果たしたBシード山村学園は初戦で昨秋8強の川越東と激突。さらに3回戦で埼玉栄との対戦が予想され、この激戦区を制したチームがベスト4に名乗りを上げる可能性は高い。
山村学園は闘志を前面に出すエース左腕佐々木が投打の大黒柱。真砂、日置、鵙尾と控え投手も充実し、ダブルクリーンアップを形成する打線は山本、菊地ら長打力を備える顔触れが並ぶ。
川越東は前チームで一塁手として秋春準優勝に貢献した右腕星野が健在で、投打に大車輪の活躍が期待される。エースを支える島田、関谷の両右腕も遜色なく、機動力を絡めた攻撃は得点パターンが豊富だ。
埼玉栄は秋春とも地区1回戦で姿を消したが、歯車がかみ合えば栄冠にも手が届く。“ダルビッシュ2世”の呼び声が高い1年生右腕米倉の投球にも視線が集まる。
Cシード春日部東は先発に2年生5人が並ぶ若い力で上位進出を狙う。富士見、久喜北陽、立教新座といずれも地力のあるチームとぶつかる3回戦が正念場だ。昨夏は24年ぶりの4強と躍進した松山は春季大会で輝きを放った右下手投げの弓田に加え、エース右腕金子の復帰が好材料。1番清水がけん引する打線も切れ目がない。昨秋4強の狭山ヶ丘も右腕藤野に次いで、2年生左腕安田が一本立ちした。
変化球の精度が高いエース左腕高橋を擁する川越工、打たせて取る2年生右腕菅原が主戦の大宮東とDシード勢もチャンスをうかがう。1回戦でぶつかる春日部-春日部工の“ダービー”は両校の意地がぶつかり合う。昨夏8強の熊谷も伝統校の意地を見せたい。
上尾-春日部共栄ゾーン「公立の雄追う実力校」
32年ぶりの甲子園出場に燃えるBシード上尾が総合力でリード。一昨年覇者のCシード春日部共栄、南稜、越ヶ谷のDシード勢、叡明、鷲宮などの実力校が公立の雄を追い掛ける構図だ。
上尾はマウンド度胸に優れる山下、186センチの長身から緩急をつける阿部、最速142キロの直球を武器とする渡部と、タイプの違う右腕3人の継投で勝負に出る。山口、増田、大橋を主軸に据える打線はつなぐ意識が高く、先行して主導権を握る展開が理想的。初戦で顔を合わせる朝霞は今春に宮川前監督が異動。持ち味の粘りで終盤まで食らいつきたい。
春日部共栄は守備の乱れから自滅した秋、春の課題を克服。エース右腕大道は制球が安定し、粘り強さも向上が著しい。1年夏に甲子園を経験した関谷がけん引する打線は県内随一の爆発力を秘めているだけに、勢いに乗れれば2年ぶりの栄冠が見えてくる。
新人戦で春日部共栄を破った叡明は2年生主体で伸びしろ十分。エース右腕中山を盛り立てるためにも、1番池田が引っ張る打線の働きが重要。昨秋16強の鷲宮は犠打を確実に決める堅実な野球が武器。右横の田代ら投手陣の駒もそろう。
南稜のエース右腕宮村は鋭く変化するスライダーが特長で、打線も役割に徹する意識が強い。越ヶ谷は捕手立木が攻守の要。積極的な打撃と走塁を終盤まで維持できれば得点力が増す。
昨夏準優勝の白岡は秋春地区予選敗退と低迷しているが、公立校を勇気付けた快進撃の再現に期待。1回戦でぶつかる本庄東は2年生左腕桐敷ら下級生を中心に、長打力と思い切りが光る。
西武文理-花咲徳栄ゾーン「前回王者の視界良好」
前回王者のAシード花咲徳栄が投打に抜きん出た存在で、3季連続の甲子園出場へ視界は良好。Cシード西武文理、大宮西、桶川のDシード勢が意地を見せられるか。
花咲徳栄は昨夏の甲子園で8強入りに貢献したエース左腕高橋昂の復調が明るい材料。網脇、清水の両2年生右腕が台頭したことで、昨夏同様に高橋昂をリリーフ起用できる。経験豊富な岡崎、楠本ら打線も好調で死角は見当たらないが、4回戦で対戦が予想される川越西、市浦和はともに昨夏16強と侮れない。
昨夏は準々決勝で花咲徳栄に敗れた西武文理はエース右腕堀越、右横の内山ら投手陣を、巧みなリードが光る捕手福井が引っ張りたい。1番盛田ら機動力を絡めた打線が機能すれば雪辱のチャンスが生まれるはず。
桶川は春季大会で浦和学院に5回1失点と好投した2年生右腕小向に期待。テンポのいい左腕武田を軸に、嶋原、品堀、鈴木と投手陣の層が厚い市川口、専用グラウンドがない練習環境の中でも毎年チームを仕上げてくる武南も地力がある。
大宮西は1年夏から主力の遊撃手中島を中心としたセンターラインが充実。昨夏16強の滑川総合も小技を絡めた多彩な攻撃を展開する。秀明英光はスタミナ面に不安を残すエース右腕二方を打線が援護できれば上位進出も期待できる。
昨秋16強の熊谷商は序盤一気の攻撃で右腕水野の負担を軽減できるか。同じく昨秋16強の入間向陽・今野も注目したい好右腕。5年ぶりの単独出場となる自由の森は休部状態から部員を集めて大会参加。1回戦で戦う川越は強敵だが、チームの歴史に足跡を刻む白星をもぎ取りたい。
(埼玉新聞)