第92回全国高校野球選手権埼玉大会は9日、県営大宮球場で開幕した。開会式では昨年より1チーム多い159校が入場行進。あこがれの甲子園を目指し、20日間にわたる戦いへの一歩を踏み出した。開幕戦は鷲宮が5-0で新座柳瀬に快勝。決勝は28日正午から行われ、優勝校は全国高校野球選手権(8月7日から15日間)に出場する。
1万2千人の観衆が見守る中、午前11時、開会宣言に続いてファンファーレが響き、入場行進が始まった。先頭は昨年優勝の聖望学園。続いて選抜大会に出場し春季県大会を制した花咲徳栄Aシード花咲徳栄が登場し、組み合わせ順に次々と選手が入場した。最後に春季県大会準優勝で、その後、関東大会で2連覇したAシード浦和学院が姿を見せた。
聖望学園の栗田慶太主将が優勝旗を返還。「去年は去年。今年はゼロからのスタート。自分たちの代でも優勝したい」と充実した表情を見せた。
選手を代表して、熊谷商の野辺倫主将が選手宣誓。チームのスローガンを盛り込み、「『継続は力なり』と胸を張って誇れるよう、一人一人の練習の成果を、一人一人が野球から学んだものを、チームの力として今こそ発揮します」と大きな声で力強く宣言した。
「2強」と目されている花咲徳栄の根建亮太主将は「また甲子園へ行ってリベンジしたい」と9年ぶりの頂点へ自信満々。浦和学院の星稜太主将も「まずは県制覇を目標に一戦一戦勝っていく」と2年ぶりの栄冠を見据えた。
開幕戦は、鷲宮のエース北口直希投手が新座柳瀬を1安打完封した。九回無死から安打を打たれ、大会史上19人目の無安打無得点を惜しくも逃したが、圧巻の投球だった。
10日は11球場で1、2回戦24試合が予定されており、本格的な熱戦が展開される。10日からの入場料金は、一般500円(中高生は200円)。引率された少年野球・中学生チーム(引率者・保護者有料)、障害者と介添え者1人、小学生以下は無料。
◇思い込め「継続は力なり」熊谷商・野辺主将
どんよりとした梅雨空を引き裂くような力強い声で選手宣誓をした熊谷商主将の野辺。「客席に目をやると緊張するので、宣誓相手の顔だけを見つめていました」と宣誓後、ほっとした表情。
宣誓文が完成したのは約1週間ほど前。野球部顧問で国語科の荒井貴之教諭の手直しを受け練り上げた。同校グラウンドで積んだ宣誓特訓は本番を想定し、マウンド付近からホームベース手前まで小走りし、声を張り上げた。
メッセージとして特に伝えたかったのは「継続は力なり」。学校のグラウンドにも掲げるチームのスローガンといい、「3年間やってきた思いを、この言葉に込めた」とこぶしを握る。
大役を果たし、「宣誓だけでは終われない」ときっぱり。初戦は大会2日目。最後の夏に挑む主将の目に変わっていた。
<選手宣誓全文>
宣誓、われわれ埼玉高校球児一同は仲間たちとともに野球ができる幸せに、全力でプレーすることで応え、「継続は力なり」と胸を張って誇れるよう、一人一人の練習の成果を、一人一人が野球から学んだものをチームの力として今こそ発揮します。そして、泥にまみれて追い続けた白球を今大会でも、ただ真っすぐに追いかけることを誓います。
◇聖望学園「連覇へ必勝誓う」
前回王者の聖望学園。優勝旗を持って入場行進の先頭を堂々と歩いた。主将の栗田は、「優勝旗は返還するが、また取り返したい」とチーム初の2連覇へ意気込んだ。
昨夏は甲子園出場したものの、初戦で都城商(宮崎)に屈した。「打てないと全国では勝てないと痛感した。今季は打撃力向上を目指した」と経験者の片岡。全国で勝ち抜くことを視野に練習に励んだと話す。継投でマウンドに立った永田は「あの場で戦えて度胸が付いた」と成長を語った。
「挑戦を受けるというよりは挑戦者」と口をそろえる選手たち。エース滝瀬は「一つ一つの試合に集中する」と一戦必勝を誓った。
◇春夏連続の出場へ 徳栄、自信持ち本番
自信を持って県営大宮の土を踏んだ。選抜大会に出場し、春季県大会を制した花咲徳栄が2番目に入場行進。主将の根建は「Aシードのプライドがある。新チームからやってきたことをすべて出すのが夏の大会」と強い思いで開幕を迎えた。
昨年は5回戦敗退だった。当時からレギュラーの佐藤は「1年たつのが早い」と複雑な心境ながら、「厳しい練習に耐えた自信がある。負けたらしゃれにならない」と覚悟を決める。
9年ぶりの優勝と春夏連続甲子園出場が懸かる。根建は「春は悔いが残ったので、もう1回行って“トクハル”野球を見せ付けたい」と目標へ気合を込めた。
◇関東王者 威風堂々 浦学、昨年の雪辱を
159校のしんがりを務めたのは春の関東大会を連覇したAシード浦和学院。今回で3度目となった主将の星が「一番最後だし、格好よく強く見せたい」と話した通り、関東王者の風格漂う堂々とした行進を披露した。
4連覇を狙った昨年は5回戦で優勝した聖望学園に3-4で敗れた。ミスを連発して自滅しただけに、星は「ミスした選手も残ってるし、借りを返すつもりで練習してきた」と気を引き締める。
同じAシードの花咲徳栄とは昨秋、今春とも県大会の決勝で対戦し、1勝1敗。星は「徳栄は選抜に出てるし、決勝で勝って甲子園に行きたい」と再戦を希望した。
◇さわやかな声 球場に響かせる 司会を務めた浦和一女の大塚さん
司会を務めたのは浦和一女2年生で、アナウンス同好会の大塚美緒子さん(16)。昨年11月の県高校放送コンクール大会に優勝したことで大役を射止め、高校生らしいさわやかな声を球場に響かせた。
友人や家族から「頑張って」と激励を受け、「いい緊張が高まっている」状態で臨んだ。開会式を終え、「会場の反応があってとても楽しかった。入場行進からみんなのやる気が伝わってきた。この勢いで全力プレーしてほしい」と満面の笑みを見せた。
◇落ち着いた様子で学校名読み上げる 草加マネジャーの金丸さん、渡辺さん
場内アナウンスの大役を果たしたのは金丸知美さんと渡辺梨沙さん。草加野球部マネジャーで3年生の2人は「緊張すると思っていたが落ち着いて話せた」と安堵した。
聞き取りやすい丁寧な口調で学校名を読み上げた2人。事前練習では自分の名前を読む部分を念入りにチェックしたという。同部の初戦は13日で「一試合ごと大切に戦ってほしい」と話した。
◇先頭プラ持ちに「鳥肌立った」浦学マネの間瀬さん
「鳥肌が立ちました」。大会名の書かれたプラカードを持って先頭で行進した浦和学院マネジャーの間瀬沙也香さん(2年)は感慨深げだった。
野球が大好きで昨年9月にマネジャーになった。先導役の中で、165センチと一番背が高いため、先頭を任された。初の大役を終え、「楽しかった」と笑顔で話し、ナインには「勝ち進んでほしい」とエールを送った。
(埼玉新聞)