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浦学V 共栄下し2年連続 秋季高校野球県大会

 横綱対決は浦和学院に軍配―。秋季県高校野球大会最終日は4日、県営大宮球場で決勝と3位決定戦が行われ、浦和学院が決勝で春日部共栄に3-0で勝ち、2年連続11度目の栄冠に輝いた。3位決定戦は鷲宮が浦和実を7-6で下し、残り1枠の関東大会出場権を獲得した。選抜大会への最終関門となる関東大会は30日から5日間、県営大宮、市営大宮の両球場で開催される。組み合わせ抽選会は15日。

 秋は5年ぶり5度目、春夏を含めると通算10度目となったライバル校の頂上決戦は、期待にたがわぬ高レベルの熱戦となった。

 序盤は浦和学院の1年生佐藤と、春日部共栄のエース竹崎の両右腕が投げ合う展開。佐藤は五回まで出した走者は安打の1人のみ。対する竹崎は四回まで毎回得点圏に走者を許しながら、粘り強くピンチをしのいだ。

 ゲームが大きく動いたのはグラウンド整備明けの六回。春日部共栄は先頭の若山が安打で出塁。犠打と暴投で1死三塁と先制機を迎えたが、続く2人が凡退した。

 直後の浦和学院は、2死走者なしから石橋が死球で塁に出ると、柴崎の内野遊ゴロが敵失を誘って一、三塁。ここで9番荒井が右前へ均衡を破る先制タイムリーを放ち、続く佐藤も左前適時二塁打で続く。大きな2点が入った。

 流れをつかんだ浦和学院は、八回にも佐藤のタイムリーで3点目を挙げるなど、計10安打を放って竹崎を攻略した。佐藤は強打の春日部共栄打線をわずか96球で2安打完封。球威のある直球と切れのある変化球でぐいぐい押し、制球も1四球と安定していた。

 これで両校の決勝対決は浦和学院の5戦4勝。胴上げで宙に舞った森監督は、「素直にうれしいの一言。とにかく選手が落ち着いて一球に集中した結果。選手に感謝したい」とライバルに完勝しての連覇に笑顔だった。

 3位決定戦で勝った鷲宮は12年ぶり3度目の関東高校大会切符をつかんだ。序盤から激しく点を取り合う打撃戦となったが、鷲宮は七回、増渕が決勝点となるスクイズを決め、八回途中から救援した遠藤の好投で浦和実の追撃を振り切った。

◇1年佐藤 2安打完封

 胸に手を当てて、ゆっくりと深呼吸した。「絶対に打ち取る」と浦和学院の1年生佐藤。今まで以上に闘志がわいた。九回、わずか6球で三者凡退。連覇をもたらした背番号“7”のエースは、仲間に囲まれ3度宙を舞った。「幸せ」。人生初の胴上げに酔った。

 「相手に当たってもいい。内角を狙っていこう」。最速135キロの直球で攻めに攻めた。公式戦初完投はわずか96球の2安打完封。準々決勝の聖望学園戦で五回参考ながら、無安打無得点した右腕は本物だ。打っては1番で3安打2打点と攻守で大健闘した。

 新チーム発足後、野手から本職の投手に戻った。夏のエースだった3年生阿部の「内角にしっかり投げれば投球の幅が広がる」とアドバイスを胸に、水を得た魚のように練習に励んだ。エースナンバーではないが、森監督も「実質は佐藤がエース。制球力があり、マウンド度胸がある」と、うならせた。

 森監督に「一緒に甲子園に行こう」と誘われ、地元の茨城を離れた。「絶対に行く」。その約束を早くも果たそうとしている。

◇「打つしかない」振り抜き決勝打

 「自分で打つしかない」。均衡を破ったのは浦和学院・荒井の強打だった。六回2死一、三塁で右翼線に先制タイムリー。そのまま決勝打になり、「自信を持って振り抜けた」と胸を張った。

 この日の武勇伝は、これだけで終わらない。八回2死一塁、走者は荒井。佐藤が左前に二塁打を放つと、自慢の足をフル稼働した。本塁を目掛けて突進し、3点目のホームイン。敵の戦意をそぐ走りに、森監督も「思い切りよく行けた」とご満悦だ。

 「二塁を回ってレフトを見たとき、取りこぼすところが見えた。迷わず行った」。なりふり構わない闘争心でダメ押しの1点をもぎ取った。

◇悔しさ共有し一丸 浦和学院

 閉会式が終わっても三塁側スタンド前では歓喜のセレモニーが続いた。森監督、小林主将、投手の佐藤らが胴上げで次々と宙を舞う。浦和学院が宿敵の春日部共栄に完勝。連覇を達成した森監督は「勝つならこういう展開。我慢強く戦えたのは収穫」と表情を緩めた。

 地区大会から5試合連続コールド勝ち。接戦を経験していなかったが、「打線が投手を育てるチームにしたい」という指揮官の思惑が大事な決勝でピタリとはまった。ここまで打線に助けられてきた先発佐藤が2安打1四球と試合をつくると、攻撃陣が奮起した。

 六回の先制点は死球で出た石橋の二盗で好機を拡大。八回の3点目は、佐藤の左前二塁打で一走の荒井が一気に本塁を陥れるなど、打ち崩すのが難しいとみるや、足を絡めて得点に結び付けた。「初回から集中して一球一球に対応していけた」という石橋の言葉はナイン全員に当てはまる。

 今夏は準決勝で敗退。2008年に史上初の夏3連覇を果たした常勝チームが2年連続で甲子園出場を逃したのは12年ぶりだった。スタメンで残ったのは遊撃手の小林だけで、新チームはゼロからスタートした。「投手がいない。経験者も少ない。選手も私も危機感を持っていた」と森監督。

 苦境を支えたのは上級生の後押しだった。夏のエース阿部、南らが打撃投手を買って出るなど練習をサポート。決勝は3年生37人全員が応援に駆け付け、小林は「応援してくれる姿が頼もしかった」と先輩に感謝する。

 目指す6年ぶりの選抜大会へ、一致団結したナインにすきは見えない。

◇鍛え直し誓う 春日部共栄

 真っ向からがっぷり四つに組み合ったが、土俵の外に思い切りたたきつけられた。埼玉両雄の対決は、春日部共栄の完全な力負けだった。

 春夏6度の甲子園出場を誇る本多監督は試合後、怒りに震えた。「完敗だよ、完敗。(打線が)0点っていうのは、一生勝てないから。あの(浦学の)スイングを目標に、追い付け追い越せでやるしかない」。いらつきと落胆をないまぜにした複雑な表情で、真っ赤な顔でまくしたてた。

 打線が佐藤の厳しい内角攻めに気おされ、わずか2安打。無安打の4番鎌田は「来るのは分かっていたけど、対応できなかった」と脱帽した。守備でも失策が失点につながった。六回、何でもないゴロをファンブルし、その後の相手の先制点につなげてしまった遊撃手の竹沢は「丁寧にいこうとして、大事な場面で気持ちがひいてしまった」と非を認めた。

 準決勝まで格の違いを見せてきたが、ライバル浦和学院に完敗。主将の薮内は「自分たちの力不足。スイングに力の差があった」と話した。

 新チームが発足したばかりのこの時期。強豪校といえども、完成されたチームなどない。本多監督も最後は「課題は分かったから、完敗を認めて鍛え直す」と気を取り直した。チームを貫く潔さ。この謙虚さこそが、チームをたくましく育てていく。

◇決勝(10月4日・県営大宮)

 浦和学院の右腕佐藤が2安打完封。打線は春日部共栄の先発竹崎から10安打を放ち、効果的に加点した。

 浦和学院は六回2死から敵失などで一、三塁とし、荒井、佐藤の連続適時打で2得点。八回も2死から好機をつくり、佐藤が適時打を放った。先発佐藤は力のある直球と鋭い変化球で打者を翻ろう。1四球と制球も安定し、96球で投げ切った。

 春日部共栄は打線が沈黙。3度の得点圏を生かせなかった。竹崎は粘り強く投げたが、死球と失策でピンチを広げ、痛打された。

春日部共栄
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00000201x|3
浦和学院

【浦和学院】
①佐 藤 5-3-2
④遠 藤 2-0-0
H室 町 1-0-0
4浦 崎 0-0-0
⑥小 林 5-1-0
⑤沼 田 4-2-0
② 森  4-0-0
③日 高 4-0-0
⑧石 橋 3-2-0
⑨柴 崎 3-0-0
⑦荒 井 3-2-1

(打数-安打-打点)

▽バッテリー
(浦)佐藤-森
(春)竹崎-佐々木

▽二塁打
石橋、佐藤2(浦)

春2120103
 振球犠盗失併残
浦33220012

(埼玉新聞)

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