プロ野球の12球団は2月1日、一斉にキャンプインする。日本ハムに入団した斎藤佑樹投手に大きな注目が集まる中、県内高校出身のルーキーたちも負けじと体づくりに励んでいる。観客の声援がこだまするスタジアムで、スポットライトを一身に浴びる日を夢見て。プロの世界に飛び込んだ3選手を追った。
「夢がかなってうれしい。でも3位でびっくりですよ」。身長197センチの本格派はドラフト会議で指名された時の心境をこう表現する。喜びと驚きが同居したこの言葉からも、球団の期待の高さがうかがい知れる。
小学1年から野球を始めた。バスケット選手だった米国人の父・ロイスーバーさんの血を継ぎ、浦和学院入学時にはすでに身長が193センチあった。一躍スカウトの注目を浴びたのは背番号1で臨んだ3年春の関東大会。足の故障で走り込み不足ながら角度のある直球で相手を封じ、2連覇に大きく貢献した。だが、最後の夏は自分の投球ができずに準決勝敗退。それだけに「プロに行けても下位か育成だろうなと思ってた」と苦笑いする。
真っすぐ一辺倒だったが、苦い経験が意識を変えた。1年の冬、スピードだけを追い求めてフォームを崩した。2年の夏休みには140キロを超えたが、練習試合で打ち込まれた。そこから導き出した答えは「球速は関係ない」「緩急が大事」。落差の大きいカーブを織り交ぜたことで投球の幅が広がった。197センチから投げ下ろす最速145キロの直球が最大の武器だが「球速にこだわりはない」と言い切る。
入団したソフトバンクには、手本となる先輩投手がいる。直球は130キロ台ながらキレ、制球力ともに抜群の左腕和田。昨シーズンは17勝を挙げてパリーグ最多勝を獲得、MVPにも輝いた。球界最高左腕と評される杉内はエースとしての自覚があり、ここぞの場面で見せる気迫はすさまじい。利き腕は違えど「課題はコントロールとメンタル」と話す右腕にとってはこの上ない環境だ。
粗削りで体も未完成。でも裏を返せば無限大の可能性を秘めているということ。「2、3年後でいいと甘えていたら大成しない。一日でも早くヤフードームのマウンドに立ってやるぐらいの気持ちでやりたい」。きりっと引き締まった表情からは、強い決意がにじみ出ていた。
(埼玉新聞)