第94回全国高校野球埼玉大会第10日は25日、準々決勝4試合が行われ、浦和学院、川口、春日部共栄、聖望学園がベスト4に入った。
Bシード川口は、2代表制のBブロックだった1966年以来、46年ぶり6度目の4強進出に名乗り。1-1の五回、丸山の中越え二塁打で勝ち越すと、エース高窪は再三、走者を背負いながらも、粘りの投球で昌平を1失点完投。八回2死二塁では一塁手小林の好守備で同点のピンチを救うなどバックももり立てた。
昨年準優勝のCシード春日部共栄は、九回に村山の右中間への適時打で熊谷商に5-4でサヨナラ勝ちし、2年連続12度目のベスト4入り。熊谷商は、一回に小野が満塁ホーマーを放つなど健闘が光った。
春夏連続甲子園出場を狙うCシード浦和学院は、連覇を狙った花咲徳栄を2-1で振り切り、3年連続19度目の4強入りを決めた。
聖望学園は3年ぶり9度目の4強進出。九回に2点差を追い付き、小林健の二塁打でDシード狭山ヶ丘に逆転サヨナラ勝ちした。
休養日を1日挟み、準決勝は27日、県営大宮で浦和学院-川口(10時)春日部共栄-聖望学園(12時30分)のカードで行われる。
◇西岡3安打 打線けん引 浦和学院
8番西岡が3安打と打線をけん引した。二回1死一、二塁から先制の中前打。「外を意識してたけど、内角にうまく反応できた。素直にうれしい」。大粒の汗を拭う顔に謙虚な笑みが浮かんだ。
「結果が出ていないのに使ってもらっている」。昨夏はスタンドから応援していたグラウンド。いつも以上の感謝を胸に臨んだ準々決勝の舞台で「落ち着いてシャープに振ることができた」。
しかし、一番頭に残るのは九回2死一塁から頭上を越えていった三塁打。1点を献上しただけに、「もっと下がって守らなきゃいけなかった。自分のポジショニングミス」と反省しきりだった。
◇熱い投球でリベンジ
マウンドでの借りはマウンドで返す―。右腕に魂が宿った。
優勝の行方を占う大一番で浦和学院のエース佐藤が貫禄の投球。昨夏の準決勝で敗れた花咲徳栄を被安打5、1失点で完投勝利を挙げた。
1年前は選抜大会後に調子を崩し、状態が上向かないまま大会を迎えた。3年生に先発マウンドを譲り、2-5の八回から3番手としてマウンドに上がったが1点を失った。
大一番で先発できなかった歯がゆさ、点を取られた悔しさ。「去年は自分のせいで負けた。『必ず勝ってやる』という気持ちでした」。ただ序盤は、この強い意気込みが緊張となって表れた。
立ち上がりから制球が定まらず、二回には右打者3人に対して内角直球で3死球。それでも、そこは百戦錬磨のエース。ただでは転ばない。女房役林崎や二塁手緑川の好守にも支えられ徐々に落ち着きを取り戻した。
二回以降、死球を与えた内角も、「持ち味を生かせない」とひるむことなく突いた。生命線の緩急も駆使し1-0の四回は1死三塁を無失点。九回には1点を失ったが、2死三塁の同点のピンチでは後続を二ゴロに打ち取り、軽く拳を握った。
リベンジは果たしたものの、決して目標を達成したわけではない。「先輩たちの思いも背負って、必ず甲子園に行きたいです」。背番号1はニコリともせず、真っすぐ前だけを見ている。
◇代打小林、粘って一矢 花咲徳栄
2点を追う九回2死二塁、代打の小林が粘りの中前適時三塁打を放って1点を返した。
昨夏、足のじん帯を切って試合に出られない日々が続いた。福島県出身の小林を「腐っちゃだめだ」と励ましたのは同じ東北で宮城県出身の主将・小山だった。仲間の支えで小林は打撃に力を入れ、いつでも試合に出られるように準備をしていた。
試合に出られなかった小山は「俺の分まで打って」と小林を送り出し、小林は「諦めない」と期待に応えたが、打線は続かなかった。小林は「チーム全員で支え合ってきた。頼りがいのある仲間だった」と大粒の涙をこぼした。
◇全力も連覇届かず
前回王者が選抜ベスト8の前に力尽きた。花咲徳栄は昨年のメンバーがほぼ丸ごと入れ替わり、準々決勝も先発6人が2年生。小技を徹底し粘り強く戦う持ち味は影を潜め、浦和学院に競り負けた。岩井監督は「浦学とどこまでやれるかと思っていた。接戦に持っていってくれたことは3年生に感謝しなければ」と結果を受け止めた。
継投が誤算だった。先発高橋航は4、5回の予定だったが、二回の打席で投球を受けて指を負傷。「もっと投げたかった」と悔やんだ高橋航を救援した上田は二回2死一、二塁、適時打で先制点を献上。五回には一塁けん制悪送球で2点目を失った。打線は二回無死一、二塁を走塁ミスでつぶし、四回1死三塁でも2者が凡退するなど序盤の好機を生かせなかった。
それでも上田が「直球は今大会で一番だった」と最少失点にとどめ、2点を追う九回には代打小林が中越えの適時三塁打で一矢報いた。昨秋は準優勝したが、春は初戦敗退。今大会も苦しんで勝ってきた。「ここまでよく頑張った」と岩井監督。2安打と気を吐いた2年生の3番楠本は「岩井先生を信じて、先輩のためにもやりたい」と前を向く。花咲徳栄は王者の冠におごらず、持てる力を出し切り大会を去った。
(埼玉新聞)
◇一人じゃない 気合入れ直す 浦和学院・佐藤拓也投手(3年)
9回表の浦和学院の守り。花咲徳栄に短長打で1点差に迫られた。浦和学院にとってこの夏、初の失点だ。2死ながら走者が三塁に残っている。これまで走者を出しても要所を抑えてきたマウンドの佐藤拓也投手(3年)の顔が初めてくもった。それを見た捕手の林崎龍也捕手(3年)ら内野陣が次々に声をかけた。
「俺たちが守ってやる。裏もあるし、同点でもオッケーだぞ」
このかけ声で気持ちが落ち着いた。「1人じゃない。バックには仲間がいるんだ。ハッと気づいて、気合を入れ直せた」
押せ押せの相手に対し、決め球に投げ込んだのは得意のツーシーム。「この試合で一番、いいところにいった」と低めを突き、内野ゴロに仕留めた。
昨夏の準決勝。8回にリリーフで登板したが1失点。花咲徳栄の選手たちが歓喜する瞬間を目の当たりにした。
「去年は自分が抑えていれば展開が違った。あの時の3年生の思いを背負って戦う。強いチームに逃げ腰ではだめだ」。試合前に自分を奮い立たせ、初回から大胆に内角を攻めた。
気持ちのこもった投球で、8回まで強力打線を散発3安打に抑える好投。佐藤投手の思いに応えるように、林崎捕手が好送球でタッチアップの走者を刺すなど、バックも再三の好プレーでもり立ててくれた。
「立ち上がりは制球が悪かったが、徐々にテンポがよくなった。次も自分の投球をしたい」。頂点へ、一歩ずつ近づいている。
◇花咲徳栄-浦和学院 好カードで球場大入り
県営大宮の第1試合は、昨夏を制した花咲徳栄と、今春の選抜高校野球大会ベスト8の浦和学院という強豪校同士による昨夏の準決勝の再現という好カード。平日にもかかわらず、内野一般席はほぼ満席になった。
入場券売り場は長い列ができ、高野連関係者は「有料入場者だけで約4千人は入ったのでは」と驚いた表情。試合中は通路に座り込まないように協力を求める場内アナウンスが繰り返し流れていた。
(朝日新聞埼玉版)
◇浦和学院が花咲徳栄に昨夏のリベンジ 佐藤1失点完投
浦和学院のエース右腕・佐藤が、強気の攻めを貫いた。9回5安打1失点で完投。昨年の準決勝で敗れた花咲徳栄にリベンジを果たし「強い相手で今までと違う感じでした。でも仲間から声をかけられて、焦らずに投げられました」とホッとした表情で僅差の試合を振り返った。
2回に3つの死球を与えても、腕を振り続けた。奪った三振はわずか1。内角球で詰まらせ、打たせて取るスタイルを徹底した。9回に1点を失い、チームは今夏5試合目、38イニング目の初失点を喫したが「中盤からテンポよく落ち着いていけました。持ち味の内角を強気に投げられました」と胸を張った。
春夏連続甲子園へ、残るは2勝。森士(おさむ)監督は「大差の試合が多かったから、今回の試合から戦いながら成長してほしい」と頂点を見据えた。
(スポニチ)
■準々決勝(7月25日)
花咲徳栄
000000001=1
01001000x=2
浦和学院
【花】高橋航、上田-若月
【浦】佐藤-林崎
▽三塁打 小林(花)
▽二塁打 楠本(花)
【浦和学院】
⑥竹 村3-1-0
②林 崎2-1-0
①佐 藤4-1-0
⑦山 根3-0-0
⑨笹 川4-1-0
⑤高 田3-0-0
③明 石2-0-0
⑧西 岡3-3-1
④緑 川2-0-0
(打数-安打-打点)
安 打:浦7、花5
失 策:浦1、花1
三 振:浦4、花1
四死球:浦4、花4
盗 塁:浦0、花0
犠 打:浦4、花1
併 殺:浦1、花1
残 塁:浦8、花7
終始試合を優位に進めた浦和学院が、花咲徳栄との接戦を制した。浦和学院は先発佐藤が被安打5、1失点で完投。二回1死一、二塁から西岡の中前適時打で先制すると、五回には相手のけん制球が、悪投となる間に決勝点を挙げた。花咲徳栄は、九回2死一塁から代打小林の中越え三塁打で1点を返したが、四回の1死三塁を逃したのが悔やまれる。