第85回選抜高校野球大会で21年ぶりの4強入りを果たした浦和学院は第12日の2日、初の決勝進出を懸け、準決勝第1試合で敦賀気比(福井)と対戦する(11時・甲子園)。県勢が決勝に進めば、2008年に準優勝した聖望学園以来、5年ぶり4度目となる。
チームは1日、兵庫県西宮市の鳴尾浜臨海公園野球場で午前10時から約3時間の練習を行った。北照(北海道)を10-0で下した準々決勝から一夜明けた翌日にもかかわらず選手は疲れた様子もなく、シートノック、フリー打撃などで念入りに調整した。
敦賀気比は準々決勝で聖光学院(福島)に9-3で快勝。打線は3本塁打を含む11安打と勢いがある。浦和学院は昨年の1回戦で同校と対戦し、10-2で大勝した。森士監督は相手について「投手を中心に、(打者は)バットが振れている。総合力が高く、いいチーム。エースを打ち崩さないと勝機はない」と警戒した。
初出場ながら4強入りした1992年の第64回大会、就任1年目だった森監督は22年目にして挑む初の決勝進出へ向け「とにかく意識しないで、今までと変わらず1試合に全力で立ち向かいたい」と強調。「目の前の一球、一瞬に集中してやる。真剣勝負を楽しみながら挑んでいきたい」と力強く意気込みを語った。
◇21年前を超えろ
【写真】準決勝の前日練習で、選手たちを集めてミーティングを行う森監督(右)=1日午前、兵庫県西宮市の鳴尾浜臨海公園野球場(埼玉新聞)
21年ぶりのベスト4入りを果たした浦和学院は2日、春夏の甲子園を通じて初となる決勝進出を目指し、敦賀気比(福井)との準決勝に臨む。就任1年目で初出場した1992年の第64回大会で果たした4強超えを狙う森監督は、「とにかく目の前のプレーに対し、どれだけ集中できるか。真剣勝負を楽しみながら試合に挑みたい」と強い意気込みを示した。
チームは前日の1日、兵庫県西宮市の鳴尾浜臨海公園野球場でシートノック、シート打撃、フリー打撃など、いつもと同じメニューで約3時間の最終調整を行った。
シート打撃では、敦賀気比のエース岸本を想定し、涌本ら右腕をレギュラー陣が攻め込んだ。フリー打撃では、マシンを速球とカットボールに設定。手投げは右腕伊藤らが登板し、打撃陣は飛球ではなく低い打球を心掛け、鋭いスイングで快音を響かせていた。
練習前には森監督が選手らを集合させ、「あの舞台で試合ができることに喜びを感じて戦おう」と引き締めを図った。ナインも応えるように、疲れを感じさせないぐらい軽快な動きを見せていた。
昨秋の北信越大会準優勝の敦賀気比は、2年連続5度目の出場で初の4強。1回戦では沖縄尚学を11-2、2回戦では京都翔英を6-5、3回戦で盛岡大付(岩手)を3-0でそれぞれ下した。準々決勝の聖光学院(福島)戦は9-3で快勝。3番山田の2打席連発を含むチーム3本塁打で11安打を放った。右腕岸本も安定感がある。前回の選抜大会では1回戦で顔を合わせ、浦和学院が10-2で快勝した。
◇調子上向き、貢献誓う 斎藤
準決勝前日のシート打撃で三塁打2本を放った6番斎藤。ここまで打率1割台と本調子ではないが、歴史を懸けた大事な試合を前に調子を上げてきた。「目の前の相手と戦ってきた結果。とにかく集中して先のことを考えず相手を倒す」と初の決勝進出へ力を込める。
敦賀気比のエース岸本を想定した右腕に対し、左中間、右中間に器用に打ち分けた。準々決勝では左腕を打ちあぐねた左打者は「右の方が得意。きょうの練習で意識して仕留められた。いい形で臨める」と貢献を誓った。
◇体の開き修正 好調アピール 木暮
浦和学院打線の鍵を握りそうな5番木暮が好調をアピールした。2試合連続アーチの4番高田は相手のマークが予想される。自身は3試合で3安打ともうひとつ調子に乗り切れていないが、「体の開きが早くて大振りになっていた。きょう修正できていい感じになってきた。あしたは逆方向を意識してコンパクトに振りたい」と意気込んだ。
チーム初の決勝進出が懸かる一戦へ向け、「特に意識はない。普段通りの野球をして堂々とプレーしたい」と大舞台の雰囲気を楽しむつもりだ。
◇小島「マウンドで暴れる」
3試合に先発し、24イニング1失点と安定感抜群の小島。日に日に存在感を増す2年生左腕は「明日(2日)からが本当の勝負。初戦のつもりでいく」と気合を入れ直した。登板となれば中1日、「気持ちの面をしっかりしたい」と余念がない。
敦賀気比の打線については「甘い球がいくと全打者に長打がある」と分析。7回1安打無失点に抑えた準々決勝の北照戦同様、制球力を生かし、厳しいコースを突いていきたい。「堂々とマウンドで暴れたい」と目の前の相手に全力を傾ける。
◇「熱い試合」に気負いなし
春、夏を通じて初の決勝進出を懸ける敦賀気比戦。浦和学院野球部にとっては“特別な一戦”になるが、「意識はしてないです」(主将山根、エース小島、遊撃手竹村ら)と、誰に意気込みを聞いても同じコメント。森監督も「過去は振り返らず、先におびえず、この1試合に全てを懸けて戦いたい」と、あくまで貫徹するのは一戦必勝の精神にほかならない。
敦賀気比とは良縁がありそうだ。前回大会では開幕日に対戦し、10-2で大勝。浦和学院にとって、これが甲子園では8年ぶりの白星で、負の歴史を断ち切り、現在までの躍進に至っている。
しかし、相手からすると聖地で屈辱を味わわされた因縁がある。敦賀気比ナインは、組み合わせが決まる前から「浦学を倒す」と鼻息を荒くしていたという。当然、浦和学院ナインも相手がリベンジに燃えてくることは重々分かっている。竹村は「今までにないぐらい熱い試合になる」。山根も「気迫で負けないこと。技術よりも気持ちで戦っていきたい」と返り討ちにするつもりだ。
森監督は21年前の準決勝、帝京(東京)戦を鮮明に覚えているという。「あの時は正直言って、大敗しなければいいなと思っていた。1-3で負けて満足している自分がいた」。就任1年目、27歳の青年監督で右も左も分からず、本当の意味で相手に立ち向かえていたのかどうかは半信半疑だという。
21年の時を経て、手塩に掛けてきたまな弟子たちと自信を持って挑む。「明日の試合で選手たちが、どれだけ力を発揮してくれるのか、ワクワクした気持ち」。好敵手を倒し、新たな歴史を切り開く。
◇浦学・森監督、敦賀気比・東監督 試合への意気込み
準決勝で対戦する浦和学院・森士監督と敦賀気比・東哲平監督が、お互いの印象や試合への意気込みなどを語った。
―相手の印象。
森「投手を中心としてバットが振れていて、積極的に走者を動かしてくる。総合力が高く、いいチーム」
東「毎年、ものすごくいいチームをつくってきている。投手もいいし、バットも振れている」
―警戒する選手。
森「2番の左打者(米満)はバランスがいい。もちろん中軸もいいが彼がキーマン。エース(岸本)も打ち崩していかないと勝機はない」
東「相手はいい選手ばかり」
―チームの雰囲気。
森「けが人もなく、精神的に落ち着いて、プレーに集中できている」
東「とてもいい。1回戦から4試合で疲れていないことはないが、ここまできたら気力の勝負」
―理想の試合展開。
森「展開は読めないが、ロー(スコア)ゲームの接戦になる」
東「接戦になる。点をできる限り抑えて、その中で少しでも(得点で)上回りたい」
―試合への意気込み。
森「今までのスタイルを変えず、1試合に全てを懸けて立ち向かう」
東「選手は去年負けてリベンジの意識は高いが、自分たちのプレーに集中して気比らしい野球をしたい」
◇副知事ら甲子園へ 決勝には上田知事も
県は1日、第85回選抜高校野球大会で浦和学院高校(さいたま市緑区)が21年ぶりとなる準決勝に進出したため、塩川修副知事と粟生田邦夫副教育長が試合当日の2日、甲子園球場(兵庫県西宮市)で応援することになったと発表した。
県スポーツ振興課によると、決勝に進出した場合は上田清司知事や前島富雄県教育長が応援に駆け付ける予定。最近では2008年の第80回大会の聖望学園高校(飯能市)の準決勝に、橋本光男副知事(当時)らが駆け付け、決勝は上田知事らがスタンドで応援した。
(埼玉新聞)