第67回春季関東高校野球大会最終日は20日、山梨県の山日YBS球場で決勝を行い、24年ぶりの県勢対決は、選抜大会4強の浦和学院が初出場の川越東を4-2で下し、2年ぶり5度目の栄冠に輝いた。浦和学院は昨秋に続いて2季連続の関東制覇。
浦和学院は一回、先頭の諏訪が相手の意表を突くセーフティーバントで敵失を誘い出塁。その後1死三塁とし津田、山崎滉、高橋の3、4、5番の3連打で2点を先制した。五回も敵失から好機をつくり、台、津田の連続タイムリー長打で2点を追加。先発の左腕小倉はコーナーを丁寧に突く投球で、無四球で5安打2失点で完投した。
川越東は守備のミスが失点につながった。先発の右腕磯川は7回4失点だったが、9安打を許しながら粘り強く投げた。二回には川田が右越えソロ本塁打、九回にも札葉の右犠飛と食い下がった。
浦和学院は選抜大会4強の実力を県大会、関東大会で十分見せつけた。初戦で帝京三(山梨)にコールド勝ちすると、準々決勝では全国制覇経験のある前橋育英(群馬)に快勝。優勝候補同士の対戦となった東海大相模(神奈川)との準決勝は投手戦となったが、打線が勝負強さを発揮した。
昨秋から3度目の決勝対決となった川越東戦も3連勝。攻守で盤石な戦いぶりは、もはや次の目標は県勢初の深紅の大優勝旗獲得しかないと思わせる。主将の津田は「もう一度心と体をつくり直し、全員野球で夏の全国制覇を成し遂げたい」と力を込める。
選抜大会を一人で投げ抜いたエース左腕江口に頼ることなく、春季大会では左腕小倉、2年生右腕榊原が貴重な経験を積んだ。夏に向けて厚みを増した投手陣もさることながら、強力打線の完成度は目を見張るものがあった。
森監督は試合後、「きょうは折り返し地点」と表情を引き締めた。選抜大会後100日間ある夏の県大会開幕まで半分が過ぎたことを意味する。「残りの時間をどのように生かせるか。今までは夏に向けての準備期間。これからが本番」と高みを見据えた。
◇浦学、際立つ強さ 初回の攻撃で真価 |
四半世紀の時を越えて実現した関東大会2度目の県勢決勝は、進化し続ける浦和学院の強さが際立った。「立ち上がりを攻めることができたのは大きかった」と森監督。現状に決して満足することのない姿勢が、一回の攻撃で真価を発揮した。
先頭の諏訪が一塁線寄りに転がす技ありのセーフティーバント。川越東先発・磯川の不意を突き失策を誘った。「森先生からセーフティーバントは三塁側だけじゃないと教わった」と諏訪。前日の練習で磨いたばかりの技術で先制の足掛かりをつくった。
盗塁と犠打で1死三塁とすると、津田が甘く入ったスライダーを逃さず左前に運ぶ先制打。さらに山崎滉の右前打、高橋の中前適時打と主軸の3連打で2点をもぎ取った。五回には先頭の幸喜が敵失で出塁。続く小倉のバント失敗で流れを失いかけたが、2死二塁から台、津田の連続適時長打で2点を加えた。
打線は日進月歩の成長を見せている。昨秋の明治神宮大会では仙台育英の佐藤世、選抜大会では龍谷大平安の高橋奎、県岐阜商の高橋純と全国区のエースたちと互角以上に渡り合ってきた。試合映像を何度も見直し、それぞれが苦手とするコースや球種を分析して弱点の克服に務めた。
選抜大会4強後、県大会、関東大会を裏付けのある勝利で制した。今後の焦点はやはり夏。県大会を制し、甲子園で深紅の大優勝旗をつかみ取るか。期待は膨らむ。
ただ、森監督は「守るにしても、打つにしてもつなぐ役割を果たしていかなければ夏は厳しい」と引き締める。勝負の夏へ、これからが本番だ。
◇主将津田、栄冠導く 3安打2打点 |
主将自らバットでチームを栄冠に導いた。浦和学院の津田が3安打2打点と気を吐いた。第1打席は一回1死三塁から左前へ先制の適時打。第3打席は五回2死三塁から左中間を破る貴重な適時二塁打。いずれも甘く入ったスライダーを思い切り振り抜いた。
森監督も「吹っ切れたようなスイングをしている」と高く評価。津田は「ここぞという打席で打てた」と貴重な追加点を挙げた五回の打撃に胸を張る。「みんな暑さで集中力が欠けていた部分を修正していきたい」と反省も忘れなかった。
◇随一の長打力 高橋が追加点 |
「外を意識して踏み込んだ」と浦和学院の高橋が、先制後の一回1死二、三塁から外角高めの直球を中前にはじき返す適時打を放った。四、六回には先頭打者として安打で出塁。4安打1打点の活躍に「悔しい思いをして向かってくる相手に負けないように、気を張って戦えた」とうなずいた。
類いまれな下半身の強さが生み出す長打力は打線の中でも随一。県大会決勝から5番に上がった打順も期待の表れだ。「ランナーがいたらかえす役割を全うしたい」とチームへの貢献を誓った。
◇小倉、無四球完投勝利 左腕の成長 大きな収穫 |
「浦和学院のピッチャーは江口だけじゃないと証明したかった」
県大会から投手陣の軸を担ってきた左腕小倉は、好調の川越東打線に臆することなく無四球完投勝利を飾った。「自分の意図したボールを一球一球投げられた。最後まで投げ切ることができてよかった」と大粒の汗を拭った。
昨秋の関東大会決勝で完投した際は、打線の援護にも助けられた。18日の準々決勝・前橋育英戦では八回まで4安打無失点と好投しながら、九回2死から2ランを被弾。詰めの甘さを反省した。
決勝も川田にソロ本塁打を浴びたが、「自分の中でうまく切り替えることができた」。変化球でカウントが取れるようになったことで配球の幅が広がり、投球に安定感が生まれた。森監督も「ゲーム慣れしてきた。秋の段階とは違う信頼感がある」と評価する。
夏の過酷な連戦を戦い抜くには、エース江口とともに両輪としての活躍が不可欠。春の戦いで信頼を勝ち取った背番号10の投球が、チームにとって最も大きな収穫となったことは間違いない。
(埼玉新聞)
◇3安打2打点 頼れる主将 |
浦和学院の主将・津田は、チームを優勝に導く3安打2打点の活躍。「準決勝の本塁打で気持ちが楽になった。今日もリラックスして打てた」とホッとした表情を見せた。
今大会は最初の2試合で1安打と、調子が上がらなかった。選抜大会以降、試合のビデオを見返して打撃練習を重ねてきたが、「打たなくては」との気負いから結果が出なかった。
しかし、19日の東海大相模との準決勝で本塁打を放ち、気持ちが吹っ切れた。決勝では、初回に迎えた先制の好機で真ん中に入ってきた甘い変化球を冷静に捉え、先制点をもたらした。
優勝しても慢心はない。「チームは選抜から成長できていない。監督のサインを予想できるぐらいにならないといけない」。頼れる主将は、落ち着いて夏を見据えている。
(読売新聞埼玉版)
◇主将復調、控え投手も台頭 浦学、夏へ向け収穫 |
浦和学院の3番、津田翔希主将(3年)の心は晴れていた。一回1死三塁、3球目のスライダーを左前に運び先制の適時打。三回は中前安打、五回には適時二塁打と固め打ちした。スイングから迷いが消えていた。
4強入りした選抜大会は17打数4安打。不振を引きずったままだったが、今大会準決勝の東海大相模戦で本格派左腕から本塁打を放ち、「気持ちが吹っ切れ、自信がついた」という。
津田主将に復調の兆しがみられたのは好材料だが、森士監督は「4、5番が機能していない」。
4番の山崎滉太選手(同)は関東大会4試合で計5安打。「浦学打線は安打でつなぎ、点を線にする打線。自分がこの線を止めてしまっている」とうなだれた。
一方、投手陣では、この日先発の小倉匡祐投手(同)が台頭した。二回にソロ本塁打を許したが、「引きずっても仕方ない」と切り替えて無四球完投。今大会は2試合で計17回3分の2を投げて、安定感を増した。
選抜ではエース江口奨理投手(同)の控えに甘んじたが、「浦学の投手は江口だけじゃない」と自信をつかんだ。江口、小倉の両左腕で夏を乗り切るめどがついたのは収穫だ。
春の県大会から9戦負けなしだが、目標はあくまで夏の甲子園だ。森監督は「集大成で力を発揮できるか、これからが本番」。
(朝日新聞埼玉版)
◇高橋司右翼手、夏見据える強いまなざし |
4打数4安打の活躍で、5番の役割を果たした。初打席の一回1死二、三塁の場面では「絶対にランナーを生還させる」と意気込み、中前打で2点目。県大会決勝の雪辱をかけて挑んできた川越東の機先を制した。
春の選抜高校野球大会では打撃の不振に苦しみ、4試合でわずか2安打。「全然打てなかった」と苦々しそうに振り返る。
体が開いてしまう癖に悩まされ、思うようなスイングができなくなっていたが、大会後にティーバッティングを繰り返し、フォームを修正。「今日は自然体で打てた」と確かな手応えを感じている。
「優勝はうれしいが、課題もたくさん見えた」と大会を振り返った。「これからは県内の他のチームも強くなっていく。どこにも負けないくらい練習をしたい」。力強いまなざしの先にあるのはもちろん、甲子園の春夏連続出場だ。
(産経新聞埼玉版)
◇終盤失点、夏への課題 浦和学院・小倉匡祐投手 |
「ここ踏ん張れよ」。五回表、マウンドに上がると、遊撃手の津田翔希主将(3年)から声をかけられた。三、四回と味方の攻撃で併殺が続き、流れが悪くなる兆しがあった。「ボール球でもいいから、勢いのある球を投じよう」。気持ちを切り替えて打者に向かうと、この回をわずか8球で無得点に。リズムに乗り、完投でチームを優勝に導いた。
4強入りした今春のセンバツでは、主戦・江口奨理投手(同)が全試合を投げ、自身の登板はなかった。「江口に勝つには克服しないといけない課題がある」。センバツ後は「直球で空振りとファウルを取る」をテーマに掲げて試合に臨んだ。登板を重ねるごとに思い通りの投球ができ、手応えを感じていた。
そして迎えた関東大会。初先発した3回戦の前橋育英(群馬県)戦では、完投目前の九回2死で本塁打を浴びまさかの降板。決勝でも九回に犠飛で1点を失い、終盤の失点という新たな課題が見つかった。「夏に向けて修正したい」。背番号10に、もう笑顔はなかった。
(毎日新聞埼玉版)
◇浦学が秋春連覇!小倉完投、江口と2本柱で21連勝 |
今春センバツ4強の浦和学院が、川越東との埼玉勢対決を制して2年ぶり5度目の優勝を飾った。先発した背番号10の小倉匡祐投手(3年)が、5安打無四球2失点で完投。エース江口奨理投手(3年)との左腕2本柱が完成し、小島和哉投手(現早大1年)を擁してセンバツ初優勝した12~13年以来の関東大会秋春連覇をつかんだ。
もうエース1人に頼らない。小倉は2回の本塁打と9回の犠飛で2点を失ったが、最後までマウンドに立ち続けた。18日の前橋育英(群馬)戦で完封目前の9回2死から2失点で降板した悔しさを晴らした。前日の準決勝で東海大相模(神奈川)を12三振完封した江口に刺激を受けた172センチ左腕は「江口だけじゃない、というところを見せたかった」と汗をぬぐった。
今春最大のテーマは「投手陣の底上げ」だった。センバツを制した13年、エース小島に次ぐ投手を確立できず、夏の甲子園は11失点で初戦敗退。チームの誰もが「夏は1人では勝ち抜けない」と痛感した。県大会から結果を出し続けた小倉は「(森監督から)2番手以降が大事だと言われてきた。もっと体力をつけて甲子園で投げたい」と意気込んだ。
関東制覇は春秋通じて10度目。今夏限りで勇退する横浜(神奈川)の渡辺監督が積み重ねた9度(春3、秋6)を上回った。森監督は「どんな形でも優勝したかった。渡辺監督に恩返しがしたい」と言った。現チームは昨秋から対関東勢21連勝。江口、小倉の左腕2本柱を手に入れた浦和学院が、悲願の夏日本一へ突き進む。
(日刊スポーツ)
試合結果 |
決勝 5月20日(山日YBS球場) | ||||||||||||
TEAM | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 計 | H | E |
川越東 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 2 | 5 | 3 |
浦和学院 | 2 | 0 | 0 | 0 | 2 | 0 | 0 | 0 | 0 | 4 | 10 | 0 |
【浦】小倉-西野【川】磯川、浅見-藤野 ▽本塁打:川田(川)▽三塁打:臺(浦)▽二塁打:津田(浦)吉沢(川) |
浦和学院打撃成績 | ||||
位置 | 選手名 | 打数 | 安打 | 打点 |
⑤ | 諏訪 | 4 | 0 | 0 |
④ | 臺 | 3 | 1 | 1 |
⑥ | 津田 | 3 | 3 | 2 |
③ | 山崎滉 | 4 | 1 | 0 |
⑨ | 高橋 | 4 | 4 | 1 |
⑧ | 荒木 | 3 | 0 | 0 |
② | 西野 | 4 | 0 | 0 |
⑦ | 幸喜 | 4 | 0 | 0 |
① | 小倉 | 3 | 1 | 0 |
計 | 32 | 10 | 4 | |
川越東打撃成績 | ||||
位置 | 選手名 | 打数 | 安打 | 打点 |
⑥ | 福岡 | 4 | 0 | 0 |
⑤ | 吉沢 | 4 | 1 | 0 |
④ | 駒崎 | 4 | 0 | 0 |
② | 藤野 | 4 | 2 | 0 |
R | 香取 | 0 | 0 | 0 |
⑦ | 札葉 | 3 | 0 | 1 |
③ | 川田 | 4 | 1 | 1 |
⑨ | 野口 | 3 | 0 | 0 |
⑧ | 大南 | 3 | 1 | 0 |
① | 磯川 | 1 | 0 | 0 |
H | 鈴木 | 1 | 0 | 0 |
1 | 浅見 | 0 | 0 | 0 |
計 | 31 | 5 | 2 |
投手成績 | |||||||
TEAM | 選手名 | 回 | 球数 | 被安打 | 奪三振 | 四死球 | 失点/自責 |
浦和学院 | 小倉 | 9 | 112 | 5 | 6 | 0 | 2/2 |
川越東 | 磯川 | 7 | 103 | 9 | 2 | 1 | 4/0 |
浅見 | 1 | 11 | 1 | 0 | 0 | 0/0 |
TEAM | 三振 | 四死球 | 犠打 | 盗塁 | 失策 | 併殺 | 残塁 |
浦和学院 | 2 | 1 | 2 | 3 | 0 | 0 | 7 |
川越東 | 6 | 0 | 2 | 0 | 3 | 2 | 4 |
地力に勝る浦和学院の快勝だった。
浦和学院は相手のミスを見逃さなかった。一回、先頭の敵失をきっかけに1死三塁とし、津田の左前適時打で先制。さらに高橋が中前適時打を放ち2点目を加えた。五回も敵失から好機をつくり、台、津田の連続タイムリー長打で2点を追加。左腕小倉は制球が安定し、無四球で5安打2失点で完投した。
川越東は守備の乱れから失点。先発の右腕磯川を支えられなかった。二回に川田がソロ本塁打、九回には札葉の右犠飛と粘りは見せた。