(10日・県営大宮)
最終日は決勝を行い、浦和学院が花咲徳栄と延長の末にサヨナラ勝ち。十一回に4-3で退け、3年連続15度目の栄冠に輝いた。
浦和学院は延長十一回1死三塁から家盛が右前に決勝打を放ってけりをつけた。0-2の六回に二つの押し出し死球で同点に追い付き、七回に再び勝ち越された。2-3の九回に山本の適時二塁打で同点として延長戦に持ち込んだ。
浦和学院と花咲徳栄が来年の選抜大会へ最終関門となる関東大会(22~24、29、30日・栃木)に出場。抽選会は12日に行われる。
土俵際で勝負強さ
「良いゲームだった。粘り強く選手がよく頑張ってくれた」。浦和学院の森監督は手放しで称賛した。秋の決勝で8度目の顔合わせになった両雄の対決は、延長十一回のサヨナラ勝ちで浦和学院が3連覇を達成した。
3-3の延長十一回1死から3番山本が三塁打で出塁。続く4番家盛がカウント2ボールから3球目のフォークを体勢を崩されながら右前へ運ぶ。山本が生還し、3時間2分の熱戦に終止符を打った。家盛は「抜けてくれて最高にうれしかった」と勝利の余韻に浸った。
土俵際で踏みとどまった。2-3で入った九回には敗戦も覚悟。だが、1死から杉山、山本の連続二塁打で1点を返した。山本は「ここに立てているのは仲間や支えてくれた先輩たちのおかげ」と右翼フェンス直撃の同点二塁打。試合を振り出しに戻した。
一体感のある勝負強さは猛練習のたまものだ。夏の大会で市川越に敗戦した7月18日に新チームは始動。練習は1日も休まず、血のにじむ努力を続けた。森監督が「例年にない苦しさがあった」と漏らすのは、今夏に活躍した杉山、山本が体調を崩し、グラウンドから遠ざかっていたこと。
杉山は「夏はチームに迷惑を掛けた。チームのためにどうにかしたい一心だった」と九回の場面を振り返る。山本も「支えてくれた全員の思いを込めた」と周囲に感謝した。
今大会はBシードと前評判は決して高くなかった。しかし、試合をすればやはり強かった。「まだ伸びしろがある」と森監督は言う。先輩たちの悔しさを受け継いだ後輩たち。その思いが強さをより際立たせた。文字通りの全員野球で手にした優勝旗は例年以上の価値があるはずだ。
思い背負い執念の一打 4番・家盛
熱戦に終止符を打ったのは浦和学院の4番家盛の一振りだ。3-3の延長十一回1死三塁。これまで打ちあぐねていた花咲徳栄の右腕清水のフォークを体勢を崩しながら右前へ。「体が反応した」と右手一本で運ぶ執念のサヨナラ打だった。
常に投手の足元に強い打球を打つことを念頭に置く。「自分は4番目の打者。つなぐことを考えている」。チームプレーに徹する気持ちが殊勲打を生んだ。「練習を手伝ってくれた3年生、控え選手の思いを感じながら打った」と喜んだ。
あと1本…攻撃面の「遅れ」響く
走攻守でそつがないのが花咲徳栄の野球。特に対戦相手が最も嫌がるのが、とにかくしぶとく、時に強力で、つながり出すと止まらない打線だ。
しかし、今チームが一番の課題としていて、岩井監督が「遅れている」と強調するのが「攻」の部分の打撃面。それが顕著に表れた決勝だった。
一回、死球と連続四球でいきなり無死満塁。労せずして築いた絶好機に野村の中犠飛で1点を先制後に須永、高井は捕邪飛、二ゴロで凡退。六、七回はともに敵失で1点ずつをもらいながらも、後続があえなく併殺や内野フライなどに倒れた。
終始、試合を優位に進めていただけに「あと一本、という場面で出ていれば相手を沈められた」と岩井監督。11回で放った安打はわずか5本。前チームからの主力の1番千丸、3番西川のレベルが突出している印象で、6番高井は「どの打順からスタートしても点を取れる打線になれないと」と危機感を募らせる。
それでも悲観することはない。浦和学院より、新チームの始動が1カ月遅い状況でもスコア上、互角に渡り合った底力はさすがの一言だ。
合言葉の“4季連続甲子園”が懸かる関東大会へ、主将の千丸は「関東に出るチームで自分たちが一番弱いと思っている」と前置きした上で「チャンスがあるからには勝ち取ってやるという気持ちで戦う」。愚直に伝統の野球を貫く覚悟だ。
武器生かし攻めの投球 救援・清水
延長十一回裏、1死三塁で低めのフォークを右前に運ばれ、サヨナラを許した花咲徳栄の右腕清水。「迷いなくスイングしてくるところが、(浦和学院と)自分たちとの違い」と悔しがった。
出番は2-0の六回。1死二、三塁で先発網脇からバトンを受けた。2死満塁から連続死球で追い付かれたが攻めの気持ちを忘れず最少失点に。九回にも同点とされた後の1死二、三塁をしのいだ。140キロ超の直球とフォークが武器の背番号1は関東大会へ「目標はセンバツ。自分たちの野球をしたい」と誓った。
(埼玉新聞)
凡打重ねた4番 サヨナラ決めた 浦学・家盛選手
スタンドの声援が聞こえないほど集中していた。延長十一回1死三塁。浦和学院の4番家盛陽介選手(2年)は「見逃せばボール」の低めのフォークをすくい上げた。「よっしゃ」。打球は右前へ。優勝を決める一打となった。
「例年にない苦しさだった」と森士監督。夏の埼玉大会では4回戦で敗退。厳しい練習を積んできた。引退した3年生も練習に参加、監督自身もシート打撃で投球するなど、チーム一丸となって大会を迎えた。
「呼吸を落ち着かせるように」という諏訪賢吉前主将(3年)の助言を思い出し、深く息を吸い込んで迎えた打席。5打席連続で凡打を重ねていたが、勝負どころで4番の役割を果たした。「甲子園に行けてない3年生や周りの人々の思いを背負って、一戦必勝で」。3季遠ざかっている甲子園出場を目指し、関東大会へ乗り込む。
(朝日新聞埼玉版)
浦学2年・山本晃大選手、起死回生同点打 サヨナラ口火も
1点を追う九回1死二塁、打席が回ってきた。凡打に倒れ、最後の打者になった、五月の春季関東大会の日本航空(山梨県)戦が頭をよぎる。
「また最後になるかも」。つい弱気になったが、「支えてくれた人のためにも活躍したい。過去は気にせず、打って同点にする。絶対ここで終わらせない」と自らを奮い立たせた。
相手投手のスライダーに体が勝手に反応しジャストミート。右中間を襲う値千金の同点適時打になった。十一回には三塁打で出塁してサヨナラのお膳立てを果たし、家盛陽介選手の右前打で決勝のホームを踏んだ。
一年生からレギュラーに定着し、昨年の秋季県大会優勝にも貢献。この日も中軸の3番に座った。だが、センバツや夏の甲子園には届かず、落ち込む日々が続いていた。
新チームの中心として、「精神面が未熟」と自らの課題を意識した上で、「プレーで三年生に代わりチームを引っ張る」とあえて自らにプレッシャーをかけ、苦手を克服しようとしてきた。自らのバットでもぎ取った優勝。「センバツに必ず行く」と関東大会での活躍を誓った。
(東京新聞埼玉版)
大活躍に充実感
浦和学院は、準決勝で本塁打を放った3番・山本晃大選手(2年)が決勝でも好調ぶりを見せつけた。1点を追う九回には、値千金の同点適時二塁打。試合後「前の打者がつないでくれたので、自分が何とかしたかった」と振り返った。また、延長十一回には1死から右中間三塁打で出塁し、サヨナラのホームイン。土壇場でチームを勝利に導く活躍に「これまでチャンスをつぶしてきたので、仲間のために打ちたかった」と充実感をにじませた。
「勝負強い自分」に自信 浦和学院2年・家盛陽介選手
延長十一回1死三塁。高ぶる気持ちを静めようと深呼吸し、この日6回目の打席に入った。それまでの5打席はノーヒット。その悔しさを晴らすかのように低めのフォークに食らいつき見事、4番の重責を果たした。
1年生の秋からレギュラーを張ってきた。変則投手にも対応できるよう、遅い球や左投手のスライダーを打つ練習を繰り返してきた。その努力が、県大会決勝という大舞台で生きた。自身にとって「高校初のサヨナラ打」で決めたチームの3連覇。試合後は、「自分は勝負強い」と自信をのぞかせた。
全国優勝経験もある名門校・浦和学院の主軸として「自分がチームを勝たせられないといけない。自分が落ち込んだら、チームも落ちてしまう」と心掛ける。
この夏、甲子園に行けなかった3年生が練習を手伝ってくれているといい「先輩の思いも感じながら、(関東大会も)一戦必勝で戦う」と力を込めた。
粘り強くいい試合 浦和学院・森士監督
粘り強く、諦めることなく(試合が)でき、いいゲームだった。こういうレベルの相手と戦う経験ができたのは大きかった。ただ、投手力や守りのミスといった課題はあり、手放しでは喜べない。
チーム総合力でV 浦和学院・赤岩航輔主将
今回の県大会は挑戦者の気持ちで戦い、チームの総合力で優勝できたと思う。関東大会は相手のレベルも高くなる。(決勝では)エラーが二つ出たので、基本からしっかり見直して臨みたい。
タイムリー打てず 花咲徳栄・岩井隆監督
緊迫した試合の中でプレーできたことは収穫。タイムリーを打てなかったことが一番の敗因。一人一人が猛省しなければいけない。打撃力を鍛え、関東大会では徳栄らしいしぶとい野球をしたい。
攻撃でミスなくす 花咲徳栄・千丸剛主将
絶対に勝つという気持ちでやってきたが、延長サヨナラ負けだっただけに悔しい。(今後は)攻撃面でミスをなくしたい。関東大会では(実力を)全て出せばおのずと結果はついてくると思う。
(毎日新聞埼玉版)
試合結果 |
県大会決勝 10月10日(県営大宮球場) | ||||||||||||||
TEAM | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 計 | H | E |
花咲徳栄 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 3 | 5 | 3 |
浦和学院 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 2 | 0 | 0 | 1 | 0 | 1x | 4 | 11 | 2 |
【浦】 | 清水、渡邉、佐野-秋山 |
【花】 | 網脇、清水-須永 |
三 | 山本(浦) |
二 | 矢野、蛭間、杉山、山本(浦) |
浦和学院打撃成績 | ||||
位置 | 選手名 | 打数 | 安打 | 打点 |
⑤ | 矢野 | 6 | 2 | 0 |
③ | 杉山 | 6 | 3 | 0 |
⑧ | 山本 | 5 | 2 | 1 |
④ | 家盛 | 6 | 1 | 1 |
⑨ | 蛭間 | 5 | 1 | 0 |
⑦ | 燈中 | 3 | 1 | 0 |
② | 秋山 | 4 | 0 | 0 |
① | 清水 | 1 | 0 | 0 |
H | 小町 | 1 | 0 | 0 |
1 | 渡邉 | 0 | 0 | 0 |
H | 本田 | 0 | 0 | 1 |
1 | 佐野 | 1 | 1 | 0 |
⑥ | 森川 | 4 | 0 | 1 |
計 | 42 | 11 | 4 | |
花咲徳栄打撃成績 | ||||
位置 | 選手名 | 打数 | 安打 | 打点 |
④ | 千丸 | 4 | 2 | 0 |
⑥ | 岩瀬 | 4 | 1 | 0 |
⑦ | 西川 | 3 | 0 | 0 |
③ | 野村 | 4 | 0 | 1 |
② | 須永 | 4 | 0 | 0 |
⑤ | 高井 | 4 | 0 | 0 |
⑧ | 鈴木 | 5 | 1 | 0 |
① | 網脇 | 2 | 0 | 0 |
1 | 清水 | 2 | 0 | 0 |
⑨ | 太刀岡 | 4 | 1 | 0 |
計 | 36 | 5 | 1 |
投手成績 | |||||||
TEAM | 選手名 | 回 | 被安打 | 奪三振 | 四死球 | 失点 | 自責点 |
浦和学院 | 清水 | 5 | 2 | 1 | 4 | 1 | 1 |
渡邉 | 1 | 0 | 0 | 2 | 1 | 0 | |
佐野 | 5 | 3 | 3 | 1 | 1 | 0 | |
花咲徳栄 | 網脇 | 5 1/3 | 5 | 2 | 2 | 2 | 1 |
清水 | 5 0/3 | 6 | 5 | 4 | 2 | 2 |
TEAM | 三振 | 四死球 | 犠打 | 盗塁 | 失策 | 併殺 | 残塁 |
浦和学院 | 7 | 6 | 1 | 0 | 2 | 1 | 14 |
花咲徳栄 | 4 | 7 | 1 | 2 | 3 | 1 | 8 |
浦和学院が花咲徳栄に延長十一回でサヨナラ勝ち。九回に同点とし、延長十一回1死三塁から家盛が右前に運び試合を決めた。0-2の六回、二つの押し出し死球で同点。七回には勝ち越されたものの、九回1死から杉山、山本が連続二塁打を放って、土壇場で同点に追い付いた。七回からリリーフした左腕佐野の好投が攻撃に流れを呼び込んだ。花咲徳栄は一回に野村の中犠飛で先制。六、七回には敵失で1点ずつ加えたが、押し切れず。八回以降1安打と沈黙した。