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高校野球の伝統校で続く名将の退任 若き監督が模索する新モデル

 高校野球の伝統校の名将が今夏、相次いで表舞台から去り、若い指導者が新しい監督としてデビューした。新監督は名将の思いを受け継ぎつつ、独自のカラーを出そうと模索している。世代交代を経て、新たな名将は誕生するのか。来春のセンバツに向けて、初の公式戦となる秋季大会でスタートを切った姿を追った。

目指すは「超攻撃型臨機応変」

 「前監督が偉大なチームを長く引っ張ってきたのはすごい。継続させる難しさを感じている」。浦和学院(埼玉)の森大(だい)・新監督(30)は重圧をにじませる。前監督は父の士(おさむ)氏(57)で、就任30年の節目などを理由に今夏限りで退任した。春夏計22回の甲子園出場で通算28勝、2013年センバツでは頂点に立った。森監督はこれまでコーチ、野球部長として父やチームを支えてきた。

 森監督が新たなテーマとして掲げたのが、バントを多用せずに強攻策で好機を広げる「超攻撃型野球」。近年の野球界のトレンドに沿ったスタイルだ。「強い浦和学院はどんなチームだったかを思い返すと、選手一人一人が力強いスイングをする強打が印象的だった」。優勝した13年のセンバツ決勝も、好投手の安楽智大(現楽天)を擁する済美(愛媛)を強力打線で打ち崩し、17点を奪った。

 新しいスタイルは、7日まで行われた秋季関東大会で早くも披露した。1回戦の向上(神奈川)戦の二回、先頭打者が出塁すると、次打者には送りバントをさせず強攻策を仕掛けた。結果は三塁打。先取点を奪って試合の主導権を握り、白星につなげた。同大会では7年ぶりの4強入りを果たし、存在感を示した。

 森監督は単なる「超攻撃型野球」で終わらせるつもりはない。「そこに選手の自律を加えたい。打席で選手の判断を尊重できるチームを作りたい」。選手が自由にやる「伸び伸び野球」とは違い、選手が高い判断力を身につけ、臨機応変に仕掛ける野球を目指している。

元プロが求める「観察力」

 今春のセンバツを制覇した東海大相模(神奈川)は、OBの原俊介監督(44)が就任した。元プロの捕手で、1995年のドラフト会議で巨人から1位指名を受けた。06年の現役引退後は東海大静岡翔洋の監督などを務めたが、春夏の甲子園で計4回優勝の門馬敬治・前監督(51)が健康上の理由で退任。後任の原監督は、秋季関東大会でチームを8強に導いた。

 原監督は、攻撃で先に仕掛けて流れを引き寄せる東海大相模伝統の「アグレッシブベースボール」を土台にしつつ、元プロの捕手らしい視点を生かし、選手に観察力や洞察力の向上を求める。「捕手であれば配球面で打者を見て、その時に何を感じられるか。相手を見て対応できる力を身につけさせたい」。観察力に裏打ちされた対応ができれば、勝負強さが増すと考える。今春のセンバツ優勝メンバーでエースの求(もとめ)航太郎(2年)は「(原監督は)選手と近い距離でコミュニケーションをとりながら、先を読んだ配球を指導してくれる」と信頼を置く。原監督は「少しずつ自分なりの戦い方を出していきたい」と先を見据える。

「10年でアップデート必要」

 野球界を取り巻く環境も、ここ十数年で大きく変化した。インターネットやスマートフォンが普及し、ネット交流サービス(SNS)や動画投稿サイト「ユーチューブ」などでプロの技術や練習法を学ぶこともできる。大谷翔平(エンゼルス)ら日本選手の活躍で、米大リーグのダイナミックな野球も身近になった。情報が多様化してアクセスも容易になり、指導者側も選手を納得させる難しさに直面しているのが現状だ。

 ある中学世代の硬式野球指導者は「指導も指導者も10年たてばアップデートしていくようにならないといけない」と指摘する。選手と指導者の関係も変化しており、別の指導者は「(欠点を直すために)前は選手を叱って伸ばそうとしたが、今は選手のいいところを見つけて褒めて伸ばすことが基本になっている。高校野球も指導のあり方が大きく変わっている」と語る。だからこそ、新しい監督もこれまでとは異なる模索が続く。

 高校野球界では他にも、帝京(東京)で春夏の甲子園計3回の優勝、歴代5位タイの通算51勝を誇る前田三夫氏(72)が今夏に退き、金田優哉監督(36)がコーチから昇格した。近年でも世代交代の動きは顕著で、18年には春夏計68勝で監督として甲子園歴代最多勝利記録を持つ智弁和歌山・高嶋仁氏(75)が退任し、後任の中谷仁監督(42)は今夏の甲子園で優勝した。

 浦和学院の森監督は「同世代が監督になって同じスタートラインに立てたことは心強い」と語り、秋季東京大会で8強だった金田監督は「ベスト4やベスト8で負けるようなチームではないし、この壁を破らないと強い帝京は示せない」と危機感をにじませる。新監督がどんな個性を発揮し、新たな野球を見せてくれるのか。高校野球ファンは注目している。

(毎日新聞)

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