【写真】小論文に取り組む浦和学院の選手たち=同校野球部寮
新生ウラガクは、体を鍛えるだけでなく、脳のトレーニングも欠かさない。
森監督が、選手たちに懸念していたことは理解力と読解力。「ポテンシャルが高くて天才肌の子が多い。感覚でやっているから、選手たちに指導して理解しているか話を聞いても、2、3割しか理解していない」という理由から導入したのが論作文。与えられたテーマに対して、自分の意見など論述をつづる作業を通じた相互理解の進展は、監督が求めるものだった。
日頃、新聞や本を読まない選手たちに、まずは作文から取り組ませた。書籍の指定はせず、冬休みを利用して書くように課題を提示。約1週間かけて書いた作文に自らの考えは反映されず、ただ本の内容を書いただけだった。添削した監督、コーチらは思考力の乏しさに肩を落としたという。
1月の新学期から論作文を毎週実施。英語教諭の中田コーチとトレーナーの堀口コーチが「高校野球の価値について」など、選手にとって身近である高校野球をテーマに資料を作成した。同テーマを題材としたが、当初選手たちは「何を書けばいいか分からない」「作文用紙を埋めるので精いっぱい」などと困惑し、400字詰めの原稿用紙に手を焼いた。
午前中はグラウンドで汗を流し、午後から寮でペンを走らせる日々。だが、繰り返し自分と向き合う中で、変化が生じる。白紙に自分の意見や資料の論点をまずは箇条書きで要約。そのプロセスを経て文字にすることで、各自の考えが伝わってきた。少しずつではあるが、理解力と読解力が身に付いていた。
自己啓発本「『のび太』という生き方」(アスコム)の読書後にまとめた感想文で監督、コーチから最高評価を受けたエースの宮城は「小論文を書くようになってから本を読むようになった。積極的に話すようになった」と自分の考えを仲間に共有している。
この取り組みを初めて間もないが、森監督は「苦手なことに取り組むことで、可能性が広がる。選手たちのポテンシャルを最大限に伸ばしてあげたい」と手応えを感じている。野球能力が高いウラガクの選手たちの磨かれた思考力は、ここ一番でのプレーにきっと表れてくるはずだ。
(埼玉新聞)