【写真】練習開始を前に、森大監督の言葉に耳を傾ける選手ら=浦和学院高校で2022年2月15日
チームを春夏通算22回の甲子園に導き、2013年にはセンバツ優勝も果たした父・森士(おさむ)前監督から伝統を引き継いだ、31歳の新監督。指導のベースには、森大監督が早大大学院で学んだ心理学がある。「自己調整能力に優れた選手はパフォーマンスが高い」と、選手には主体性や自律性を求める。
それは21年秋の関東大会後の指導にも表れた。持ち前の強打線と投手力を発揮して準決勝に進出し、延長戦の末に敗れた。その後の2カ月間は、選手自身に負けた原因を考えさせ、課題を見つけ出すよう指示。その上で、22年1月は「走塁」をテーマに設定した。外部コーチを呼んで走塁練習に力を入れ、ベースランニングが全体で0・5秒速くなるなど成果に結びついた。
2月に入り、グラウンドでは選手に厳しい言葉が飛ぶことが多くなった。「1月は全然怒ってこなかった。感情を出すときは勝負です」。1カ月かけて強化を図るのは「組織力」だ。能力が高く経験もあり、主軸を任される2年生。半面、「自分勝手で、我関与せずなところ」が欠点だと森監督はみる。チームプレーに必要な自己犠牲の精神を培い、一体感を醸成したい狙いだ。この冬の柱として取り組んだ「三本の矢」の一つ、メンタル強化にもつながる。「個の能力は高いが、その中で同じくらいか、高い評価のチーム相手に勇気を出せるか。この1カ月が要」と語る。
「改革」は選手を支える指導者側にも及ぶ。新チームの特徴の一つが、今回のセンバツ出場校で最年少監督となる森監督をはじめ、豊富で若いスタッフ陣の存在だ。全てが監督中心だったこれまでの指導体制に代え、「分業制」を採用した。森監督は大学院在学中、スポーツのナショナルチームで複数の専門家が集団で選手を支える仕組みを学んだ。自身は指導者としての経験が浅い中、「スペシャリストがいないと勝てない。栄養士、理学療法士、心理士など専門性を持ったスタッフがそろい、(分業制には)それぞれのアプローチをかけられる良さがある」と語る。
スタッフ同士のコミュニケーションに力を入れ、毎日ミーティングを実施する。「スタッフは生徒の鏡」。指導者が共通認識を持つ姿勢を見せ、選手を安心させる狙いもあるという。「スタッフの指導経験は浅いかもしれないが、選手にはこれまで戦ってきた経験がある。若いスタッフ陣の勢いと、選手の経験値で戦っていく」
さまざまな取り組みで成長を遂げる新生・浦和学院。新体制で臨む初の甲子園に期待がかかる。
(毎日新聞埼玉版)