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凡打、フライで怒らない新スタイル 浦和学院の「失敗してもいい」“フルスイング”

【写真】大会1号となる2ランを放った浦和学院・高山維月

森大監督「ポップフライも上がるもんだ。それでも最後まで信じていく」

 新生・浦学が“フルスイング”で勝利を手にした。第94回選抜高校野球大会の開幕戦では浦和学院が4-0で大分舞鶴を下し、7年ぶりに初戦突破。森大新監督と選手の信頼関係が強力打線を生んだ。

 強力打線が目覚めたのは4回だった。無死一塁から4番・鍋倉和弘(3年)がフェンス直撃の適時三塁打、続く高山維月(3年)もバックスクリーン右へ飛び込む大会1号2ランを放ち、3点を先制。5回には2死一塁から再び金田が左中間へ適時二塁打を放ち、大分舞鶴のエース右腕・奥本を攻略した。

 序盤は130キロ中盤の直球とナックル、パームなど緩急を生かした投球の前に苦戦したが、浦学ナインはバットを長く持ったフルスイングを継続。特に中軸は体がのけぞるほど強振する姿が目立った。甲子園通算28勝を誇る森士氏から、昨秋にバトンを受けた長男・森大監督は「ストレートを潰すという意識。(相手投手を)打ち崩すというのが昨秋からのテーマ」と、超攻撃型野球を口にする。

 監督からの“信頼”がミスを恐れないスイングを生んでいる。指揮官は「とにかく失敗していい。ポップフライも上がるもんだ。それでも最後まで信じていく」と、ポップフライ、凡打になっても選手たちに怒ることはなかった。

大会1号となる2ランを放った高山「凡打するのはしょうがないと考えている」

 2度の春夏連覇を達成している大阪桐蔭・西谷浩一監督からもヒントを得た。「ある試合で潰す意識を持ってバックスクリーンを狙えというの聞いた」。百戦錬磨の名将の言葉が頭に残っているようで「とにかく甲子園はバッター陣に気持ちいいスイングをさせることが大事だなと感じた」と試合後に振り返った。

 大会1号を放った高山も「凡打するのはしょうがないと考えている。当てにいくバッティングより振り切ったほうがいい」と語り、昨夏との違いについても「去年の夏は短くコンパクト。振り切れない選手もいた。長く持ってフルスイングをテーマに持って練習してきた。ポップフライでもいい、その中でもフルスイング」と自信を口にする。

 今大会から伝統のユニホームが復活。昨夏までは縦じまだったが、2008年以来となる「URAGAKU」のデザインが入ったオールドユニホームを着用している。前夜は前監督の父から「恐れるな。新生・浦学だ、思い切ってやれ」と言葉を受けた新指揮官。次戦も選手を信じ、聖地で白星を重ねていく。

(Full-Count)

バックスクリーンを狙え 名門・浦和学院が見せた”様変わりした野球”「失敗してもいいから振り切る意識を持とう」

フルスイングを徹底した浦和学院。そのなかで高山は試合を決定付ける本塁打を放った。

 第94回センバツ高校野球大会の開幕戦に登場した浦和学院が、これまでとは異なったスタイルで初戦突破を果たした。

 父親である森士前監督から、昨秋にチームを引き継いだ森大監督は言う。

 「開幕戦を戦わせていただきまして、選手たちとは新生・浦学を見せていこうという話をしてきましたので、初戦を勝ててよかったと思います」

 受け継がれたのはディフェンス面だ。旧チームからのエース・宮城誇南はストレートの球速は120キロ台ながら、打者のインコースを強気に攻めるピッチング。ストレートを主体としながらも、変化球をコーナーに散りばめて的を絞らせなかった。

 3回までを無失点。初回からしっかりゲームメークを果たすと、4回表も三者凡退に抑えてチームにリズムを呼び込んだ。

 かつての浦和学院といえば、投手力のチームだった。現在ロッテの先発ローテーションを務める小島和哉の他、古くは夏の甲子園において1試合19奪三振を挙げた坂元弥太郎、巨人などで活躍した大竹寛や須永英輝など、今も昔も投手力で大会を勝ち抜いてきたチームだった。

 「投手力を中心とした守備でリズムを作っていくのが浦学の伝統と思っています」。森大新監督はそう振り返っている。

 一方、様変わりしたのが打線の方だ。

 初回から豪快にフルスイングする姿が目立ち、インパクトを与えた。序盤こそ結果に繋がらなかったが、守備でリズムを作った後の4回裏に繋がった。

 先頭の金田優太が中前安打で出塁すると、4番の鍋倉和弘が左中間フェンス直撃の適時三塁打を放って1点を先制。さらに5番の高山維月が4球目のチェンジアップをフルスイングすると、バックスクリーン横への特大本塁打を放って見せた。

 長打攻勢での3得点はインパクトがあった。だが、ここでかつての浦和学院との変化を感じたのは、結果に関わらず、フルスイングをしていたという点だ。というのも、高山は1打席目に左翼へのポップフライに倒れていたのだ。

 殊勲の高山は、こう振り返っている。

 「新生・浦和学院ということで、去年までのチームだったら、バットを短く持って当てていくというスタイルでしたが、今年からはバットを長く持ってフルスイングをしていくことをテーマとして練習してきました。ポップフライもありましたが、仕方ないと思って、振り切っていきました」

 凡打を恐れないというのがチーム内の決定事項のようだ。

父親から名門の指揮官を受け継いだ森大監督。センバツの開幕戦で見せたチームは、彼の新たなエッセンスが十分に組み込まれていた。

 高校野球らしいチームは往々にしてフライを打ち上げると、監督からの叱責が飛び、それを恐れてつなぐバッティングに終始しがちだ。しかし、新生・浦和学院はそのことが許容されている。小さいことのようで、これは大きい。

 森監督は言う。

 「昨年の夏は2回戦で日大山形に敗れました。その戦いのなかで、相手の日大山形打線は振り切ってきた。それが結果的に、ヒットに繋がっていった。新チームになってから選手たちには、当てに行かず振り切っていこうと話しました。打ち取られても、失敗してもいいから振り切る意識を持とう、と。バックスクリーンを狙えと選手には言っています。そのなかで勝負どころで打ってくれたので、やってきたことの成果が出たのかなと思います」

 5回裏にも1点を加えた浦和学院はこの後、宮城が反撃の隙を与えることなく完封。終わってみれば、頼りになる背番号1が9回2安打13奪三振の圧巻のピッチングで、守備も無失策で援護しての会心の勝利だった。

 長く監督を務めてきたチームはその伝統の継承が容易ではない。

 浦和学院のように、前監督が30年もの歴史を積み重ねてきたとなると、チームの転換にはさまざまな紆余曲折がある。結果的にうまく行かなかったケースも少なくない。

 伝統を変えて新しくしようとして失敗する。チャレンジすることは悪いことではないのだが、チーム作りとは一筋縄では行かないものだ。

 「新たな浦学を見せていくというなかで、この冬に取り組んできたことはできたのかなと思います。エースの宮城、遊撃手の金田、1番の八谷晟歩ら旧チームから試合に出ていた選手が落ち着いてやってくれたので、それに他の選手が呼応してくれてやってくれた。打ったのはクリーンアップですが、みんなが頑張ってくれたと思います」

 昨夏の甲子園を制した智弁和歌山は前任の高嶋仁監督が作り上げた「強打の智弁」のスタイルを受け継ぎながら、バトンを受けた元プロの中谷仁監督が自らの経験をミックスさせ新生・智弁和歌山を見せつけた。

 受け継ぐものと変えていくもの――。浦和学院が新しいスタートを切ったことは間違いない。

(THE DIGEST)

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