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浦和学院の田中部長、銀行員から指導者へ 森監督に誘われコーチに

【写真】銀行員から指導者に転身した浦和学院の田中宏部長=2月27日、鴻巣上谷総合公園野球場

 第94回選抜高校野球大会第6日は24日、兵庫県西宮市の甲子園球場で1、2回戦3試合が行われ、2回戦で浦和学院は和歌山東に7-0で完封勝利した。昨年秋に就任した森大監督(31)と共に新生・浦和学院を支える田中宏(こう)部長(31)は、早大野球部の同級生。銀行員から転身し、指導者として初めての甲子園に挑んでいる。

 「お金じゃなくて人とのつながりを大事にしたい」。プライスレスな出会いと運命で指導者人生が始まった。

 兵庫県伊丹市出身で、祖父・守さん(元阪急ブレーブス)、父・力さん(元ロッテオリオンズ)は、元プロ野球選手の野球一家。幼少期にテレビで見た早大の試合に引かれて、付属校の早稲田実(東京)へ。1年生の時には、3年生に「ハンカチ王子」の斎藤佑樹さん(元日本ハム)がいて、2006年夏の甲子園優勝を帯同選手で経験した。

 早大野球部に進学し、4年間リーグ戦に出場できなかったが、「たくさんけんかしたけど、信頼できる仲間に恵まれた」。同学年の野球部員だった森大監督と青春を過ごした。卒業後は、りそな銀行に就職し、大阪本社で企業や個人の債権回収をするなど、ドラマ「半沢直樹」の主人公と同じ業務を担当。その傍ら休日には、父が監督の伊丹シニアで臨時コーチを務めていた。次第に野球の指導熱が上がり、高校での指導者を考え始めた時、思わぬ誘いを受けた。

 浦和学院が18年夏の甲子園に出場して伊丹市に滞在。当時コーチだった森大監督に誘われて2人で食事をし、「次、監督をやるから一緒にやらないか」と突然の一言。「他から話があったら行こうと考えていた。運と縁とタイミングですね」。二つ返事で引き受け、メガバンクを退職。「野球で生活をするなら野球界で骨を埋める覚悟が必要だぞ」と父からの教訓を胸に19年9月から同校野球部コーチ、21年9月から部長に就任した。

 練習では、外野手にノックを打ったり、投手陣の投球練習を指導する。一方、グラウンドを離れて部費の勘定や大会出場の手続きなど事務作業に奔走する。「長い付き合いだから監督の言いたいことは分かる。監督が野球に集中できる環境をつくりたい」

 ある日、練習に対する姿勢が不真面目だった選手たちに、他のコーチは厳しく注意するが、田中部長はあえて怒らず、1人の選手を呼び、諭すように話し掛けた。「スタッフの方針で監督が上げた『誰かが指導したら誰かがフォローを入れる』というのは気にしている」。スタッフ一同で新生・浦和学院を築いている。「甲子園でプレーして(選手たちの)価値観が変わってもらえたらうれしい」。お金より大切な未来を担う子どもたちをこれからも育てる。

(埼玉新聞)

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