【写真】3月13日の練習試合で、三振に切って取り、出迎えられる浦和学院の長井滉次(左)=同校グラウンド(埼玉新聞)
「来年の夏、甲子園で仲間と再会し対戦するのが夢です」。そう涙ながらに話すのは、家庭の事情で4月から宮崎県延岡市の高校に転校する浦和学院の左腕長井滉次(新2年)。三重との2回戦を前にして26日に宮崎へ旅立つ。応援に行けない名残惜しさを胸にしまい、1年間共に過ごした仲間たちにエールを送る。
選抜大会に向けて佳境に入った3月13日。地元での最後の練習試合にもかかわらず、森監督の粋な計らいで、長井へ最高の花道が用意された。
「投げさせてもらった感謝を示したかった」。168センチ、60キロのきゃしゃな左腕はマウンドで躍動した。1回3分の2を自責点ゼロ。最後の打者を三振に切って取りベンチに戻ると「おまえは仲間だ。向こうに行っても頑張れよ」。森監督に頭をなでられ、自然と涙があふれて止まらなかった。
長井は寮には入らず、茨城県古河市の自宅から通い続けた。毎朝4時に起床。朝、昼の分の弁当を自分で作り、5時24分の始発電車に飛び乗る。朝練に出るための乗り継ぎを考え、大宮駅で下車し片道40分、自転車をこいだ。帰りは疲れて寝過ごし、4時間かかってしまうことも度々だったという。
それでも、この環境を言い訳にしなかった。練習では手を抜かず、主にメンバー外を指導する小崎コーチも「野球に対して本当に真面目」と舌を巻くほどだ。
浦和学院での1年間を振り返って、「人生で一番きつかったけど、これからはどんなことでも乗り越えられる」と、確固たる自信が付いた。
転校する聖心ウルスラ学園は、2005年夏の甲子園にも出場経験がある強豪。規定により1年間は公式戦に出場できず、来年の夏の甲子園で「最高の仲間」との再会を目指す。「エースナンバーを背負い、対戦したい」。直球で抑えられる投手になって、浦和学院と勝負するのが夢だ。
21日の敦賀気比(福井)との1回戦で初めて甲子園を訪れ「広くて雰囲気が違う」と感激した。27日の2回戦以降はテレビの前で応援する。「冬の間、チームも自分も日本一を目指してやってきた。次も勝って甲子園で優勝してほしい」。宮崎から、ありったけのエールを送るつもりだ。
(埼玉新聞)