【写真】157チームが参加して行われた第94回全国高校野球選手権埼玉大会の組み合わせ抽選会=19日午後、さいたま市民会館おおみや(埼玉新聞)
7月11日に県営大宮球場で開幕する第94回全国高校野球選手権埼玉大会の組み合わせ抽選会が19日、さいたま市のさいたま市民会館おおみやで行われ、出場157チームの対戦相手が決定した。
春季県大会で初優勝したAシード南稜は、初戦の2回戦で栄東との対戦が決まった。選抜大会8強で春夏連続甲子園出場を狙うCシード浦和学院は小鹿野と、ノーシードから2連覇を目指す花咲徳栄は草加南とそれぞれ対戦。春季県大会準優勝で14年ぶりの甲子園を狙うAシード埼玉栄は浦和東の挑戦を受け、ともにBシードの春日部東は八潮、川口は武蔵越生とそれぞれぶつかる。
選手宣誓は慶應志木の大桃幹(もとき)主将が務め、開会式直後の開幕試合は本庄-深谷一のカードで争われる。
開会式は午前11時、開幕試合は午後1時半に開始。決勝は28日午前10時から県営大宮球場で行われ、優勝校が甲子園大会への出場権を得る。
◇強豪実力伯仲、波乱も
優勝争いは選抜大会8強でCシード浦和学院を軸に、昨年準優勝のCシード春日部共栄、今春の関東大会4強のAシード埼玉栄、ノーシードながら連覇を狙う花咲徳栄、聖望学園が絡みそうだ。春に躍進を遂げた南稜、春日部東、川口の上位シードの公立勢などが追いかける構図か。ただ、昨秋と今春で4強の顔触れが全く異なるだけに、“波乱の夏”となる可能性も十分あり得る。
■南稜-浦和学院ゾーン
強豪がそろう最激戦区だ。リードする浦和学院は右腕の佐藤、山口に加えて涌本、渡邊剛が故障から復帰し、県内随一の投手力。高瀬、佐野の両右腕を中心に堅守の南稜は5回戦でエース高橋や4番加藤が若いチームを引っ張る花咲徳栄と対戦か。シードの所沢北、滑川総合は粘り強さを武器に意地を見せたい。与野の田中、越谷北の小松はともに長身の好右腕だ。
■所沢商-川口ゾーン
シード勢を軸に実力校が多く、接戦だ。右腕高窪がけん引する川口は初戦で昨秋16強の武蔵越生と激突。抜けても4回戦では強打の大宮東が待ち構える。松山はエース岡本を打線がどこまで援護できるか。昌平は春は登板のなかった左腕広橋が万全を期す。所沢商は遊撃手の土屋が攻守の要。鷲宮、正智深谷も好チーム。川越工の右腕小沢の復活にも期待したい。
■春日部東-春日部共栄ゾーン
春日部共栄、春日部東を中心にノーシード勢にも好チームが多い。春日部共栄は青木、西沢ら投手陣が多彩で打線も活発だ。春日部東は田中、熊谷、丹羽の三枚看板は強力。ただ、準々決勝までに朝霞、昨夏4強の本庄一、右腕川崎が引っ張る熊谷商、市川越、立教新座がひしめき、一筋縄ではいかなそう。上尾、浦和実も力を秘める。初シードの白岡にも注目。
■成徳大深谷-埼玉栄ゾーン
埼玉栄、聖望学園が中心。埼玉栄は堅守からリズムをつかみ、4番高橋ら打線のつながりも良い。ただ、3回戦では蕨、4回戦でも富士見との対戦が見込まれ油断できない。聖望学園は田浦、田中ら打線が強力。エース右腕林が率いる久喜北陽との初戦は見もの。成徳大深谷は5回戦までは順当か。西武文理の遠藤は注目の左腕。狭山ヶ丘-市川口は好カードだ。
◇春夏連続へまい進 浦和学院
今春の選抜大会8強の浦和学院は初戦の2回戦で小鹿野と対戦。春夏連続甲子園出場へ主将の明石は「相手うんぬんより自分たちの野球をするだけ」と、いつも通りのコメントで決意を語る。
選抜大会後の春季県大会は強力打線が振るわず、準々決勝で再々試合の末、春日部東に0-5で完封負け。「気持ちの面でも勝てなくて、自分たちは強くないと気付かされた」と副主将の笹川。屈辱的な敗戦がもう一度、原点に立ち返る良いきっかけになったようだ。
ここに来てチーム状態は上向いている。けがをしていた右腕涌本、左腕渡邊剛らが復活。佐藤、山口の両右腕も健在で投手陣は盤石だ。本番まで残り3週間。持ち前の強打だけでなく、冬から課題に掲げてきた機動力を絡め1点をもぎ取る攻撃パターンの確立を目指す。
選抜大会には2年連続で出場したが、夏の甲子園は2008年から遠ざかっている。それだけに明石は「今まで(夏は)負けてきた分、今年に全てをぶつけたい」と4年ぶりの優勝へ力を込めた。
◇春の王者気負いなし 南稜
春季県大会を制し初のAシードで挑む南稜は、初戦で栄東との対戦が決まった。遠山監督は「春に優勝した責任がある。どこと当たっても簡単には負けられない」。気負いはないものの言葉には力がこもった。
春の関東大会では、昨夏全国4強の作新学院(栃木)に惜敗。指揮官は「力を出し切った結果なので、しっかりと反省できた」と前向きに捉える。力不足を感じた投手力と打力の向上を現在図っている。これまでは守備をベースにそつのない野球で勝ち上がってきた。主将の白石は「自分たちの力で打って点を取れるようにしたい」と言うように強化ポイントは明確だ。
順当にいけば5回戦で昨年優勝の花咲徳栄、準々決勝では選抜大会8強の浦和学院などの強豪との対戦が予想される。「公立校が春だけだとは思われたくない」と白石。目標の2季連続優勝に向け、夏も南稜がまい進する。
◇一体感高まりV誓う 埼玉栄
1998年以来、2度目の夏の甲子園出場に燃えるAシード埼玉栄は、初戦の2回戦で浦和東の挑戦を受ける。主将の高橋は、「どこがきても自分たちの力を出すだけ。特に気にしていません」。自信がみなぎるコメントは、抽選会の前も後も全く変わらなかった。
ナインには今春の関東大会4強が追い風となっているようだ。練習中も3年生を軸に、いい雰囲気を醸し出し、大躍進の要因ともなった抜群のチームワークはさらに高まりを見せている。
本間、佐藤大ら多彩な投手を中心とし、堅守から攻撃につなげる必勝スタイルに変わりはない。扇の要でもある高橋は「負けた試合は守備のミスが出ている。。しっかり守って先制点を奪いたい」と力を込める。
この夏は、追われる立場となることにも意に介さない。高橋は「厳しい戦いにはなると思うが、強い気持ちを持ってやれば大丈夫。目標は甲子園です」と言い切った。
◇「常に冷静、諦めず」 春日部東
Bシードの春日部東が八潮を迎え撃つ。「常に冷静に、最後まで諦めず戦いたい」と主将の若月。3位に入った春の県大会では、浦和学院戦を含み引き分け再試合を二つものにした。中野監督は「普段やっていることができれば戦える。精神的に強くなった」とうなずく。
越谷西の監督時代に甲子園出場の中野監督が指揮を執る最後の夏。「周りが言うほど意識はない」とさらり。だが「ベスト8に入ればどこにでもチャンスはある」と虎視眈々。若月は「県を制覇し今までの感謝の気持ちを形で表したい」。指導者、選手、互いの集大成を笑顔で締めくくるつもりだ。
◇初戦突破で弾みを 川口
春は地区予選から強豪を連破して47年ぶりの4強入りを果たしたBシード川口。初戦の相手は地力のある武蔵越生に決まり、鈴木監督も「初戦と初戦へ入っていくまでのところが重要」と警戒した。
「もう一度引き締めるため、ゼロからやってきた」と主将の山下。練習量を増やし、緊張感も増している。関東大会でベンチから外れた左腕阿部が悔しさを糧に成長し、エース高窪に次ぐ存在として期待されている。
勝ち進めば4回戦で鈴木監督が3月までコーチを務めた大宮東と激突。春の地区大会初戦同様、勝利で弾みをつけたい。山下は「一戦一戦大事に勝ちに行きたい」と意欲を燃やしていた。
◇「甲子園にただいま」言う 花咲徳栄
連覇を狙う昨夏王者の花咲徳栄はノーシードながら県内随一の戦力。春季王者の南稜と同じブロックに入り、大きな歓声が巻き起こった。
春は県大会初戦の2回戦で川口に足をすくわれた。主将の小山は「秋に準優勝して、どこかに気の緩みがあった。あっという間に試合が進み、気付いたら負けていた」と敗戦を振り返る。
2年生中心の若いチームだけに、練習試合後のミーティングには例年以上に力を入れる。細かいプレーの一つ一つをボードやノートにまとめ、特長の緻密な野球に磨きをかけている。
岩井監督は「今は落ちている状態。追い込んでやり込んで、手放した時ふっとはじける」と期待をかける。投手陣は3年高橋、上田を中心に2年生も粒ぞろい。援護する打線も新たに4番に座った加藤を中心に穴がない。
「甲子園でただいまと言いたい」と小山。勝利に飢えた王者が頂点を目指して突き進む。
◇細部突き詰め決戦へ 春日部共栄
昨年準優勝の春日部共栄は、7年ぶりの優勝へ今年こそと意気込んでいると思いきや、主将の鎌田は「一戦一戦しっかり戦って、一番いい結果に結び付けられればいい」。程よく肩の力が抜けている。
春季県大会では準々決勝で南稜に延長十二回サヨナラ負けしたが「残りは夏だけしかない」(鎌田)と、すぐさま気持ちを切り替えたという。
オープン戦でチームは好調。青木、西沢の右左の二枚看板は課題としていた無駄な四球が減り、守備や攻撃にリズムが生まれている。あとは「走塁やバントなど、波のないところに波があった」と本多監督。細部を突き詰め、3週間後の決戦の時を迎えるつもりだ。
◇左右好打者に自信 聖望学園
ノーシードから3年ぶりの甲子園出場を目指す聖望学園が初戦を久喜北陽と争う。1年から夏の県大会を経験している主将の小林健は「夏は何が起こるか分からない。一つのミス、一球で決まる」と実感を込めた。秋は県4強。春はライバル校を意識し過ぎたのか、県大会初戦で足をすくわれた。
ここに来て状態は上がっている。ヒットより出塁。つなぎの意識が定着した。加えて「左に好打者が多いと言われているが、右にもいます」と小林健は自信たっぷり。歯車がかみ合いだした聖望学園。「まずは一戦一戦。最後は浦和学院を倒したい」と昨秋の県準決勝で逆転サヨナラ負けを喫した相手の名前を出した。
◇連合チーム、晴れ舞台へ雰囲気良好
福岡、自由の森、上尾鷹の台の3校が連合チームを結成し大会に挑む。総勢13人。主将は福岡の前田が務める。同校には2人しか部員がいない中、顧問の手を借りながらノックや打撃練習などに取り組んできた。それだけに「(大会に)出られないと思っていたので、すごくうれしい」と素直に喜ぶ。
全体で練習できたのはまだ2回。だが上尾鷹の台2年の大草が「(先輩が)気軽に話し掛けてくれる」と雰囲気は良好だ。今後は練習試合も予定。実戦の経験を積んで大会に備える。前田は「野球が好きで一生懸命やってきた」。晴れの舞台でその思いを思い切りぶつけてほしい。
◇「出場うれしい」 レベルアップ励む 鶴ヶ島清風・越生
鶴ヶ島清風7人、越生5人の部員で構成された連合チームからは、鶴ヶ島清風主将の木村が代表して抽選会に参加。「団結できるか心配だけど、出場できてうれしい」と笑顔を見せた。
両チームは6月上旬から合同練習を開始。野球初心者も多いが、土日は越生高のグラウンドに集まりレベルアップに励んでいる。捕手を務める木村は「どんな状況でも諦めずに最後まで声を出したい」と意気込む。
チームを束ねる越生の田島監督は「野球が好きでたまらない子たち。お互いに感謝し合って試合をしてほしい」と県のモデルケースとして、悔いの残らないプレーを期待した。
◇選手宣誓は慶応志木の大桃主将
選手宣誓の大役を引き当て、大歓声を浴びた慶応志木の大桃主将。決定直後は「予想していなかった。プレッシャーを感じる」と緊張した様子だったが、一息つくと「一人しかできないことをやらせて頂けるのは光栄」と決意の表情を見せた。
「とる方の手」と験を担ぎ、利き手と逆の左手でくじを引いた。仲間から「面白いところを引いてこい」と送り出され、見事期待に応えた。
選手たちの横で抽選を見守った柴田監督は「春はチームとして不調だった。選手が一つになる大きなきっかけになる」と手放しで歓迎。内容は一任し「最後にチェックする程度」と選手たちを信頼している。
「自分一人ではなく、チームの言葉として宣誓したい」と大桃。文面は3年生18人で考え、チームが掲げる『元気』のフレーズを入れるという。「甲子園を目指す」と力を込める主将を中心に、チームの結束を強めて夏に臨む。
(埼玉新聞)