65回の歴史において、史上初の秋関東3連覇を果たした浦和学院。ここ数年、関東で無敵の強さを誇っている。その強さを探ると「振ること」への徹底的な取り組みがあることがわかる。
山根君が言う。「冬場は全員が1日合計2000スイングを振るんですが、マシン以外の練習はすべて素手で振ります。自分は指の感覚を大事にして、ハンドリングで打球の方向を操作します。意識しているのはセンターから右中間方向。ライナー性の低く速い打球を意識しています」。
指の感覚。手のマメはつぶれ、グリップを血だらけにすることもあると言うが、“本能”の打撃で、昨夏の県大会で5割8分3厘。12打点というハイスコアで記録した。旧チームの先輩には、佐藤拓也君、笹川晃平君という高校全日本の好打者がいたが、その2人を差し置いて「4番」に座り、結果を残した。
甲子園でも勢いは止まらない。昨年の春・夏の甲子園通算打率は3割8分2厘。5打点。チーム一の高数字となる。打撃を担当する中村要コーチに聞くと「崩されない打撃ができるので、アベレージを残せている。山根の場合は速い直球にも、緩い変化球にも対応できる。柔軟性、タイミングの取り方に“幅”を持っています。ヘッドが下がらずスムーズに体重移動ができている」と長所を分析する。
本人は「4番の打順が好きです。ランナーを大量にかえせる可能性があるし、その中で打てたときの喜びが大きいからです!」と目を輝かせて話す。甲子園で活躍できる理由は、重圧を感じない前向きな性格にもあるようだ。
出身は広島県。青崎小時代はソフトボール部のピッチャーで全国制覇。中学時代は「ヤングひろしま」でジャイアンツカップベスト8。華やかな球歴を歩んできた。
この秋の打順は3番。だが自身3度目の甲子園で「4番」を諦めているわけではない。2月に修学旅行で豪州に行くが、そこでもしっかり素振りをし、センバツに備えるという。大きいのは狙わない。高校通算本塁打数3という数字に「つなぐ打撃」の意識が表れている。欲しいのはアーチではなく、打点だ。
「全国に出るだけじゃなく、優勝したい」。
浦学の“甲子園男”が再び聖地に降臨する。