(26日・県営大宮)
第12日は準決勝が行われ、Aシード花咲徳栄とCシード春日部共栄が27日の決勝に勝ち進んだ。花咲徳栄は2年連続3度目、春日部共栄は6年ぶり8度目の進出。両校の決勝での対戦は初めて。
春の県大会優勝の花咲徳栄は選抜大会代表のDシード浦和学院に6-2で快勝した。四回、新井と広瀬の適時打で2点を先制。五回に同点とされたが、六回に北川の二塁打で勝ち越し、その後も着実に加点した。先発北川は14安打を浴びながら2失点で完投。浦和学院は五回に5連打で同点に追い付いたが、14残塁の拙攻が痛かった。
昨秋の関東大会8強の春日部共栄は昨夏王者のノーシード本庄一を5-2で退けた。一回に相手の失策で2点を先制すると、三回には須田の左越え2ランで加点。七回に千葉の適時打でダメ押した。先発竹崎は6安打完投。本庄一は4点を追う六回に岡野、坂本の連続適時打で2点を返したが、3失策が響いた。
決勝は午前10時プレーボール。花咲徳栄は10年ぶり2度目、春日部共栄は6年ぶり5度目の栄冠を目指す。
◇拙攻続き猛威に影 浦和学院
4点を追う九回2死一、三塁、笹川のバットが空を切り、春夏連続甲子園を目指した浦和学院の戦いが幕を閉じた。昨秋の関東大会を制した時の勢いはなく、投打ともにちぐはぐなまま花咲徳栄に力負け。森監督は「打線は終始積極的に打ったが、点数に結び付けられなかった。投手も踏ん張り切れなかった」と淡々と敗因を並べた。
最大の敗因は14安打で14残塁の拙攻。一、三回の先制機で主軸が倒れた。五回には1死から5連打し、2得点で同点としたが、続く2死一、二塁で凡退。3点を追う七回には3四球で2死満塁としながらあと1本が出ず、九回には1死から3連打を放ちながら走塁ミスで好機をつぶした。
各打者は花咲徳栄の北川の球を捉えていた。3番小林は「打撃はうちが上だった」。5番日高は「打てない投手ではない」と言うのも強がりではない。だが、ここぞで打てなければ強力打線とは言えない。
投手は選抜出場の立役者となった佐藤が本調子ではなく、先発は左腕中山だった。序盤は力投したが中盤につかまり、六回途中で3失点。継投したのは公式戦初登板の左腕村田で失点を重ねる。エースがマウンドに立ったのは八回からだった。
選抜で初戦敗退し、春の県大会では3回戦で敗退。夏はその雪辱を期して臨んだはずだった。森監督は「選手たちは春に負けた悔しさを基にやってきた。勝たせてあげられなかった」と選手をかばった。
これで夏の甲子園を逃したのは3年連続。2008年まで3連覇と猛威を振るった“ウラガク”の盛夏に影が差しているのか。
◇重圧の夏、涙で幕 浦和学院
主将の目は真っ赤に腫れていた。相手を上回る14安打を放ちながら14残塁の拙攻で敗退。「悔しい。1番佐藤が毎打席チャンスをつくってくれたのに中軸で仕留め切れなかった」。春夏連続の甲子園を逃した3番小林は自分を責めた。
一回1死二塁で中飛、三回1死一、二塁では右飛に倒れ、いずれも先制の好機を生かせなかった。「アウトになったが手応えはあった」。思いに結果が付いてこない。
1年秋からレギュラーに名を連ね、主将として迎えた“3年の夏”は重圧との戦いだった。準々決勝までの5試合で打率は2割1分4厘。本来の姿からほど遠い成績に、「気持ちは誰にも負けてないのに」と実感がにじむ。
それでも五回には左前適時打で同点へ口火を切る。「打ったのはチェンジアップ。落ちる球を狙ってた」と納得の一打だった。
選抜大会出場は小林にとって夏への通過点だった。「3年間重ねた練習もみんな最後の夏のため。あと二つまできたのにふがいない」。涙を必死にこらえる姿に、夏にすべてを懸けた主将の姿があった。
◇右に左に4安打 1番佐藤が奮闘 浦和学院
1番バッターの2年佐藤が仕事を果たした。準々決勝まで2割台の打率ながら、右に左に4長短打を放ち、塁上を駆け回った。「1番バッターとして、チャンスをつくることが自分の役目」と佐藤。
昨秋のエースながら本調子ではなく、この日も八回からマウンドに立ったが、1失点を喫した。「絶対に点を与えない気持ちでマウンドに上がったが…」と肩を落とす2年生右腕。「来年こそ、全国制覇という結果を残す」と雪辱を期した。
◇投球に気負い 悔しさにじむ 浦和学院
「自分の弱さが出た」。先発の中山は試合後、ベンチ裏でおえつした。
四回、注意していた大塚に二塁打を喫し、この回、4安打を浴びて2点を許した。五回に同点に追い付くと、六回四球で出した先頭の広岡がホームを踏み、勝ち越された。
「同点にしてもらい、気負い、腕が振れなくなった」と中山。胸元を突き、緩急をつけた投球で相手打線を翻弄する策を描いていた。「徳栄打線はコースに逆らわず、しっかり打ってきた」と悔しさをにじませた。
◇好機に打てなかった 浦和学院・沼田三塁手
(一、三、七回の好機に一打が出ず)チャンスが回ってきたのにヒットが打てなかった。クリーンナップの自分が足を引っ張ってしまった。
◇打撃の特徴出せず 浦和学院・日高一塁手
(五回に適時打を放つが敗戦)とにかくランナーをかえそうと必死で食らいついた。でも相手がいい投手。打撃のチームの特徴が出せなかった。
◇冷静さ取戻し5番新井先制打 花咲徳栄
5番新井が先制打を放ち、チームを決勝へ勢い付けた。
新井は一回、2死一、三塁の好機に空振り三振。冷静さを欠いてしまい、高めの直球に手を出してしまった。だが、すぐに「三振して吹っ切れた」と気持ちを切り替えた。無心で臨んだ四回無死一、三塁の好機、直球を左前に打ち、先制点をもぎ取った。
新井は「チームの期待に応えられた」と安堵の表情。「全力でプレーして甲子園へ行く」と決勝戦に向け気合を入れた。
◇3安打でけん引 雪辱の優勝誓う 花咲徳栄
昨夏の決勝で敗れた悔しさを知る3番大塚がバットでチームをけん引。3安打で通算打率も5割に乗せた。
真骨頂は3-2の七回。無死二塁から浦和学院・村田のカーブを「うまく打てた」と左前に運び貴重な追加点。三塁に進むと新井がスクイズ。「投手の前だったが、自分のスタートが切れた」と間一髪で生還し、足も光った。
次は1年越しの決勝だ。「今年は絶対に勝ちます」。雪辱を晴らすべく言葉に力がこもった。
◇仲間信じ投げ抜く 花咲徳栄
最後の打者を空振り三振に打ち取ると、普段は冷静なマウンドの北川が声を上げ、グラブをポーンとたたいて喜んだ。
序盤から変化球が高めに浮き、苦心の投球になった。「打たれるのは仕方ない。低めに球を集めよう」と粘りを見せた。五回に2失点し同点に追い付かれたが、六回に左越えタイムリー二塁打を放ち、自らのバットで勝ち越した。
ただ浦和学院打線の圧力も相当なもの。3点差の七回には「打たれるのが怖くなった」と3四球で二死満塁のピンチ。それでも「絶対に逃げるな」という岩井監督や、守備陣の「打たれるのを怖がるな」の言葉に励まされ、最大のピンチを切り抜けた。終わってみれば、被安打14も2失点。143球の力投だった。
新チーム結成後は「気持ちが弱かった」という右腕。今夏は登板のなかった3回戦を除き、ほぼ一人で投げている。「投手が大勢いる中で投げさせてもらっている。次もいきます」。10年ぶりの頂点は、たくましく成長したエースが導く。
◇追い続けた王者倒す
どんなにリードしていても、花咲徳栄ナインの胸の中は「ドキドキ、ハラハラ」。4点差はあったが、相手はいつ爆発してもおかしくない浦和学院打線。九回裏1死から3連打を浴び、心臓の鼓動はさらに高まった。
しかし、相手の走塁ミスを見逃さず冷静に刺すと、エース北川が最後の打者を三振に打ち取りゲームセット。2年連続の決勝進出は、これまで夏の大会で一度も勝ったことのなかった浦和学院からの白星で決めた。
「格別なものがある」と岩井監督。「埼玉の王者は浦和学院。目指してきて強くなれた部分もある」と激闘を交えた相手に感謝した。その後、驚いたような、そしてうれしさのこもった表情で「歴史の1ページ目をこいつらが飾ると思わなかった」と話した。
四回に2点先制したが、五回裏にエース北川が5連打を浴び同点に追い付かれる。流れは浦和学院に傾きつつあった。
五回終了後のグラウンド整備中、岩井監督は選手を集め言葉を掛ける。「ここで追いすがってくる相手は見事。こうでなければこれまで追い続けてきた意味がない」。選手たちは奮起した。
迎えた六回1死二塁から北川が左翼線へ適時二塁打を放って勝ち越し。さらに七、八回にも加点し勝利をぐっと引き寄せた。浦和学院のプレッシャーに耐えて、勝利をもぎ取った選手たちに岩井監督は「目に見えない何かが出ている」と成長を認める。
2年連続の決勝。昨年はサヨナラ負けした。主将の広岡は「次勝たないと意味がない。岩井先生を信じて3年間やってきたことを出し切りたい」。前回の悔しさを晴らし、10年ぶりの栄冠を手に入れる。
■7月26日(準決勝)
花咲徳栄
000201210=6
000020000=2
浦和学院
【浦】中山、村田、佐藤-森
【花】北川-白石
▽二塁打 大塚、北川、田中、長尾(花)佐藤(浦)
【浦和学院】
⑦1佐 藤4-4-0
④ 竹 村4-2-0
⑥ 小 林4-1-1
⑤ 沼 田5-2-0
③ 日 高4-2-1
② 森 4-1-0
⑨ 笹 川5-1-0
⑧ 石 橋4-1-0
① 中 山2-0-0
1 村 田1-0-0
7 荒 井0-0-0
H 小 野1-0-0
7 室 町0-0-0
(打数-安打-打点)
▽投手成績
中山 5回1/3、被安打7、2奪三振、与四死球4、失点3、自責点3
村田 1回2/3、被安打2、0奪三振、与四死球0、失点2、自責点2
佐藤 2回、被安打2、2奪三振、与四死球0、失点1、自責点1
花4460009
振球犠盗失併残
浦24101014
花咲徳栄は2-2の同点に追い付かれた直後の6回、1死二塁から北川の左越え二塁打で勝ち越すと、7、8回にも新井のスクイズなどで確実に追加点を奪った。エース北川は14安打を浴びながらも粘りの投球で2失点完投。浦和学院は5回の5連打による2点にとどまり、中山-村田-佐藤とつないだ投手陣を援護できず。