第42回明治神宮野球大会第3日は25日、神宮球場で高校と大学の準々決勝4試合を行い、高校の部では浦和学院(関東)が愛工大名電(東海)に1-8で敗れ、2年連続の準決勝進出を逃した。
浦和学院は、1点リードの八回、1死二、三塁から愛工大名電の2番松原のスクイズが野選となり同点に追い付かれると、続く3番荒木の右犠飛で決勝点を奪われた。その後も投手陣が踏ん張れず、九回には6安打を浴び5失点した。
打線は7安打放ったが、要所でバントミスするなどの拙攻が響き、四回に木暮の適時二塁打で入れた1点にとどまった。
◇屈辱を成長の糧へ
「関東の代表として、非常に情けない思いでいっぱい」。森監督の言葉が試合の全てを物語る。浦和学院は八、九回だけで計8失点し逆転負け。
関東連覇の原動力となった必勝リレーが裏目に出た。1-0の八回、ここまで無失点の涌本がバント安打と盗塁で1死二塁。迎えた打者に2ボールとした場面で左横の渡辺にスイッチした。だが、渡辺が四球を与えると重盗、スクイズが野選となり同点。さらに犠飛、中前打で3点を奪われた。
攻守で強豪校のスピードに苦戦した。最速145キロを誇るプロ注目左腕・浜田の前に、安打は出るが得点は四回に木暮の二塁打で挙げた1点のみ。バント失敗が2度、高めのボール球に空を切ったり、詰まらされることも度々。守備でも愛工大名電伝統の足を絡めた攻撃は想定済みながら、5盗塁4犠打を許した。捕手林崎は「ゲームスピードに頭が整理できず気負ってしまった」と素直に認めた。
だが全国のレベルを痛感できたことは、この冬の肥やしになる。「この負けを受け止め、春には変わった浦学の姿を見せる」と主将の明石。屈辱からはい上がるナインに期待したい。
◇8回途中無失点 来春へ決意の82球 涌本
関東大会で“1”を背負いながらも登板がなかった涌本が、神宮のマウンドで躍動した。緩急を駆使し打者を翻弄。130キロの直球と110キロに満たない縦のカーブ、そしてツーシームも有効に使った。負け投手にはなったが、8回1死まで3安打無失点に抑えたのだから立派だ。
この秋、同じ1年生の山口、渡邊が成長し、優勝の喜びの中にも悔しさを感じていた。「絶対的エースとして1人で投げ抜きたい」。来春のさらなる大舞台へ、決意を込めた背番号18の82球だった。
◇足で揺さぶり終盤に8得点
愛工大名電は足で揺さぶって4強入り。7回まで2安打だったが、0-1の八回1死一、二塁から、ノーサインという鮮やかな重盗で好機を広げ、スクイズと犠飛で試合をひっくり返した。
左腕の濱田は初戦に続く1失点完投とチームの総合力を示した。倉野監督は「嫌な展開だったが、選手が自分で動いてくれた。ヒットが打てなくても点の取り方が多彩」と自信を深めていた。
(埼玉新聞)
◇全国で通用する選手に--浦和学院・林崎龍也捕手(2年)
1点リードで迎えた八回表、1死二、三塁。ホームに滑り込んで来た選手の背中に、かぶさるようにタッチした。土ぼこりが舞う中、セーフの判定に「まさか」と両手を広げ空を仰いだ。その間に打者走者に進塁を許し、追加点につながった。「冷静に対処しなきゃいけないのに、熱くなってしまった。自分の甘えが勝負どころに出た」
チームの投手陣はタイプが異なる6人。全員のデータが頭に入っている。この日も投手が代わる度、マウンドに駆け寄った。しかし次々と盗塁やスクイズバントを仕掛けてくる相手の戦術に頭がついていかず、気持ちを切り替えられなかった。
チームは関東大会での優勝後、練習に身が入らなかった。試合後、目を赤く腫らしながら「自分たちが強いと勘違いしていた。今のままでは全国では勝てない。この冬、全力で練習し全国で通用する選手になる」と誓った。
◇課題多く立て直す--浦和学院・森士監督
情けない試合だった。先発・涌本の調子はよかったが、関東大会では抑えてくれた他の投手陣が防戦一方だった。守備の乱れでチャンスを作られ、相手の機動力を封じられなかった。課題は多く、冬の練習で立て直していく。
◇1球への執念欠く--浦和学院・明石飛真主将
1球に食らいつく姿勢から負けていた。関東大会優勝後、1球に対するこだわりが欠け、それが野球にも出た。私生活から見直し、どんな場面でもあわてず自分たちの野球ができるようにしたい。
(毎日新聞埼玉版)