◇励まし、指摘し合い成長
グラウンドに面した野球部の食堂に、昨年11月の明治神宮野球大会1回戦(浦和学院-愛工大名電)を報じた新聞記事のコピーが張り出されている。全国10地区の秋季大会の各優勝校が出場するこの大会に、浦和学院は関東代表として臨んだ。結果は1-8だった。
コピーには「屈辱的大敗」の手書きの文字が添えられている。明石飛真一塁手(2年)が試合翌日に書き込んだ。今月13日の練習前、その明石一塁手の声がグラウンドに響いた。「おれたち日本一になるためにやってるわけだよな。だったら一人一人がもっと考えながら練習しよう」
今回を含め、春夏合わせて18回の甲子園出場を誇る「浦学(うらがく)」野球部の練習は厳しい。午前7時の4~7キロのランニングに始まり、授業のない休日の練習時間は10時間を超える。
14日午後6時すぎ、照明のついたグラウンドで昨年春から導入した身体トレーニングが始まった。全員が4列になって前を向き、田中昌彦コーチ(50)のかけ声に合わせて四つんばいのまま走ったりジャンプしたり。バーベルなどでは鍛えられない筋肉を動かす厳しい練習法だ。
トレーニングの終盤にさしかかったころ、ともに昨春のセンバツに出場した明石一塁手と佐藤拓也選手(2年)が後ろを向き、ほかの選手と向かい合うように練習を始めた。「足、全然上がってねえぞ」「もっと声出せ」。2人が声を張り上げると、他の選手たちに笑顔が広がる。「おっしゃあ」「がんばろうぜ」。あちらこちらから声が上がった。佐藤選手は「自分が取り組んでいる姿勢を見せることでチームの雰囲気を変える」と話す。
このチームの特徴は、練習中に選手が互いに課題を指摘し合ったり、励ましたりすることだ。走塁の練習中、笹川晃平外野手(2年)が選手を集め、「打球を意識して目線に注意しよう」と声を上げた。本番のプレーさながらに練習しようとの考えからだが、笹川外野手は「仲間に指摘することで自分も怠けられなくなる。『勝つためにどうすればいいか』とチームの意識も高まる」と分析する。
笹川外野手も明石、佐藤両選手とともに昨春センバツに出場した。中村要コーチ(38)は「3人とも甲子園を経験し責任感が芽生えてきた。自分のことだけではなく、他の選手も引っ張っていこうとしている」と見る。
センバツ出場が決まった1月27日、森士(おさむ)監督は「2年連続で出させていただく。やるからには日本一」と選手らに発破をかけた。甲子園常連校が、悔しさを糧に着実に変わり始めている。「日本一」を目指すチームの軌跡を3回に分けてリポートする。
(毎日新聞埼玉版)