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浦和学院10年ぶり8強 甲子園20勝目 30日に大阪桐蔭と対戦

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【写真】8回表、浦和学院2死満塁、山根の右前打で生還しガッツポーズする二走佐藤(左)と三走緑川=27日、甲子園(埼玉新聞)

 第84回選抜高校野球大会第6日は27日、兵庫県西宮市の甲子園球場で1、2回戦3試合を行い、浦和学院は2回戦で三重に2-0で競り勝ち、2002年以来、10年ぶりの8強進出を果たした。この勝利で甲子園春夏通算20勝に到達。大会第9日の30日、第1試合で20年ぶりのベスト4入りを懸け、大阪桐蔭と対戦する。

 浦和学院・森監督の「ロー(スコア)ゲームになる」との予想通り、試合は浦和学院・佐藤と三重・三浦の両エースの投げ合いとなった。1回戦で11安打10得点した強力打線は、三浦の140キロを超える直球と、キレのある変化球にてこずり、六回まで無安打に抑えられていた。

 だが、六回に風向きが変わり始める。この回、2四球で2死一、二塁をつくり揺さぶると、七回には佐藤のチーム初安打となる二塁打を皮切りに1死満塁。後続は凡退したが、球数を投げさせ、徐々に相手の制球を乱していった。

 0-0のまま迎えた八回がハイライトだった。緑川が四球を選ぶと1死後、林崎が送りバントを決め2死二塁とし、佐藤は敬遠で歩かされたものの、笹川が死球で二死満塁。打席に立ったのは1回戦の8番から5番に抜てきされた山根。「初球から振ることを決めていた」と、初球の内角高め直球を右前にはじき返し、値千金の2点タイムリーを放った。

 2試合連続で先発マウンドを託された佐藤は、好調だった初戦をさらに上回る出来だった。直球、多彩な変化球の球威、制球とも申し分なく無四球で散発3安打。三塁を一度も踏ませず、完封勝利を飾った。

 わずか2安打ながら、少ない好機を生かし、エースの完璧な投球で10年ぶりのベスト8。森監督は「非常に喜ばしいこと」としながらも、「最後まで甲子園を満喫したい。偉そうなことを言えば、まだまだ通過点」と満足はしていない。関東王者の冒険はここからが佳境だ。

◇浦学、2安打 しぶとく8強 三重との投手戦制す

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【写真】8回表浦和学院2死満塁、山根が決勝の右前2点タイムリーを放つ(埼玉新聞)

 浦和学院が2安打ながらしぶとく2点をもぎ取り、エース佐藤が散発の3安打完封で三重に競り勝った。

 浦和学院は0-0の八回、3四死球で2死満塁とすると、山根が右前に2点タイムリーを放った。三重の三浦の球威ある直球、スライダー、チェンジアップに苦しみ六回まで無安打。しかし終盤、制球の乱れをしっかりと見極め、少ない好機を生かした。

 テンポ良く投げた佐藤は直球、変化球の制球、キレともに良く、三塁を一度も踏ませない完璧な投球だった。

◇抜てき山根 決勝打

 内角高めの直球を振り抜いた。手応えは抜群。打った瞬間に安打を確信した山根は、感触の残る右拳を思わず握り締めた。八回、均衡を破る右前2点タイムリー。息詰まる投手戦の決勝打となった。浦和学院が10年ぶりの8強入りを決めた。

 1回戦の8番打者から、つなぐ姿勢と好調さを買われ5番に抜てきされた。0-0の八回、2死二塁から3番佐藤が敬遠で歩かされ、続く4番笹川が死球で満塁の絶好機に打席が回ってきた。ガチガチに硬くなっても不思議でない場面。だが、度胸は据わっていた。

 「死球の後はストライクを取りにくる。初球の真っすぐを必ず振り抜く」。何の迷いもなく、初球の直球をフルスイング。多少詰まったが気持ちで右前に運んだ。「自分の一打で、試合を決められてうれしい」。屈託のない笑顔を見せた。起用がズバリ当たった森監督も「気持ちで一本出してくれた」とうなずいた。

 1回戦で11安打10得点した強力打線が六回まで無安打に抑えられていた。五回終了時点で三重のエース三浦の投球数はわずか60。

 それでも六回には初めて得点圏に走者を進めて22球。七回は佐藤が二塁打を放ち、1死満塁は逃したものの21球を投げさせた。徐々に相手の球威、制球力を奪い、ボール球をしっかりと見極めた。

 八回は3四死球で得た好機を逃さず、きっちり仕留めた。三重の3安打より少ないわずか2安打だったが、勝負どころを逃さなかった。

 大勝後の接戦をものにした。日替わりヒーローも出現。勝つごとに頼もしさを増し、森監督就任1年目の1992年以来、20年ぶりの4強入りを懸け、強敵・大阪桐蔭に挑む。

◇「チーム第一に」 緑川

 無安打ながら好機につながる2四球を選び、きらりと光る活躍を見せた9番緑川。「どんな形でも塁に出られれば最高。2四球でチームに貢献できた」とうなずいた。

 六回は2死から出て暴投で二進し、この日最初の得点機を演出。この回は無得点だったが、八回は先頭で四球を選び、2死満塁から山根の安打で先制のホームを踏んだ。「相手投手は塁に出ると荒れてくる」と狙い通りの出塁。「次もチームを第一に、できることをしっかりやりたい」と我を捨ててでも働く覚悟だ。

◇自分たちの野球を 浦和学院・明石一塁手

(主将)「甲子園でこれだけ長く試合ができるのが幸せ。ここまで来ると全チームが強い。相手を意識するより自分たちの野球をやる。打線は打ち気にはやって狙い球を絞れなかった。低い打球を打つことを心掛けたい」

◇悪い直球2球だけ 浦和学院・林崎捕手

(佐藤を好リード)「自信を持って最高の球を投げてくれたので、自分の配球ミスで負けさせられないなと思った。カーブでカウントが取れて、低めに来ていた。直球は切れも制球もよかった。シュートする悪い球が2球ぐらいしかなかった」

◇とにかく打ちたい 浦和学院・石橋中堅手

(一回に飛球を好捕も途中交代)「森先生に打てなくていいから守れと言われていた。あれは捕って当たり前。打てないのが悔しい。次もいい投手。とにかく打ちたい。思い切りやって中途半端なことはしないようにする」

◇「1回戦の疲れで自分の責任」と涙 三重・三浦

 三重の三浦は2安打しか許さなかったが、2失点。得点を許した八回の場面について「内角を狙った直球が少しだけ中に入った。自分の責任」と涙ながらに話した。

 開幕試合となった1回戦では5失点完投。「1回戦の疲れが出た」という六回以降に制球が乱れた。

 「夏までに終盤も崩れないスタミナをつけて戻ってきたい」と強い口調で出直しを誓った。

◇1点も取れず完敗 三重・沖田監督

「1点も取れなければ、勝てない。完敗です」

◇いい当たりなし 三重・小林捕手

(2安打)「結果的に2安打だけど、いい当たりがなかった。勝ちたかった」

◇佐藤完璧 3安打完封

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【写真】三重打線を3安打無四球完封した浦和学院のエース佐藤(埼玉新聞)

 投げるたびに進化している。1回戦で完投し、復活を印象付けた浦和学院のエース佐藤が、3安打9三振無四球で完封。自身、甲子園3試合目の登板でベストピッチングを披露した。お立ち台に上がったヒーローは「本当に最高です」と、高校生らしく素直に喜んだ。

 序盤から三重の三浦との投手戦で、我慢の投球だった。先にピンチを迎えたのは佐藤。三回1死二塁とされたが、9番を直球、1番をカーブで連続三振。五回無死一塁では捕手林崎がバントを素早く処理し併殺にした。

 「森先生から僅差のローゲームだと言われていた。我慢して粘り強く投げよう」。自身の二塁打から迎えた七回1死満塁の好機をつぶした直後、裏の守りでは直球で空振り三振を奪い三者凡退。「力が入った」と珍しくマウンドでほえた。先制した後の八回2死二塁のピンチも外角低めの直球で見逃し三振にした。

 立ち上がりが悪い癖を修正するため、ブルペンでいつもより10球多い40球の投球練習をするなど工夫も。捕手林崎が「直球も変化球も打たれる感じがしなかった。頼もしく見えた」と大絶賛するほどのマウンドだった。

 ほぼ満点の投球にもかかわらず、自己評価は「70~80点ぐらい」とかなり厳しめ。しかし、それはまだ伸びる余地があるということ。果たして右腕はチームにどこまで導いてくれるのだろうか。

◇力んで反省、次こそ 西岡

 六回の守備から2試合連続で途中出場した西岡は「めっちゃ悔しい」と唇をかんだ。七回2死満塁、絶好の先制チャンスで回ってきた自身の甲子園初打席で、直球に空振り三振。「気持ちは舞い上がっていなかったけど、打ってやろうと力んだ」と気落ちしていた。

 代打1番手でもあり、守備固めとしても起用できる。次の大阪桐蔭戦でも出場機会は巡ってくるはず。「打てなかったけど、打席に立てたのは大きい。次は焦点を合わせて、ボールをよく見ていきたい」と向上を誓った。

◇接戦制し「よく守った!」ナイン成長 感激呼んだ

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【写真】グラウンドの選手たちに声援を送るアルプス席の浦和学院応援団=27日、甲子園球場(埼玉新聞)

 10得点で快勝の後は投手戦を制して粘り勝ち。27日、第84回選抜高校野球大会2回戦で浦和学院は三重を2-0で下し、10年ぶりのベスト8入り。約800人が足を運んだ三塁側アルプススタンドは、スクールカラーの真っ赤に染まり、1回戦以上の熱気に包まれた。

 8強入りを懸けた試合は1点を争う息詰まる投手戦となった。打線は六回まで無安打に抑えられていたが、一回の守備では中堅手の石橋選手がファインプレー。五回にも捕手林崎選手の好守備でピンチをしのぐなど、無失策でエース佐藤投手を支えた。

 両チーム無得点で迎えた八回表の攻撃。2死満塁のチャンスをつくった。打席には1回戦の8番から、この日5番に抜てきされた山根選手。

 アルプス席での応援団に交じり大きな声援を送っていたのは、山根選手と控え投手の伊藤選手が中学時代に所属していた広島県の硬式野球チーム、ヤングひろしまの選手ら31人。主将の水岡拓巳君(14)は「2人ともプレーがすごかった。活躍してもらえるようにしっかり応援したい」。少年団から山根選手と同じ経歴だという浅尾航太君(14)は今日27日が誕生日。「山根さんに本塁打を打ってほしい。それが僕の誕生日プレゼント」と期待し、試合を見守った。

 ヤングひろしまの選手の応援が届いたのか、山根は2点タイムリーを放ち、待望の先制点。これが決勝点となった。

 3安打9三振無四球で完封勝利を飾った佐藤投手の父、勝美さん(47)は、「去年の春から調子を崩して、1年間我慢してきたことが今日の投球につながった。精神的に強くなった」と感激している様子。主将の明石飛真一塁手の父、守弘さん(41)は、「ハラハラドキドキした。みんなでよく2点を守ってくれた。(優勝まで)あと三つ。どうにか一戦一戦勝って、埼玉に優勝旗を持って帰ってきてほしい」と語った。

 次はいよいよ準々決勝。好投手と強力打線を擁する大阪桐蔭を乗り越えれば、その願いも現実味を帯びてくるはずだ。

(埼玉新聞)

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