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センバツ初V浦和学院・桜咲く(番外編)心も磨いた選手たち

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【写真】初優勝を決め、マウンドで人さし指を突き上げて喜びを爆発させる浦和学院ナイン。その姿を見て、ほほ笑む森監督(右端)=3日、甲子園球場(埼玉新聞)

 記者冥利(みょうり)に尽きる。埼玉県勢45年ぶりの快挙の瞬間をこの目で見て、この手で取材させてもらった。浦和学院野球部に同行し3季連続の甲子園。地元紙の記者として、こんなに幸せなことがあるだろうか。

 浦和学院が悲願の初優勝を達成し、他社の記者から「おめでとうございます」と言われ、社に戻ると、45年前の大宮工の優勝を知る人は誰もいなく、先輩記者たちにはうらやましがられた。

 だが正直言うと、いまだに実感が湧いてこない。

 甲子園では浦和学院の強さばかりが際立ち頂点まで駆け上がったのに、なぜそう感じるのか?思い返してみると、この冬、苦しんでいた彼らの姿を目の当たりにしてきたからだと思う。

 2月のある日、こんなことがあった。

 普段通り、練習の取材をさせてもらいに同校グラウンドを訪れた。練習の開始時間は過ぎているが、選手の姿はない。グラウンド脇の食堂に森監督が一人座っていた。

 「石井君悪い、今日は練習しない。とても練習できる状態じゃないわ」

 選手たちは部室の掃除をしていた。その後、身の回りの清掃や道具磨きなどを行い、本当に練習せず一日が終わった。

 今チームはよく怒られていた。森監督は自覚のない行動、仲間の思いを裏切る行為は決して許さない。ユニホームを着させてもらえず、練習さえもさせてもらえない日も少なくなかった。頭では分かっているのに自分の気持ちをうまく表現できず、涙を流している選手もいた。

 今の時代に、薄れてきている自己責任と仲間意識。「こういうことを妥協せずにやっている。いざって時に、何とか人の思いに応えようと成果を挙げる。そこが、うちが結果を出せている原動力じゃないかな」。森監督の言葉に、浦和学院の強さの秘密を垣間見ることができた気がする。

 堂々と戦う選手たちの姿はたくましかった。でも歓喜の瞬間、少しぎこちない喜び方が浦和学院ナインらしかった。優勝監督インタビューでお立ち台に上がった森監督、あの至福の表情は忘れない。信じてきたこの道に間違いはなかった。

 ウラガク、優勝おめでとう。

(埼玉新聞)

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