◇プレーから精神面まで |
2年ぶり10回目のセンバツ出場を決めた浦和学院。昨夏で「引退」した後も新チームの後輩たちを支える3年生たちがいる。「学生コーチ」として選手のサポートを続ける高橋友人(ゆうと)君(3年)もその一人。「『全国』で後輩たちを勝たせてやりたい」とナインを甲子園へ送り出す。
高橋君は「真剣に野球をやるなら浦学だ」と、大舞台での活躍を夢見て同校に進学。憧れの野球部に入ったが、1年生の夏、練習中に持病の腰椎(ようつい)分離症が悪化し、戦線離脱を余儀なくされた。
「なんで俺だけ……」。思うようにプレーできない焦りと不安で一時は「部を辞めたい」とも思った。そんな中、森士監督から「コーチとして支えてくれないか」と持ち掛けられた。「持病がある以上、選手を続けるのは難しい。でも、浦学の野球には関わっていたい」。覚悟を決め、2年生の3月から学生コーチに就任した。
選手たちにアドバイスしたり、監督をサポートしたりする縁の下の力持ち。後輩にはプレーだけでなく、日ごろのあいさつの仕方や野球に取り組む姿勢も指導する。「自らプレーできない悔しさはあったが、自分のアドバイスで選手たちが成長したと感じられた時は本当にうれしかった」と振り返る。
学生コーチとして臨んだ昨夏の県大会はまさかの3回戦負け。このタイミングで3年生は本来、引退するが、コーチとしてチームに残り、後輩たちを支えてきた。「野球をやるのは誰のためでもなく、自分自身のため。選手たちにはプレーでも練習でも、主体性を発揮してほしい」と望んでいる。
プレーヤーとしての役割を断念しても、挫折せずに部活動を続けられたのは「チームの仲間のおかげ」。感謝の思いを胸に、万全の状態で後輩たちを甲子園の大舞台へ送り出すのが自分に残された最後の使命だと思っている。
来春から東京都内の大学に進学予定。将来の夢は教員として、野球の指導者になることという。「学生コーチを経験したからこそ、教員の道を志すようになった。いつか指導者として、自分自身が現役選手として果たせなかった夢をかなえたい」と目を輝かせた。
(毎日新聞埼玉版)