【写真】18年11月、ドラフト指名後にあいさつのため訪れた早大時代のロッテ小島(右)、西武から指名を受けた渡辺(左)と当時の浦和学院・森監督
メットライフドームのマウンドで実現した教え子同士の投げ合いを、格別の思いで見守った。今夏の甲子園まで浦和学院(埼玉)を30年間率いた森士前監督(57)は26日、スタンドから観戦した。西武先発の渡辺勇太朗投手(21)とロッテ先発の小島和哉投手(25)による、浦和学院OB対決。「2人とも、プロの世界で堂々と投げている姿が、たくましく見えました。とても、誇りに思います」と話した。
この日は、関東大会出場がかかった浦和学院の県大会準決勝上尾戦が行われた。勝利を大宮公園野球場で見届けると、すぐに約30キロ離れたメットライフドームへ移動。文字通り「駆けつけ」、試合前ブルペンの様子からしっかりチェックしていた。
試合は、小島が粘って6回を被安打3の4失点で勝利投手に。渡辺は4回2/3を5失点(自責4)で4敗目を喫した。勝敗はつきものだが、指導者冥利(みょうり)に尽きる1戦。「勝敗はいいんだよ。見られるだけで、うれしい」と喜んだあとに、言葉を続けた。「勝っておごらず、負けてひるまず」。自身の元を離れた後も、教え子の野球と向き合う姿勢は気になる。
大卒3年目の小島は、チームトップの9勝目を挙げた。「ローテーションを守って、頑張っている。成長しているね」と目を細める。11日の楽天戦でプロ初完投した際には「おめでとう。次は、完封だな」と連絡を入れた。すると19日の日本ハム戦では、見事にプロ初完封。「次は、2ケタ勝利だな」と送ったメッセージを実現するかのように、残り1勝まで迫った。
2人は4学年違うため高校ではかぶっていないが、渡辺が高卒、小島が大卒で18年ドラフトの同期だ。早大でロッテから3位指名された小島が18年11月にあいさつのため母校を訪れた際、渡辺と初対面。森氏をはさんで、3人で撮影した写真は思い出の1枚だ。
教え子の対決は、このタイミングでしか観戦できなかった。現役の監督時代ならば、今の時期は県大会の戦いで頭がいっぱい。8月の甲子園終了後に現場から離れており「今までなら、時間がなくてプロ野球を見に行く暇がなかった」と、退任したからこその巡り合わせ。教え子からの、監督生活をねぎらうようなプレゼントだった。
(日刊スポーツ・野球コラム「野球手帳」)