【写真】贈られた応援旗を手にする浦和学院の選手たち=同校で2022年2月26日
「石巻から応援しています」「同じ目標に心を一つに」――。第94回選抜高校野球大会(毎日新聞社、日本高校野球連盟主催)の開幕戦に臨む浦和学院に、宮城県石巻市の少年野球チームから応援旗が届いた。東日本大震災の被災地支援を機に2011年から続く相互訪問は20年以降、新型コロナウイルスの影響で中断しているが、選手たちは「甲子園でプレーすることで、応援してくれる人たちのおかげで頑張れていることを伝えたい」と意気込む。
浦和学院グラウンドで2月26日、練習を終えた選手たちに、石巻市鹿妻(かづま)地区の少年野球チーム「鹿妻・子鹿クラブ」からの応援旗が披露された。中央にURAGAKU(浦学)とKAZUMA(鹿妻)のマークが手描きされ、「僕も大きな舞台で活躍できるようにがんばります」「コロナを吹き飛ばすくらいの全力プレーで」など、選手や監督、コーチら23人からのメッセージが書き込まれている。
森大監督は、その2日前に起きたロシアのウクライナ侵攻にも触れ「天災、戦争、新型コロナと大変な時だからこそ、支援してくれる人たちを忘れずに」と語り掛けた。八谷晟歩主将(2年)は「野球ができることに幸せを感じ、応援してくれる人たちにプレーでメッセージを届けたい」と表情を引き締めた。
浦和学院は11年、全校を挙げて被災地支援に取り組んだ。野球部は同年4月、前年秋の明治神宮大会で対戦した東北高(仙台市)野球部員とともに石巻市の小中学校を清掃し、練習用具が流された鹿妻・子鹿クラブに野球道具を贈った。その後も同クラブと交流を続け、毎年12月には石巻とさいたまでの合同練習が恒例に。甲子園出場の際は同クラブの子どもたちを試合に招待し、初優勝した13年のセンバツ決勝でもスタンドから声援を受けた。
同クラブの阿部日出喜団長(69)は「震災ではおおよそ失うものばかりだったが、(被災地支援を機にした)絆や縁で、10年を超えてもお付き合いさせてもらっているのは、ものすごい財産だと私自身は感じる」と感慨深く語る。これまでも浦和学院が甲子園出場を決める度、メッセージボードや横断幕を贈って激励。今回の応援旗は新型コロナの影響で、全員で集まっての応援旗製作ができず、LINEで集めたメッセージを監督宅で代筆し、2週間かけて完成させた。
「浦学生の誇りを胸に晴れの舞台を目一杯楽しんで」と書き込んだ阿部団長。「言わずとも子どもたちは頑張ってる。せっかく甲子園に行くんだから、とにかく楽しんでけろ」。野球人として石巻から温かいエールを送った。
(毎日新聞埼玉版)