【写真】浦和学院が全国制覇した2013年4月の選抜高校野球決勝戦のスタンドで熱のこもった演奏を披露する吹奏楽部
18日に開幕する選抜高校野球大会で、3年ぶりに吹奏楽を伴う応援が解禁されることになった。7年ぶりに出場するセンバツで、開幕戦に挑む浦和学院高校の応援の形を作った一人、落合敏郎さん(55)=現東京都市大等々力中学高校教頭=は明るい声で「浦学の生徒たちはうれしいでしょうね」と想像した。
1991年に野球部監督になって間もない森士(おさむ)さん(57)=現浦和学院高副校長=から「自分が野球部を変えるから、落合には応援を変えてほしい」と要望され、作曲に励んだ。顧問を務める吹奏楽部では、それまでプロ野球巨人の選手の応援歌を使っていたが、高校野球応援には少しなじまないものも感じていた。森さんの依頼を受け「スタンドが一つになり、学校への誇りを持てるようなオリジナル曲を作ろう」と考え、ひらめいたのが南米のサンバの導入だった。
軽快なリズムを刻む「浦学サンバ」はこうして生まれ、曲に合わせて野球部の控え選手やソングリーダー部、生徒会が踊る独自の応援スタイルができた。「浦学の吹奏楽部で野球応援がしたい」と進学してくる生徒も珍しくなくなった。
「ブラバン甲子園大研究」(文芸春秋)などの著書があるライター、梅津有希子さん(46)も1番から5番まである「浦学サンバ」のファンだ。「数ある甲子園応援曲の中でも屈指の華やかさを持つ名曲で、開幕試合にふさわしい。新型コロナウイルスの影響で、全国の高校の吹奏楽部が活動を制限されてきたが、あの明るい音を響かせてほしい」と期待する。
2020年から続くコロナ禍で、浦学吹奏楽部の現部員56人は球場で演奏した経験がない。21年夏の甲子園で流れた浦学サンバや「浦学マーチ」は録音音源だった。現顧問の林真琴教諭(30)はセンバツを前にした部員たちの思いを代弁する。「(まん延防止等重点措置の影響などで)合同練習はなかなかできなかったが、一般の人に自分たちの音楽を聴いてもらえる貴重な機会。『演奏できる喜びをかみしめて一生懸命吹こう』と、みんな気合が入っています」
甲子園という空間で日々の努力を結晶させたいという思いは、野球部員に限らないのだ。偶然にも、開会式の司会の一人を浦和第一女子高アナウンス部の生徒が務めることになった。埼玉のさまざまな部活動の輝きが交差する開会式、それに続く開幕試合が待ち遠しい。
(毎日新聞埼玉版)