【写真】初の全国制覇を果たし、喜びを爆発させてスタンドへ駆け出す浦和学院ナイン(埼玉新聞)
4-0、11-1、10-0、5-1、17-1。土佐(高知)との初戦から決勝の済美(愛媛)戦まで全5試合のスコアだ。
チーム打率は3割5分1厘で、総得点は42点。山形中央との3回戦からは4試合連続2桁安打、うち3度は2桁得点だ。投手陣は、ほぼ一人で投げ抜いた2年生エース小島が、計42回を3失点で防御率0・64。周りを固める3年生野手陣も贄(にえ)竹村の二遊間を軸に、5試合で失策1と左腕を強力に援護した。
勝つ度に目指す野球を確立していった戦いぶりは盤石に映る。
だが、ミスがなかったわけではなかった。
特に走塁面。北照(北海道)との準々決勝から3試合連続で、三塁走者がタッチアウトになるシーンが見られた。
3度とも中盤の競り合っている場面で起きた。このうち2度は後続が打ってカバーしたが、流れが変わっていても不思議ではなかった。さらに緊迫した終盤にやってしまうと致命傷になりかねない。森監督は「精神的に未熟な面がある。最終ステージに上がるうえで、たくさんの課題を残している」と引き締めた。
指揮官は再び歩む、“日本一”への長い道のりを登山に例えた。
「一つの山は登り切ったが、次の山を登るまでに一度、山を下らなければならない。下山している時も、みんなで手をつなぎ合って、再び山を登る準備を整えたい」
準備とは、小島だけに頼らない投手層の厚さだったり、配球を含めたバッテリーの強化、打力の底上げのことを指す。
今夏の埼玉大会は例年以上にハイレベルな戦いが予想され、浦和学院といえど4季連続で甲子園に戻るのは容易ではない。
選抜大会では初戦敗退し、雪辱に燃える花咲徳栄を筆頭に、昨夏決勝、昨秋準決勝でともに浦和学院に屈している聖望学園、さらには川越東、春日部共栄の私立勢。昨秋の準々決勝で逆転サヨナラ負けした公立の雄・上尾も牙を研いでいる。
それでも森監督は「伸びしろがあって、まだまだ成長できる。一緒にいながら日々飽きない選手たち。今大会の経験をつなげていきたい」とさらなる可能性を口にする。
追われる者の重圧、一発勝負の怖さ―。肉体的、精神的にも、もっとタフになり、これらをはね返した時、埼玉県勢の悲願・深紅の大優勝旗を手中に収めることは、決して夢ではなくなる。
優勝翌日の4日に埼玉への凱旋(がいせん)を果たしたチームは、その2日後には練習試合を行うなど、さらなる栄光への第一歩を踏み出した。
主将の山根は祝勝会で「夏の甲子園に戻って、日本一を目指す」と、あらためて決意表明。どんな困難が待ち受けていようとも、浦和学院ナインは走り続ける。春夏連覇への挑戦権は、全国で唯一、彼らだけに与えられた特権なのだから。
(埼玉新聞)