【写真】素早く一塁へ送球する津田二塁手(東京新聞埼玉版)
「バックバック!」「寄れ寄れ、ストップ!」。三回1死一塁、ベンチから贄(にえ)隼斗選手(三年)の声が響く。ギプスが巻かれた左手も使った大きな身ぶりに従って守備位置を変えると、大会屈指の強打者・小寺直樹選手(同)の強い打球が一、二塁間に。冷静にさばいて4-6-3の完璧な併殺を決めた。
4回戦の春日部戦で左手甲を骨折した贄選手に代わり、一年生ながら二塁手としてスタメンで起用された。緊張の連続だったが、春日部戦で贄選手が痛みをおしてフル出場する姿を見て、最後の大会に懸ける思いを感じた。「何とか贄さんの夢をつなぎたい」
試合中は徹底して贄選手が守備位置などを指示してくれた。「失敗してもいい。思いきりいけ」。守備からベンチに戻るたびに、力強い言葉が背中を押した。今大会、経験を積むために出場した3回戦を含め、5試合で失策はゼロ。この日は2つの併殺に絡み、最後のゴロも難なく処理して甲子園への切符をつかんだ。
「必ずやってくれると思った。この恩は甲子園で返します」と贄選手も感謝する活躍を見せ、試合後は「ほっとしました」と表情を緩ませた。「これからも勝利に貢献できるように」。ただの代役で終わるつもりはない。
(東京新聞埼玉版)