【写真】惜しくも敗れ、森監督(右)に声を掛けられる浦和学院の小島(毎日新聞)
◇浦和学院の小島、まさかの乱調 直球走らず
試合後のインタビュー中、左手のペットボトルが地面に落ちた。持てる力の全てを、浦和学院の小島は使い果たしていた。
「あんな小島は見たことがない」。森監督がそう表現するほどの乱調だった。
打者の胸元をえぐる自慢の直球が抜ける。1回、三つの押し出しを含む5四死球と3安打で6失点した。
小島は「何で、という感じ。でも、悪い時はテンポ良く投げようと思った」。2~5回は無安打無失点。立ち直ったかに見えたが、再び異変が生じた。
6回、浮いた直球を狙われ追いつかれた。「6回か7回の投球練習中」に左太もも裏に違和感を覚えた。それでも、8回無死満塁のピンチは相手の中軸を直球だけで三者連続三振に。それが、最後の力だった。
9回。2人目の打者へ初球を投じた時、左足は完全につった。水を飲み、筋肉をほぐして続投したが、2死から安打を浴びて降板した。
球数は182。森監督は継投機について「(早い段階で)代えきれなかった私の責任」と言った。無理もない。浦和学院は昨秋から小島が先発した公式戦で負けなしだった。今春の選抜以降は、2点以上のリードを許すことすらなかった。
足がつっても表情を崩さなかったが、交代してベンチに戻った瞬間、顔をしかめ、タオルで覆った。
「試合をぶち壊した。普段と変わったところはない。力不足です」。最後まで言い訳はない。誇り高き2年生エースが力尽き、史上8校目を目指した今年の春夏連覇への挑戦は終わった。
(朝日新聞)
◇小島、悔い残る182球の熱投
左足が悲鳴を上げた。九回、仙台育英の加藤に1球目を投げた直後だ。けいれんした太ももを何度も伸ばすが、治まらない。それでも交代を促す森監督に首を振った。「試合を壊したのは自分。最後まで投げます」。球数は170球を超えていた。
1点のリードをもらい、マウンドに向かった立ち上がりは「いつもと同じ」。ただ、違いは得意のスライダーを仙台育英打線が振ってこないことだった。「小細工が効かない」。ならば速球で押すしかないが、制球が定まらない。「どうしてもストライクが入らない。初めての経験」。押し出しを含む5四死球などで6点を失った。
二回以降は立ち直ったかに見えた。春のセンバツを制した強力打線の援護で再びリードをもらい、「調子が上がらない時こそテンポ良く」と修正できたかに見えた。だが、六回に速球を狙い打ちされ4失点。それ以降は「何も覚えていません」。肉体が限界に達していた。
九回2死、この日9本目の安打を許してマウンドを降りた。2番手の先輩・山口には「試合を壊してすみません」としか言えなかった。春夏連覇の夢は散った。「自分が情けない」。悔いだけが残る182球の熱投だった。
(毎日新聞)
◇浦和学院・山根主将が痛恨の2失策
浦和学院の主将で中堅手の山根が六回に痛恨の2失策。4点リードから同点とされたことに「勝てる試合を負けにしてしまった。申し訳ない」とぼうぜんと立ち尽くした。
六回無死一塁。中前の当たりを捕球した山根からの返球は捕手の頭を大きく越えて二、三塁にピンチを広げた。さらに、1死二、三塁からの中飛を捕り損ね「あれで流れが相手にいってしまった。自分がリズムを崩した」。力投した後輩の足を引っ張る失態の連続に、自らを責め続けていた。
(サンスポ)
◇浦和学院の救援崩れる「小島に抑えると…」
9回に救援してサヨナラ安打を浴びた浦和学院の山口は試合後、うずくまり、声を上げて泣いた。「(小島との交代時)『俺が抑えるから』と言ったんですけど……」と、声を絞り出した。「みんなで(監督の)森先生に恩返しをしようとやってきたのに……」。仲間に声をかけられ、また激しくしゃくり上げた。
山根(浦)「小島が強い気持ちで投げていたのに、自分のミスで苦しめてしまった。一球で流れが変わる。後輩たちには一球を大切にして欲しい」
竹村(浦)「森先生は自分たちのことを思って今まで厳しく叱ってくれた。日本一の監督にしてあげられなくて悔しい」
(朝日新聞)